知事リレー講義
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   20081218      千葉県知事 堂本暁子 様


  「県民参加型の県政運営〜『新たな公』の成熟と今後の展望

 堂本知事は、ジャーナリスト出身という珍しい経歴をお持ちである。また、全国に先駆けてタウンミーティグを開始されてもいる。

T.はじめに


 現在は、21世紀の入口にあって、時代の変わり目にあたる。それは子供の描いた絵のようなもので、大胆に突き抜けて変わっていくものだといえる。アメリカのオバマ大統領の誕生、EUにみられる個人と統合の動きをみても、歴史の動きを目の当たりにしていると感じている。
 20世紀は冷戦の時代だったが、21世紀は個性、自立が社会の主流になると思う。それは、国家から市民へというパラダイムの変化とも重なっている。


U.県民参加による「千葉方式」

  私は国会議員時代の経験を活かしたいと思い、知事に立候補した。中央政治というのは上意下達式のトップダウンであり、それは地方から変えていくしかないと思うようになったからである。
 そのため、知事になって心がけたのは、徹底的な情報公開と県民の参加という点である。どのような県政を行おうとしているのかは、情報公開を行わなければ伝わらない。また、県民に参加してもらうためにも、タウンミーティングを開くようにした。
 しかし、残念ながら、最初は陳情がほとんどだった。そこで、私がお話ししたのは、県にやってほしいという依存ではなく、県民として自分はどうしたいのですかという内容である。ここから、「千葉方式」と呼ばれる、県民が白紙の段階から議論に参加する手法が生まれた。
 この千葉方式は、なの花県民会議、三番瀬の再生と保全、更にはNPOの参画などにも反映されていった。これらの中でも、三番瀬は思い出深い。三番瀬は東京湾の最奥部に位置する干潟だが、当時は埋めるかどうかが焦点となっていた。私は埋めないことを選ぶと同時に、保全も目指すことにした。なかでも厄介だったのは、漁業の補償の問題であったのだが、これも地域住民が参加することにより、解決の方向へと動き出していった。結果として、公共事業の在り方にも一石を投じることになったのである。


V.ブレーメン型の地域社会づくり


  更に、健康と福祉の分野では、「ブレーメンの音楽隊」になぞらえて、ブレーメン型地域社会を目指すこととした。これは、子供、障害者、高齢者も含めた一人ひとりが、それぞれの個性を活かせる社会を目指しましょう、というものである。
 また、この動きは全国で最初となる、障害者の差別をなくすための条例の制定にまで結びついた。条例の制定までには様々な苦難もあったが、反対する議員たちにも当事者である障害者に会ってもらうことをお願いしてまわった。その結果、条例は満場一致での成立となったのである。

 

W.ちばデスティネーションキャンペーン

 このように福祉でも千葉方式は大きなうねりを発揮したが、その他にも中小企業戦略やエネルギー戦略にも大きな成果を残している。ここでは特に、観光についてお話したい。
 2007年に、JRとタイアップして、「ちばデスティネーションキャンペーン」を展開した。ここでも、観光業だけに頼るのではなく、県民参加型で取り組むようにした。このような取り組みの場合、観光客が増えればそれで良かったとなりがちだが、千葉は違った。何より、私にとって嬉しかったのは、JRの方に「キャンペーンの本来の趣旨である地域おこしの目的を果たせた」、「あらゆるレベルの層が参加したことにより原点に戻れた」と言ってもらえたことである。

X.おわりに
 21世紀には、行政の質的転換や「公」の意味なども変わっていくと思う。そして、その根本にくるのは、多様性ということではないだろうか。そこには、人を認めるということが基本にある。
 皆さんには、ぜひ政治を馬鹿にするのではなくて、人任せにせず自分たちで関わっていってほしいと思う。それもいきなり国ということは必要なく、地域や学校から取り組んでいって欲しい。そうしたことがボトムアップとして起こらない限り、変わっていかないだろう。


質疑応答

@ 地方分権を推進していくにあたり、どのような点に注意するべきか。
→グローバル化が進めば、ローカル化も進む。国から地方に権限や財源が与えられるだけでなく、立法権も伴う制度改革が行われることと、市民によるボトムアップが必要ではないだろうか。
A 選挙における政党との関係について。
→しがらみのない知事になりたかったので、最初の選挙でどの政党からも推薦をもらないということを選んだ。ただし、それは議会とは緊張関係を生むことになり、法案などではとても大変。しかし、あえて特定の政党に推薦してもらわないということを選んだ。






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