知事リレー講義
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   2008124             京丹後市長 中山泰 様



「市民をど真ん中に」


T.はじめに

 
「市民をど真ん中に」というのは、ある意味では当然のことだが、普段の実務では忘れがちになってしまう。また、昨今の行政では、利害関係が複雑化している。したがって、軸がないとぶれてしまう。そのため、市民を行政の中心に据えることが原則だと考えている。
 我々の京丹後市は、京都府北部の丹後半島に位置している。かつては大陸との関係も深く、古墳も多く残っている。このような地域において、行政として何ができるのか。




U.なぜ市民参加か


 市民本位ということの具体的な形の一つが、市民参加や協働だと私は考えている。これには、三つの理由がある。一つは、広く市民の知恵、衆知を集めるということ。二つめは、市民がボランティアベースで取り組むことによる効率化。そして、三番目に、住民も含めて、かつての利益配分からどう負担を相互に分担していくのかという問題が生まれてきていること。
 京丹後では、具体的にいくつかの取り組みがある。例えば、情報公開というのはどこでも行っていると思うが、我々は予算の編成過程を公表するようにしている。これは、最終案の前に自治区の人たちを中心に不足点を見てもらうようにする取り組みである。これは、全国からも注目を集めている。
 また、市政に関する意見交換のための出前講座というのも行っている。これは、市民からの申し込みに応じて、職員が出かけていき、市政に対して話し合うというものである。
 これらはいわば実施であるが、加えて評価も大切だと考えている。そのために、外部委員会や満足度調査を活用している。また、まちづくり基本条例もこの流れに沿って、市民の主体を全面に押し出して、案の作成にかかわってもらった。



V.行政の内容と方向性
ここまで市民主体の動きについて主に触れてきたが、次にそれ以外の行政の動きについても述べたいと思う。
 先ほど、京丹後市は京都府の北部、丹後半島に位置することをお伝えしたが、その特色を活かして、京丹後の海岸線は全て国立、公定の公園に指定されている。京丹後の自然の豊かさは、このような点にも表れている。また、100歳以上の人の割合もとても多く、健康にも恵まれた風土だと考えている。
 行政が目指すべき方向性として、私は次の四つが大切だと考えている。まず第一に、「弱みの克服」。京丹後は、その立地環境から、モノづくり産業のために企業誘致をはかろうとしても、弱みばかりが目立つかもしれない。しかし、発想を転換すれば、京都市が丹後の南部に位置するのであり、京丹後というのは山陰の東、近畿の北、北陸の南で、ある意味では日本の中心的な地理に位置しているということも可能である。その意味では、アジアに非常に近く、環日本海の中心だといえる。
 次に、「弱みを克服し、強みにつなげること」。これの具体的な例は、200円バスの試みである。今まで、京丹後市内のバスは700円と高く、乗る人が少なかった。それを、これも発想を転換して「700円で二人」が乗る程度なら、むしろ「200円で七人」に乗ってもらえるほうが、総額としても同じであり、効率的だと考えた。
そして、実際に料金を200円にすることによって、高校生が通学に使うようになり、また高齢者の利用も増えた。その結果、2年前からバスの乗車率は2倍、収入も増え、市の持ち出しもかなり減った。これは本当に、「弱みを強みに」変えた例だと思う。
三番目に大切なのは、「弱みを逆手に」とること。先ほど、京丹後では100歳以上の方たちが多いという話をした。そうお話すると、高齢化社会だ、マイナスだとすぐ考えてしまう。しかし、これも積極的にとらえれば、長寿というのは人類の永遠の願いであって、とてもめでたいことではないだろうか。
そして、最後に「強みを生かす」こと。京丹後では、その歴史と豊かな自然を生かして、環境循環型都市の試みを行っている。地域の活性化と自然の保護の両立を目指して、山陰海外のジオパーク構想に取り組んでいる。

 
 




W.終わりに

 行政というのは、市民から委託を受けた機関である。したがって、助けを必要とする人への大きな力も持っていると思う。京丹後では、多重債務者からの相談も受けているが、そうした人たちからの感謝の手紙が一通届くだけで、我々が行っていることは無駄ではないと思えるのである。




質疑応答

 質疑応答
@ 市民からの意見はどの程度、反映されるのか。
→色々な意見があるのだが、必ず返事を出し、また統計をとるようにしている。どのような場合であれ、問題意識は受け止めて、何らかの対応をしている。あとは、フォローまで持っていくところが課題だと考えている。
A 交付税と合併後の運営について。
→分権によって権限だけ与えられても、財源がなければ負担が増えるだけ。配分の考えを試行錯誤しながら、やっていくしかないのではないだろうか。また、合併については、職員が減るので、そこで住民に入ってきてもらうようにして、市民参加によってデメリットを補うことだと思う。
B 限界集落について
→単に過疎というだけでなく、それこそ「弱みを強みに」変えることが大切なのではないか。自然を活用して売りにするとか、高齢者の生きがいづくりをするとか、手はある。ないものねだりでなくて、周囲の環境に位置づけてやっていくことだと思う。



  





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