知事リレー講義
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    2008年7月3日           岡山県知事 石井正弘様
 


地方が拓く新たな国のかたち 〜三海州分権国家論〜

 石井氏は、1996年に岡山県知事になられた。現在、3期目。そして、10月の4期目出馬を目指して、現在、立候補の予定とのことである。











T.はじめに


 私の趣味は色々あって、テニス、金魚の飼育、サザンオールスターズを聴いたり。さて、そんな私だが、大学を卒業した頃、ちょうど列島改造論に沸いていた時で、私も夢を抱いて建設省へと入った。そして、1996年、当時の橋本首相から岡山県知事への要請があり、立候補した。現在は参議院議長をされている江田五月先生と選挙を戦い、僅差で知事の座を射止めることとなった。




U.岡山県について



 実は、岡山は「晴れの岡山」である。降水量1mm未満の日が全国一多い。また、大学・短大の数は全国6位で教育の県といえるし、美術館の数も全国6位。医療福祉でも人口一人当たりの医師数は、全国で8位。また、乳幼児対策も進んでいる。
 特産品としては、くだもの王国といえる。白桃、マスカット、ピヨーネなどが有名。
 また、観光では、三名園の一つである後楽園、倉敷の美観地区、そして瀬戸内海。瀬戸大橋があるし、初めて国立公園の指定を受けた場所でもある。





V.岡山の特徴的な政策


 現在、岡山県では「教育・人づくり」「安全・安心」「産業・交流」の三つをキーワードとして、新5ヵ年計画を進めている。
 そして、この前提に行財政改革がある。実は、私が就任した当初、岡山県はあと少しで財政再建団体となるところだった。それは、公債や地方債などで公共事業を拡大していったからで、借金比率は何と全国最下位の47位であった。今現在は、無事、最下位からは抜けている。
 行財政改革は、具体的には、
@職員の定数削減(25%の削減)
A出先機関の再編(9つあった地方振興局を3つに)
B公共事業の削減(毎年10%ずつ削減し、現在では就任当初の3分の1に)
C経費の減少
D外郭団体の見直し
などである。
 しかし、平成16年に地方国税の削減があった。そして、より構造改革を進めていかないと収支が減っていくという事態になってしまうので、この6月には財政危機宣言を発した。例えば、県が進めてきた事業について、市町村におろしたり、民間に委託することを考えたり、あるいは事業そのものの必要性について考えている。
 さて、キーワードの一つに協働をあげたが、協働の県政とは、一つの目標に向かって、県民、NPO、ボランティア、大学、企業など多様な主体が協力して活動していくことにある。また、学生ボランティアも頑張っている。例えば、子育てキャラバン隊、短大への子育てカレッジの拠点の設立を行っている。また、棚田や園芸など、生産者が高齢化しているが人手が必要な時期に、学生が夏休みなどで参加し、栽培技術を習得するというのもある。
 産業政策では、水島臨海工業地帯に位置しており、製造業の比率が高い。とりわけ、精密機械などミクロのものづくりに強い。例えば、中島プロペラ。ここは、船がスムーズに動くようにと、厚さ6mm程度のものを微細に作製しており、国内の7割、世界でも3割を占めている。また、安田工業も加工機械の技術に強い。このように素晴らしいものが存在しており、私は航空機、自動車、医療、ロボットの先端4分野を重点的に伸ばしていきたい。
 また、繊維産業も特色といえる。学生服の大手メーカーのうち3社の本社があるし、国産ジーンズの発祥地にもあたる。
 県政で面白いものとしては、国際貢献の条例を全国で初めて制定したことが挙げられる。岡山には、AMDAという国際医療ボランティアNGOの拠点がある。また、岡山空港には国際貢献のための緊急物質も備蓄している。
 交通でいえば、岡山は西日本の結節点に位置する。瀬戸大橋は今年で、ちょうど20周年である。これは全国と四国をつなぐ道路と線路とが併設されているが、瀬戸大橋ができてから、香川からの岡山大学への進学が増えたということがあった。
 ただし、瀬戸大橋は料金が高い。片道4,200円。もっと下げてもらえれば、物流、人流ももっと進むと思う。
 他にも、貨物の取り扱いが中四国地方で一番、全国でも6位の水島港が岡山には存在している。


W.地方分権について


 地方分権というのは、地方のことは地方が自己決定し、多様で透明性の高い住民サービスを可能とするものである。国は、離れているので非効率となってしまう。
 平成16年に三位一体改革があったが、これは未完の改革だった。地方に財政を委譲するといったものの、国庫補助負担金や地方交付税等も単純なものでなく、地方は財政危機となってしまった。
 ここで、道州制についても触れたいと思う。道州制は、地方分権の究極の姿ではないだろうか。都道府県を廃して、道もしくは州を単位とする。
都道府県の制度は約120年だが、市町村についてはこの数年で大きく変わっている。交通網が発達し、時間も短縮され、県を超えた課題、例えば産廃処理、土地の活動など、そういうものが生じている。
道州制のもとでは、都道府県の事務は市町村へ、国の事務は道州へとなり、道州が内政を担当することになる。国は、外交、防衛、司法など根本的なものに限られることになり、これが実現されると地方は大きく変わることになる。
 そして、以下、岡山県の立場として道州制について触れてみると、岡山は中四国州に入ることになる。道州制では、人口や財政など規模の一定さと将来の発展性の両方が必要になると考えている。中四国州となれば、瀬戸大橋を活かした観光をはじめとして、ビジネスチャンスも広がるだろう。瀬戸内海の一体的な保全も可能となる。
道州制は10年を目処に進んでいけばいいと考えるが、財政が最も重要になってくる。現状では、非交付団体である東京都が財政面で圧倒的に有利なのだが、道州制に向けて消費税、法人税など財政の制度設計の議論も必要になってくる。
道州制は、日本の将来にかかわってくるものであるし、世界に対して存在感のある日本という面でも、大きなことである。国は国にしかできないことを担い、地方は内政を担うという方向に向かっていくとよい。ぜひ、学生の皆さんも、道州制は日本の将来にかかわる大事な議論なのだという意識をもって頂きたいと思う。このことを、今日は強く訴えたい。


質疑応答
 最後に、学生より質問があった。
@どの知事も地方分権を強調されるが、デメリットはないのだろうか。
→地方分権を進めていく立場にある者としては、メリットのほうが大きいと思う。ただ、例えば、中央集権の良いところを挙げれば、それは国が一つの方向へ進めていってくれるところにある。日本が経済的に進んでいこうとする時には、これが大いに役立った。立場によって、議論はメリット、デメリットの議論は分かれてくるのでないだろうか。

  






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