知事リレー講義
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   2008年10月30日             長崎県知事 金子原二郎様

 



「歴史・文化を活かした地域づくり」




金子知事は、98年に就任され、現在3期目。九州知事会の会長も勤められている。







T.はじめに


 今日は、歴史、文化を中心に地域の思いを伝えたいと考えている。
 現在、日本は国も地方も財政が逼迫している。特に、長崎県のように多くの離島を抱えて、人口の減少が著しい地域では大きな影響を受けている。しかし、こういう時こそ、将来を見据えた、明確な政策が必要だと考えている。
 そのような中でも、長崎県では観光での交流対策に力を入れている。観光は、長崎県で第一の産業である。それに関連して、基盤整備、まちづくり、情報発信の三つをお話したい。
 



U.基盤整備に向けて



 ハードからソフトへというのが最近の論調だが、しかし、観光による交流人口の拡大にはハードが不可欠である。長崎県も新幹線が整備されて、博多での乗り換えが容易になれば、人がもっと来るだろう。関西も観光圏に入る。また、道路網の整備も同様で、これは人体に例えれば、大動脈にあたる。
 ただし、それだけでは良い道具を手にしたというだけなので、地域住民にもメリットがある施策を展開しないとならない。長崎県は全国で最も離島を抱えており、通行のための橋の料金が高いという側面があった。そのままでは、せっかく合併しても一体感もなく、行き来しにくいので、合併を機に値下げに向けて、国に粘り強く働きかけた。その結果、料金の値下げが認められ、地域で利用しやすくなったのである。
 このように、国と協力し、地方としての役割を果たすことが、日本を生き生きとさせることにも役立つと考えている。



V.まちづくりと施設整備

 日本で初めてとなる第1回の国勢調査は1920年、大正9年に行われたが、その頃の長崎市は人口の多さでいうと、全国7位。広島、仙台、札幌、福岡よりも上だった。しかし、その後、上海航路の廃止などもあって、低下してしまった。そこで、港町としての歴史を甦らせて、文化都市として再生したいと考えている。
 駅周辺の再開発や新しい県庁舎の移転などあるが、目玉は中島川の整備で、眼鏡橋の保存やバイパスの整備などをした。ここは、工事が終わってからも市民の憩いの場として活用されている。
 また、長崎美術館も中核となる施設で、全国に先駆けて指定管理者制度を採用した。ここでの目玉は、福山雅治さんの写真展を開催したことである。この時、集客に向けて、ファン層のネットワークに働きかけるような掘り起こしを行ったところ、なんと北海道や上海からも来客があった。これは、地方の美術館の可能性を示す出来事だと考えている。
 更には、長崎歴史文化博物館の整備もしており、かつて日本の玄関口だった長崎の再現を目指している。この動きと並行して、長崎市が出島の復元をしており、それらが合わさって、魅力ある長崎のまちづくりが可能となるはずである。これらを長崎港と結びつけることで、国際都市としての再生も可能だと考えている。




W.ソフトと情報発信


 長崎県では、この他にもキリスト教関連や近代の遺産などを、世界遺産に登録できるよう頑張っている。そうすれば、長崎がブランドとなり、海外からの観光客も期待できる。長崎の遺産が貴重なのは、西洋ではないところでの近代化を示しているからである。
 そして、これらのハードを活かすソフトも必要ということで、我々は情報発信に尽力している。具体的には、長崎歴史発信プロジェクトであり、『旅する長崎学』という新しいタイプのガイドブックを作成している。
 今後は、国内だけでなく、海外からの集客と他の産業への波及を目指している。




質疑応答

@観光を支える人材育成について
→県の職員のみでは限界もあるので、民間の旅行会社から経験者を招いて、ノウハウを伝えてもらうようにしている。人材の登用には、積極的でありたいと思っている。
A新幹線を導入しても、JRの特急かもめ号を残して欲しい
→それはJR九州の判断になる部分もあるが、新幹線をかもめ号に似せたデザインにして走らせるのも良いと思う。
  




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