知事リレー講義
ライン
    2008年7月17日 
        

       七尾街づくりセンター株式会社 事業部長 谷内博史様
 

七尾市での中心市街地再生の取り組みから
   〜TMO・NPO・商店街 町会連携のまちづくり〜


 

1995年の阪神淡路大震災以降、各地で街づくりのNPOが活躍するようになった。谷内さんは、草津で地域通貨「おうみ」や、奈良でのNPOの活動を経て、現在に至っている。
















T.はじめに


 これは知事リレー講義ということで、二元代表制に基づく議会と首長とが、どのように公共的な営みの中、地域の経営をするかという話なのだと思う。今日は、行政の話ではないけれども、その時々でより良いものを目指している街づくりについて、話したい。
 私の所属しているのは、株式会社ではあるが、NPOのようなもの。当時NPO法があれば、NPOとして設立されていただろう。NPOというのは、問題を持った当事者が集まって活動するもので、最初は自分たちのためにということで集まる。それが地域に広がり、公共性をもつようになって、NPOになっていく。



U.七尾と街づくりセンター



 七尾市はいま人口が6万人だが、毎年3千人、減っているという状況。昔、たとえば、昭和30年、40年代は街の中心地も賑わっていた。それが、車によるライフスタイルの変化によって、中心の商店街はシャッター通りになってしまった。人は住まない。ゴミもたまる。空洞化していく。
 このような状況を何とか打破する、マイナスを食い止めるために立ち上げられたのが、七尾街づくりセンター。平成10年に設立。平成11年には、TMOの認定が認められた。皆さん、TMOってご存知ですか?Town Management Organizationの略で、街づくりでいうと扇の要にあたる。
 マネジメントといっても、経営というより、「何とかうまくやっていく」という感じで、これが街づくりをイメージしていると思う。
 七尾でも、郊外に家を建てれば人口が増える時期というのがあった。農地を宅地にすれば、税収も入ってくる。人口が増えるので、学校も道路もできた。しかし、並行して中心地、街の中心が空洞化していった。そして、この中心地が高齢者の割合が高い。若い世代は郊外へ出て行く。
 このような状況に問題を感じた人たちがお金を出しあって、つくったのが街づくりセンター。まだNPO法がない時代だったので、七尾市と商工会議所、商店街とで出資した第3セクター方式でつくった。市からの事業委託という形でやっている。その一方で、相談にのったり、イベントをやったりしていて、こっちが本業だと思っている。
 私は事業部長という肩書きだけれども、実は専従は私一人。あとは、市役所と商工会議所からの出向でやっている。



V.街づくりに関わる面白さ

 私が街づくりに興味を持ったのは、ちょうど学生時代に経験した阪神・淡路大震災でのボランティアがきっかけ。
地震が起こって、行政やライフラインがストップ。行政の人たちだって、そこに住んでいるのだから、動けなくなるのはある意味、当然のこと。そのような中で、力になるのは普段から付き合いのある近所の人たち。部屋のどこで寝ているかまで知ってて、それで救助できたという例があるくらい。災害の時というのは、ある意味、プライバシーをこえないと救うことができない。
 このように必要なサービスは、自分たちで生み出していく。人とのつながりのなかで、そのありがたさを知る。そして、こういうのがあるといいなと思ったら、それをすぐに実行できる。それがこの世界の面白さで、それに魅力を感じてこの世界に入った。
 行政も企業も手を出さないところで、自分たちの力でやってみる。ある意味、火中の栗を拾うような感じ。誰かが声を上げないと始まらないことというのは、いっぱいある。



W.市街地での取り組み


 「花嫁のれん」という取り組みをやっているので、それについてお話したい。これは、加賀藩で見られた花嫁道具の一つで、結婚する時にのみ掲げられる暖簾なのである。これを飾ったら綺麗なんじゃないかなと考えた。東京から来られた、ある雑誌の編集者の方に言われて、外からの視点がきっかけとなった。一本杉通りというところがあるのだが、そこの民家、商家で暖簾展を行った。
 暖簾には、結婚に伴う物語がこめられていて、一つとして同じものはない。このようなイベントというのは、地元のいろんな人たちが関わって、インパクトのあるものができる。その中で、プロモーションだったりプロデュースと呼ばれるようなこと、また入ってきてくれる若い人たちに仕事を渡していくのが自分の役割だと思っている。もちろん、商店街の人たちと協力しながら。
 こうした取り組みを、街として持続可能なものとしてお客さんに約束する。それが、ブランドだと思う。そして、このイベントの先にあるもの、地域の伝統や文化を伝えていくのも仕事だと思っている。
 それは、なかなか行政にはできない。行政には、公平、公正が求められるので。誰か特定のものをPRしたり、というのはやりにくい。また、企業にも難しい。現時点では、まだ投資の部分を抜け切れていないので。そこで、NPOのような、我々のようなところが付託を受けてやっている。
 また、「語り部処」という取り組みもしている。これは、観光客の増加というリピート効果をもたらしている。市街地に人が来るきっかけをつくりだしている。行政だとこういう場合、お金をかけて何かやろうということになると思う。それに対して、民間でやれるのは既にあるものを活かすこと。そうすることで、人も来るようになり、お店も活性化する。
 やり方として、行政の家賃補助というのは最もまずいのではないかと思う。なぜなら、1、2年したら出て行ってしまうから。そうではなくて、商売人がその街に期待して来てくれるようにすること。それが、自分の仕事だと思っている。身銭を切ってやる、という気持ちも必要なんだと思う。
 他にも面白いものとしては、「電柱残そう運動」がある。これも、既にあるものを残そうとしている。全国的には、景観との関係で電柱をなくそうという動きがある。しかし、七尾では、青柏祭という祭りで、デカ山という山車の迫力ある演出のためにも、電柱を活かしている。



X.パートナーシップの落とし穴

 最近、行政とNPOとの協働、パートナーシップということがいわれる。しかし、ここに落とし穴があると思う。それは、主体性がなくなってしまうこと。誰がリーダーシップを発揮しているのか?主体性がどこにあるのか、わからなくなってしまう恐れがある。
 よく喩えでいうのは、自動車の話。要するに、誰が車を運転しているのかということ。







Y.終わりに

 皆さんのような学生が、社会人になってからどう街づくりに関わっていくか。色々あると思うが、社会人になると会社と家庭のことで何だかやっているような感覚になってしまう。でも、そこを敢えて時間をとってみてほしい。
 そして、ぜひ学生のうちから、社会と関わる場を持ってほしいと思う。インターンでも、ボランティアセンターを使うというのでもいい。僕が学生の時には、そういうのはあまりなかった。そういう機会を活かす中で、街づくりが見えてくると思う。




質疑応答
 
  




県庁HPへ
県庁HP



 


Copyright(c) Ritsumeikan Univ. All Right reserved.
このページに関するお問い合わせは、立命館大学 共通教育推進機構(事務局:共通教育課) まで
TEL(075)465-8472