知事リレー講義
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    2008年6月19日           兵庫県姫路市長 石見利勝様
 


共生のまちづくり 〜力強く風格のある都市を目指して〜

 石見市長は、もと政策科学部の教授でおられる。高校まで姫路で過ごされていた。2003年、現職の市長を破り、姫路の市長に就任された。











T.はじめに


  私は、平成6年から14年まで、立命館に奉職していた。立候補した当時は、授業も並行して行い、選挙活動をした。その選挙は、政党も労働組合も企業もすべて、現職を応援。そんな不利な状況の中、何と立命の校友会が私の応援をしてくれた。他には、商工会議所の半分と、小中学校の同級生。だから、校友会にはとても感謝している。




U.姫路について



 姫路市は人口が53万人で、全国で最初に中核市となった。平成21年に市制120年を迎える。また多様な観光資源をもっていて、三ツ星の格付けで有名なミシュランの評価でも、姫路の観光資源は、例えば姫路城が評価に上がっているくらいである。
 他にも有名な観光地はたくさんあり、例えば、映画『ラストサムライ』の撮影をした圓教寺、戦争で亡くなった一般市民を祭る手柄山中央公園などがある。先の姫路城は一度も戦のなかった場所で、手柄山の中央公園も含めて、姫路というのは不戦のまち、日本の平和を宣言するまちとだということができる。
 この他に祭りも多いが、一方で工業都市ということもできる。播磨臨海工業都市の中核に位置する。有効求人倍率も、1倍を切っていない。学生の皆さんも、ぜひ就職活動では姫路に来てくださったらと思う(笑)。






V.市政について


 姫路の財政状況は悪くない。財政力指数では全国20位、経常収支率は中核市39市および候補市11市の計50市のなかで3位。公債比率では全国30位だが、これは実は下げるのは簡単な話で、低ければいいというものではない。道路を作らない、教育をしない。そうすれば黒字にできる。しかし、まちづくりをしながら、保っていくのが本当の仕事だと考えている。
 市制の基本理念としては、共生のまちづくりを掲げている。共生とは具体的に、

 @歴史との共生
 A環境との共生
 B人と人との共生

を指している。
 これらを通して、生きがいと魅力のあるまちをつくっていきたい。指標となるのは、Quality Of Life(良い生活)を向上させていくことにある。日本人は経済大国に住みお金持ち、平均寿命も長くなり時間も持てるようになった。でも、生活は豊かだろうかと言った時に、おそらくは自信をもってイエスとはいえないのではないかと思う。だから、先のQuality Of Lifeを指標にしたい。

W.まちづくりの考え方


 私は市長になって、次のようなまちづくりに取り組みたいと考えた。具体的には、明確なビジョンを設定し、先に触れたように生活の質を基準として達成度を評価すること。そして、価値の多様化を踏まえて、財政を改善していくことにある。また、そうしたまちづくりをしてくためには、既にあるものを活用していくことが大事になってくる。それは箱ものからの脱却ということにもなるのだが、例えば、どこどこの町がホールを作ったからうちもということではない。音楽をやろうと思ったら、もう隣町にはコンサートホールがあるから、そこを借りようやないかと。こういうふうに、既にあるものを使っていけばいい。そして、情報公開をして、参画と協働を促す。これが、市長になった時に考えたまちづくりである。
 また、このまちづくりについては、私は立命館の政策科学部で教鞭をとったのだから、きちんとその政策のサイクルを実施していきたいと考えている。
 ここまで触れてきた中で、いくつか取り組みを紹介する。例えば、協働では市民主体のまちづくり支援に取り組んでいるが、これには中学の取り組みで「地域夢プラン事業」というのがある。地元がどれだけ素晴らしいまちなのか、それを調べてみようというものだが、ある中学では生徒が夢中になって夕方になっても帰ってこないので、先生が心配するくらいの勢いでやっている。また、福祉では「生涯現役、地域活動」を念頭においている。そして、1万2千人ほどのスクールヘルパーを組織したのもあり、人口53万の都市にしてはまだ子供への悪質な事件は起きていない。これは、とても誇れることだと思う。
 更に、都市基盤整備として、過去、現在だけでなく、未来にも責任をもつという考え方をしている。これが、先に触れた歴史との共生の実践になっている。また、JRの高架事業を進めていて、駅と都心を再生したいと思っている。
他にも、安心安全のまちづくりとして防災プラザを設置した。ここには、いま全国から視察が相次いでいる。また、防災訓練もただやるだけでは面白くないので、防災運動会として参加型にし、その決勝を姫路で開きたいと思っている。
 まちづくりには、市役所の改革も不可欠だが、それはしくみの改革だと思っている。

 @スリムな市役所
 A市民に信頼され、協働する市役所
 B質の高いサービスを提供する市役所

 これらの頭文字をとって「トリプルSの改革」だと、私は言っている。そして、経常収支率を80%くらいに維持して、職員も300人の純減を通じて、スリムな市役所にしていきたいと考えている。




X.おわりに

  シェークスピアは『お気に召す』の中で、「人生は舞台」ということを言っている。地方自治、まちづくりもそうだと思う。市民一人ひとりが主役、舞台に出て演じるのがまちづくりだと考えている。



質疑応答


  最後に学生より質問があった。
@姫路市でも全国菓子大博覧会があったが、そうした取り組みが地方でも続いていくにはどうしたらよいか。
→職員に、自分の仕事として取り組んでもらうことではないだろうか。例えば、このお菓子の大博覧会の時には、職員が「パーク& ライド」と称して率先して交通の誘導をしてくれた。普段よりよっぽど、交通渋滞が起きなかったという話があるくらいである。また、市役所だけでなく、商工会議所、県、自治会、菓子業界がスクラムを組んで取り組んだ成果だと思う。






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