知事リレー講義
ライン
   20081127             茨城県知事 橋本昌様





「世界の中の『いばらき』−グローカル化時代の地域戦略−」

 橋本知事は1993年に就任され、現在4期目でおられる。




T.はじめに

 
私は、世界のことを知らなければ生きていけないと思っている。日本はどうしていったら良いのだろうか。そして、地域はどうしたら良いのだろうか。世界の動きを知る中で、これまでの日本の現状を踏まえ、そして地域のあるべき姿を描いていきたいと考えている。



U.世界の動きと日本の状況


 現在、世界の経済は急速に一体化している。金融不安についても、対岸の火事では済まされない。BRICsと呼ばれる新興国の台頭、原油資源や食料などの高騰、またそれらの資源を持てる国による「資源ナショナリズム」とでも呼べるような、自国での寡占化なども起こっている。

 一方で、日本が資源を輸入に頼っているのというのは周知の事実である。エネルギー面から見ても、資源輸入国の日本はきちんとした対応策を考えねばならないと思う。また、日本は国際競争力も低下、学習能力も各種調査を見ると楽観視できる状況ではない。

 更に、理系離れが叫ばれ、若い人たちの離職率も高くなっている。このような状況下では、技術者が育たないのは当たり前ともいえる。このままでは、日本の産業はもっと低下していってしまうだろう。

 加えて、日本の国内を見てみると、この10年、内需拡大も上手くいっていない。物価が上昇し、賃金は伸び悩んでいる。更に、人口が減少し、少子高齢化でもある。逆に、世界では人口が増え、生活レベルも上昇しているという具合である。特に、先に触れたBRICsなどはそうなってくるだろう。

 そもそも日本の意思決定というのは、時間がかかりすぎてしまっている。例えば、新薬の実験をしましょう、企業を招致しましょう、といった時に時間がかかってしまうので、結局、他のアジア諸国へ逃げられてしまっている。

 海や空といった島国日本を取り巻く状況も、厳しい。日本の港湾、港が世界の中でどうかというと大変に厳しいをいわざるを得ない。航空についても、成田への乗り入れ許可など、簡単には決まらず、複雑化していると言えるのではないだろうか。

 道州制をめぐる議論も盛んである。私から見てみると、どうも些細なことばかり議論していて、道州制というのは役に立つのかどうかという気持ちがぬぐえない。現状、国が考えているやり方では、三位一体改革の時のように地方の力というのは弱まってしまうのではないだろうか。




V.日本の中の茨城

 
 これまで、日本を取り巻く厳しい状況について述べてきた。今度は、その中での茨城県の位置について述べてみたいと思う。意外かもしれないが、実は、茨城県は人口では京都府よりも多い。

 茨城県では、目指すべき形をはっきりさせるために「元気いばらき戦略プラン」を作成した。具体的には、競争力、住みよさ、教育や人づくりといった面で頑張りたいと考えている。

 その中でも、とりわけ活力のある茨城県をつくろうということで、産業の場づくりを意識している。雇用を創出することが定住人口の増加につながり、福祉や教育の向上にもつながっていく。そこで、各自治体は企業誘致に力をいれるわけだが、我が茨城県の企業立地面積というのは愛知県や静岡県よりも上である。それだけ、たくさんの企業に来ていただけているということが言えると思う。

 また、東京都心との更なるアクセス向上を目指して、2005年にはつくばエクスプレスを開通した。これによって、筑波から秋葉原までは45分で行くことが可能となったのである。そして、2010年には茨城空港の開始も予定している。茨城空港では、ローコストキャリアという通常よりも格安の料金で、多くの航空機を集める運行方法を念頭においている。

 茨城県にとっては、筑波という存在も大きい。試験研究機関、研究者、博士号を持っている人の数では日本でもトップレベルだろう。

 このように茨城県には、様々な特色がある。今後は、日本の各地方が抱える地域間競争、財政危機を克服していきたいと考えている。




W.最後に

 
 学生の皆さんには、ぜひ語学を勉強して頂きたい。最低でも英語、そして出来ればもう一ヶ国語を学んでほしい。自分が関係する国の言葉であれば、何でもいい。世界で活躍するために、本音で語り合っていってほしいと思う。





質疑応答

@国家を語れる学生、文化を生み出すためにメッセージをお願いしたい

→茨城県での教育の取り組みとして、小学校では社会体験づくりを促進している。例えば、お手伝い手帳のようなもので自分の取り組みを記録させることで、社会を知ること、責任感の醸成を促している。また、読書を推奨し、本を読むことで疑似体験を積んでいってほしいとも願っている。このように、教育で効果のあると思われるものに取り組んでいくことが、やがては国を代表するという気概の育成にもつながっていくのではないだろうか。


  





県庁HPへ
県庁HP



 


Copyright(c) Ritsumeikan Univ. All Right reserved.
このページに関するお問い合わせは、立命館大学 共通教育推進機構(事務局:共通教育課) まで
TEL(075)465-8472