知事リレー講義
ライン
   20091月 15      佐賀県知事 古川康 様


「自治体最前線PartU 
          〜心配が現実に、新型インフルエンザ〜」
T.はじめに


  皆さんは、新型インフルエンザについてどの程度、ご存じだろうか。我が佐賀県は、47都道府県の中で、最も対策が進んでいると自負している。新型インフルエンザなんて起こらないと思われるかもしれないが、実は発生する確率は高いと考えられている。問題は、「いつ」起こるのか、ということである。


U.自治体の危機意識

 
 新型インフルエンザは今までにないタイプのものと言われているが、その前段階にあるとされる鳥インフルエンザは、既に生じている。それは、まだ人から人にうつる段階にないというだけのことである。
 実は、昨年の11月にインドネシアで新型インフルエンザが発生したのではないかという騒ぎがあった。これは結局、誤りだったと後で分かったのだが、問題はこの騒動を知らない自治体が約3割もあったということである。
 佐賀県では、担当課の人間がインドネシア総領事館のメールマガジンに登録していたので、この情報を即座に知ることができた。そして、すぐに県庁全体、そして九州の自治体で共有し、国にも問い合わせるという動きをとった。佐賀県としては、新型インフルエンザが日本に入ってきたと想定して、即座に行動をとったのである。佐賀県では、自分たちが必要だと思う情報は自分たちで集めるようにしている。
 結局は、これが新型インフルエンザではなく、誤りということがわかったので良かった。しかし、一方で、今回の騒動そのものが何であったのかも理解できていない自治体があったというのは由々しき問題ではないだろうか。自治体によって、危機意識に相当な差があるというのが、実情だと思う。

V.佐賀県の新型インフルエンザ対策


   
 新型インフルエンザにかかる割合は、現時点では4人に一人とされている。当初、政府は新型インフルエンザを水際で食い止め、上陸させないと言っていた。しかし、これはどう考えても無理だと思われる。例えば、数日たってから発熱するようなケースは、空港の検査をすり抜けてしまうことが考えられるからである。そして、政府もそのことにやっと気づいたようである。
 佐賀県では、対策としてキーワードを三つ掲げている。@あわてない、A集まらない、Bがんばらない、である。
 最初の「あわてない」は当然のことであるが、二つめの「集まらない」というのは人が大勢集まると、すぐに広まってしまうからである。だから、新型インフルエンザの場合にはかかったなと思ったら、かかりつけの医者でなく、自治体が設定した相談センターや指定病院で対応してほしい。これは、通常の病院で感染が広まるのを防ぐためである。
 もちろん、指定病院がいっぱいになってしまうという事態も想定しておかないとならない。それには、訓練をしてみないとわからない。佐賀県では実際に訓練をしてみて、気づいたことがたくさんある。
 それから、3番目のキーワードである「がんばらない」というのは、新型インフルエンザにかかったら、無理して出社せずに家で休んでほしい、ということを指している。かかった人が出社してくると、職場で広まってしまうからである。そのためには、食料の備蓄も必要となる。また、在宅勤務のような仕事の仕組みも求められることになる。したがって、各企業や交通機関など社会全体での対策が必要になってくる。
 このような新型インフルエンザだが、予防対策はある。社会としては、予測を立てつつ、ワクチンの準備と備蓄を行っていく。個人でできる予防は、うがいとマスク、この二つが基本である。これは、およそ100年前のスペインかぜの時に言われたことと何ら変わりはない。

 

W.おわりに
 


 佐賀県は、実は近代医療発症の地である。佐賀藩の第10代藩主である鍋島直正公は、1849年に天然痘が流行した際に治療法を確立した功績があり、それを称えて、県立病院には像が設置されている。佐賀県は、今もこの精神を受け継いでいる。





質疑応答

@ インドネシアの件では、なぜ自治体間で情報や対応に差が生まれたと思われるか。
→端的には、意識の差ではないだろうか。先ほど九州の自治体でも佐賀からの情報を共有するようにしたと話したが、なぜ佐賀県がそのようなことを言ってくるのか、理解できない自治体も実際にはあった。組織の中で、誰かが強い危機感をもたなければいけないと思う。






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