STORY

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[知能情報コース]

好きなボードゲームを楽しんでいたら
色彩と心理の関係を探るという
研究テーマに出会った。

中村 優里NAKAMURA Yuri

情報理工学研究科 情報理工学専攻 人間情報科学コース 博士課程前期課程1回生
(情報理工学部 情報理工学科 知能情報コース 卒業)

PROFILE

大阪府出身。AIへの興味から知能情報コースへ。苦手な作業に気持ちがおっくうになる時は、終了時のごほうびにキャンパス内スターバックスの期間限定フラペチーノや新刊のマンガを設定して取り組む。在学中に査読付き論文を発表することが目標。

少数色覚の人の色彩世界を再現し、
どの色をどう感じるかを探る

やりたいことがありすぎて迷った末、情報理工学部に進学したのは、世の中のあらゆるところで使われているITを学べば、将来の道がさらに広がるのではと考えたからです。

今取り組んでいるのは、多くの人と色の見え方が異なる少数色覚の人が、どのような色をどのように感じるのかについての研究です。色には「あたたかい」「クールな」などそれぞれの印象があり、デザインをする場合も色や色の組み合わせは重要です。私は、シミュレーションの技術を使って少数色覚の人の目から見える色をモニターに表示して、それぞれの色をどう感じるかを探り、少数色覚の人にも多数色覚の人にも同じ印象を与えるデザインにつなげることを目指しています。

学会での研究発表も経験しました。色彩に関わる幅広い領域に関わる研究者の発表を聴いて大きな刺激を受けると同時に自分の勉強不足を痛感。次回はどんな質問にも自信を持って答えられるよう準備したいと思います。

ゲーム性、デザイン性を変えずに
色を識別しやすくできないだろうか?

今の研究テーマに興味を持ったのは、高校時代から大好きだったボードゲームがきっかけでした。人が集まってボードゲームができる「場」がほしいとあちこちで話していたら、地元の商店街から声がかかり、週に1回、レンタルスペースでボードゲームカフェを運営するようになったんです。そこで、少数色覚のお客様から「ゲーム内の色彩に見づらいところがある」とお聞きしました。少数色覚の方にも識別しやすい色に変えることは簡単です。でも、その色から私が感じているゲーム性やデザイン性を維持するにはどうすればいいだろう?と考えたことが、今の研究につながりました。

ボードゲームカフェは今も別の場所で続けています。年齢やゲームの強さに関わらず、多様な人が気軽に集まれる居場所にするためのさまざまな工夫をする中で、多くを学ぶことができました。この場で出会い、仲良くなってくださる方も多いことが嬉しいですし、私自身もお客様との対話をすごく楽しんでいます。

ここがスゴイ!

私の研究室

My Laboratory

私の研究は、外部の光を遮断して被験者に色を見てもらう必要があるのですが、大阪いばらきキャンパス(OIC)には複数の暗室があり、気軽に実験ができます。色彩測定、光学測定の高額な装置もありますが、自分の研究にどのようなものが必要かという発想から、汎用的な機器を改良して使うことも多いです。

暗室は4部屋あり、複数人が同時に実験できます。

色票(中央)。アノマロスコープ(左)と100Hueテスト(右)、色覚検査に利用します。

分光測色計。分光反射率(波長ごとの反射率)を測定して物体表面(色票)の色を調べます。

ヘーズメーター。半透明媒体の拡散透過率やヘーズ(曇り度)を測定します。

分光放射計。分光放射輝度(波長ごとの輝度)を測定してディスプレイの色校正をします。

人の感覚を定量化することによって
技術とデザインを共通の言語で架橋する

知能情報コースの特徴はもちろん「知能」を扱うことですが、なかでも生体の知能としての「人間」をテーマにしていることが一つの特徴です。人間は、目や耳などの感覚器官から入力した情報(刺激)を、脳で処理し、動作や発話として出力(行動)しています。授業では、こうした人間の情報処理システムや生体計測の方法などを一から学ぶことができるので、人に関わる研究がしたい人なら、きっと自分なりのテーマが見つかるでしょう。

心理学への興味もこのコースを選んだ大きな理由でした。このコースで扱う心理物理学は、心理学の元になった分野で、人の心を定量的に扱い、数値によってそのメカニズムを解明するものです。私は人の心を定量化することによって、曖昧な感覚で語られがちなデザインを情報として扱いたいと考えています。将来は、システムインテグレーションの企業や電気機器メーカーに就職し、技術とデザインを共通の言語で橋渡しをして、社会や人の暮らしに役立てることができればと考えています。

教えて!先輩

私の学生生活

Question
Q

気分転換はどのように?

A

何も考えずに手作業をして現実逃避

木製のピタゴラ装置づくりに没頭します。頭をからっぽにして、手作業で黙々とキットを組み立てていくことが一番の気分転換。完成したら銀玉を転がして遊べるんですよ。結局研究室にいるのが一番楽しいんだと思います。

研究室で作業の合間にピタゴラ装置を組み立てています。
のびのびとした研究室で居心地が良いです。

細かいパーツが多く時間がかかります。
卒業までゆっくりと組み立てる予定です。

Message

情報理工学部を目指すみなさんへ

自分の「好き」がわからない。そんな人こそ情報理工学部を目指してほしいです。ITでできることは無限にあります。情報理工学部を選択することは、あなたの進路を大きく広げてくれるでしょう。大学では、少しでも興味を持ったら何にでも挑戦してほしいです。挑戦と失敗を繰り返す中で「好き」や「面白い」を一つずつ増やすことができるはずです。