知事リレー講義
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   20091月 8      秋田県知事 寺田典城 様


 「地方の自立と発展をめざして」

 寺田知事は、昨今では珍しい民間出身の知事でおられる。それだけに改革には熱心である。


T.はじめに


 日本が経済的に良かった時代というのは、いつ頃だろうか。それは、1990年のバブル崩壊前あたりではないだろうか。当時と今で、財政や高齢者の比率を皆さんはご存知だろうか。バブルが崩壊した直後の91年では、280兆円の借金があり、高齢化率は12%だった。それが今では、借金は780兆円であり、高齢化率は22%である。こうなると税金は介護や年金に使いましょう、ということになる。また、そのことが、若い人たちに多くの負担をかける背景になっている。
 現在、分権型社会へ移行しようという議論が行われているが、こうした背景と無縁ではない。したがって、学生であっても財政に目を向けてほしい。これから、納税者となっていくのだから。


U.分権と教育

  分権となった際の問題の一つが、国と地方とで仕事が重複することである。仕事が重なれば、当然コストが発生する。しかし、国は権利を手放そうとはしない。そのため、地方分権を考える時には、コストをなくすための権限委譲についても同時に考える必要がある。
 このように日本のコストが高くなってしまっている側面はあり、製造業はとりわけ海外へ出ていってしまっている。そのことは、グローカルという言い方をするが、グローバルにもローカルにも影響を及ぼす。いま問題となっている格差は、このことが背景にある。しかし、所得の格差が教育の格差にならないようにしなければならない。行政のすべきことの一つは、教育、人材育成の分野にあると思う。
 そのために、秋田県では特に義務教育に力を入れている。結果として、全国の学力調査で秋田県が上位に入ったのには、色々な理由があると思う。学力調査が良かった背景について調査をしてみたが、一つには生活習慣や学習習慣の確立があると思われる。真面目な態度というのが、成績にも反映されているようである。また、そうした子供たちは、概して倫理観も高いようである。
 また、秋田県では国際教養大学を設置した。ここの教員は、半分が外国籍である。秋入学も実施しており、1年の留学を課している。授業は英語で行っており、グローバルビジネスに強みを有している。
 日本は、資源のない国である。したがって、グローバルな競争の中では教育で対応していくしかない。


V.おわりに
  学生の皆さんには、思考を停止させることなく、「なぜ」という疑問を持って行動していってほしい。「始める」ことから、始まるのである。その気概をもってほしい。


質疑応答

@秋田県での雇用対策について。
→秋田は県として工場への補助を行っているが、それだけでは根本解決になっていないと思う。そこで、規模に応じて税率を変えるというのも手段の一つだと考えている。例えば、財政比率に応じて、法人税の比率を変えてみる。そうした取り組みをしないと、大都市と地方とでは違うのだから、均衡ある発展というのは難しいのではないだろうか。現状では、地方には人も企業も集まりにくいのではないだろうか。

A仮にそのような対策を行うとして、誰がリーダーシップをとるのか。
→それは、政治の出番であり、政治がやることだと考えている。全国一律でやろうとするので、制度疲労が起こる。だから、地方分権が必要になってくる。全体の設計を変えるという制度変更と、比率に応じて財政を投入して、あとはその自発性に任せるという、その両方が必要となる。

B教育にお金を投資しても、県外へ流出してしまうことについては。
→教育というのは、そこまで規制できないと考えているし、普遍のものだと思う。受けた教育を活かして、人生を広げていってもらうのが教育の役割である。だから、良い学校ほど全国から人が集まるし、良い教育を受ければ、その分、選択肢は広がる。あとは、もっと日本人が海外へ出て行って良いと思う。徴兵制がない国なのだし、国際社会を理解せずに今後の日本の進路はない。そのことは、国際教養大学を設立した背景にもある。

C新規の産業やベンチャーを起こすことについて。
→おそらく日本人の強みは、ゼロからでなく、改良や改善をしてシステム化していくことにあるのではないだろうか。モノづくりに、そうした能力、組織化が活かせていると思う。ただ、教育では多様な人材づくりが必要になってくる。日本はまだ、そこまで出来ていない。





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