知事リレー講義
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   20081120             山口県知事 二井関成様




「住みよさ日本一の元気県づくり」



知事は、現在4期目。山口県は多くの政治家や文学人を輩出している、落ち着いた風土の地域である。



T.はじめに

 山口県というのは、実は立命館とゆかりが深い。末川博名誉総長や、詩人の中原中也は山口の出身である。中原はわずか2年であるが、大正時代に立命館中学に在籍している。



U.正直やまぐち


 県政への基本姿勢として、私が第一に心がけているのは正直であること。実は、私の実家は呉服屋であり、そこで正直であれと教えられた。司馬遼太郎氏も、商業から正直さが生まれたと書かれている。こうした気持ちが、私のモットーである「しっかり聞いて、しっかり実行」につながっている。情報公開条例を制定した背景にも、この姿勢がある。また、我々は、農協と協力して、正直やまぐちというブランドを推進している。



V.県民の安全・安心

 県政への第二の姿勢は、安全と安心である。安全、安心というのは、心理学者マズローの有名な欲求五段階説の根本にあたる。戦後、日本は豊かさを享受してきたようにみえる。しかし、1995年の阪神淡路大震災で安全神話は崩壊した、といったほうが良いのではないだろうか。その後、安全や安心への脅威となる出来事が立て続けに起こっている。そのような中で、政治家はマズローのいう安心、安全を守るのが仕事だと思う。
 というのも、2004年に鳥インフルエンザの問題が発生したことで、安全、安心を再認識することとなったからである。この経験から、トップの決断の重要性も再認識することができた。また、県職員と安全、安心の感覚を共有できたことも大きいと思っている。



W.県民力・地域力を高める

 地方分権が求められる今、県政への第三の姿勢として、住民の意識改革を目指している。私は自助、共助、公助ということを口にするのだが、住民が力をつけて、そして民間ではできないことを公がサポートする。このようにして、自助が県民の特色となっていくのではないだろうか。
また、県民が自助力をつける場として、私は様々なイベントをうまく活用するようにしている。例えば、2001年にはジャパン・エキスポとして山口きらら博を開催した。当時、東京でも博覧会が中止になるなど、もう博覧会などする時代ではないと言われていた。しかし、私は県民と一体となればできるだろうと考えたのである。2011年には国体が予定されており、一過性のものでなく、成功体験として高めていきたいと考えている。



X.市・町の重視


 第四の姿勢は、市や町を重視することである。私は「近接と補完の原理」と言っているのだが、市や町がそれぞれのレベルでできることは任せている。なぜなら、住民に最も近い市町村が力をつけるのが良いと思うからである。その意味で、市町村合併は有効なのだが、残念なことに山口県では人口が30万人以上の都市がない。そのため、中核となる都市の不在という課題がある。
 現在、道州制の議論があるが、将来的に移行するとしても、市町村の機能が強化される形で行われるのが望ましいと私は考えている。したがって、まずは地方分権を先にやり、それを土台として道州制を導入するのがあるべき姿ではないだろうか。



Y.住み良さ日本一を目指して


去年の県政世論調査からも、山口県では県民の8割が住みやすいと答えている。これをより進めるために、県では「やまぐち未来デザイン21」を作成した。
 なかでも、特に力を入れているのは循環型の社会づくりで、先進的なリサイクルに取り組んでいる。例えば、焼却灰のセメントへの利用や、副生水素のエネルギー利用などである。
 また、森林資源の活用も視野に入れている。これは、現在、問題となっている中山間地域への対策にもなっている。間伐材を火力発電に活かしたり、木材を安く輸送するための実証実験にも取り組んでいる。



Z.おわりに


最後に、学生の皆さんにお伝えしたい。それは、「意識は力なり」ということである。常にプラス思考で、意識を力に変えられるよう、励んでいって欲しい。









質疑応答

@「やまぐち未来デザイン21」で、施策を数値として表しているが、弱い部分を底上げしようとすると、かえって特質がなくなってしまうのではないか?
→山口県では、自主防災組織率や食料自給率などが低い。これらは、いざという時のためには是非、取り組んでおかなくてはならないことである。したがって、全国平均と比べて、極端に低いものを底上げしていくという発想で取り組んでいる。

A現在の地方分権改革は以前とどこが違うか?
→90年代の第一期の改革は、機関委任事務など事務面での変化があったが、あまり国と地方の関係の変化にはつながらなかった。その後、三位一体改革があり、地方の財政が苦しくなるという状況を迎えた。現在の第二期の改革に対して、山口県のスタンスとしては、国は国にしか出来ないことに集中してもらい、あとは地方で任せて欲しいと考えている。これも、先に触れた「近接と補完の原理」なのだが、国は反対している。

  




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