知事リレー講義
ライン
   2010年 11月 30日           堺市 竹山修身 市長


    未来に飛躍する「自由・自治都市 堺」 




1. はじめに

私は、昨年7月3日に34年間勤務した大阪府庁を退職して、堺市長選挙に出馬した。私は堺生まれの堺育ちで、大阪府の行政に長年携わっていたが、大阪府には市町村への出向という面白い仕事があり、38歳の時に南河内郡美原町の助役を経験した。美原町は6年前に堺市と合併し、そのおかげで堺市は政令市になれた。美原町の助役として住民に密着した行政を経験したことは、府県の行政では味わえないおもしろいものだった。

また、橋下徹大阪府知事と一緒に府庁で仕事をしていた。橋下大阪維新改革の一員として、政策企画部長として仕事をしていた。大きな行政改革のうねりの中に自分を置く中で、地元堺の行政があまりにも生ぬるいのではないのかと思った。議会もそれほど活性化しておらず、市長と議会がうまくやっていなかった。そのために、大阪府庁を退職し、2ヶ月という短期決戦で選挙運動をした。

私の選挙運動に付いてきてくれたのは、末の娘や、元の部下の3人だった。3人がそれぞれの友人、知人、親戚へ働きかけるという草の根の選挙運動をした。相手には多くの政党がついていたが、私はまったくの無党派だったため、負けると思っていた。

スローガンは、「堺市政を市民目線で総点検」。堺市の行政は本当に市民の立場に立てているのかを総点検したいと思った。例えば、堺のメインストリートにLRTを走らせるという計画があったが、その費用が85億円だということでいろいろと揉めていたが、私はその85億円は無駄だと思った。そこはまさに歩いたり自転車に乗ったりするためのストリートだったため、私は徹底的に無駄だと言って回った。そのお金を、子ども施策や教育にまわしたいと訴えた。また、9月のシルバーウィークに橋下知事と一緒に道に立って訴えた。終盤には、有権者の私に対する支援のあり方が明らかに変わってきた。結果は13万6千票いただいたて、当選した。朝日新聞は、これを「堺ショック」と名付けた。






2.堺市のプロフィール


2−1.堺市の立地・アクセス

堺は、大消費地大阪を抱える都市型立地で、海外・国内の主要地域へのアクセス性が極めて高い場所である。

人口は83万9千人、面積は150平方キロメートルで、堺市の特徴はまさに製造業で、製造品出荷額は3兆3010億円で、政令市の中で第5位である。市民1人あたりの製造品出荷額では396万円で、政令市の中で第1位である。

関西空港からは26分で、海外からの便利性も良い。

 

2−2.堺市と周辺地域間の人(通勤、通学者)の流れ

堺市と周辺地域の人の流れを見ると、昼夜間人口比は93.5%で、昼の人口が夜に比べて6.5%低く、この部分は大阪市へ行っている。しかし、南大阪地域から一日に7万5千人堺市に流入している。全国的に突出した人口吸引力をもつ大阪市の影響を強く受けているが、一方で堺市の人口吸引力も大きく、全国的にも稀有な地域である。なお、今年のデータでは昼夜間人口比は95%程度になると思う。

 

2−3.関西・南大阪地域における堺市の位置づけ

堺市は製造品出荷額のシェアが大きく、他地域に比べ伸びも大きい。

 

2−4.堺市の産業構造の特徴

堺市は金属製品製造業と生産用機械器具製造業の集積が大きい。昔から金属の加工が盛んで、仁徳天皇陵からは鉄器がたくさん見つかっており、その頃から鋳物の職能集団がおり、鉄器の加工を堺でやっていた。

それが刀などの製造につながり、今は刃物や自転車の製造につながっている。

 

2−5.堺市の各地域の特色と産業集積の特徴

臨海部は、先端企業や優れた環境技術を有する企業が集積している。

都心部は、昔からの市街地で、商業、業務地が形成されている。また、機械金属工業の集積もある。

内陸部は、中小企業を中心とした工業集積がある。また、大阪府立大学や中小企業の支援センターもある。

丘陵部は緑豊かな泉北ニュータウンがある。ここでは農業が大きなウェイトを占めており、大阪府の農生産品の一割がここで生み出される。








  

3.堺市の主な取り組みについて

 

3−1.産業振興(企業誘致施策)

堺は企業誘致を進めるために、企業立地促進条例を制定し、固定資産税や事業所税を最高5分の4減免している。新規に600億円以上の建物を建てる場合、その20%以上の人が堺市内に住むということを条件に、固定資産税の8割を5年間免除しているように、全国でもトップレベルのインセンティブをつけている。

工場立地法に基づく準則を定める条例では、関西で初めて緑地規制の緩和を行った。

結果、認定企業は59社、投資見込額は約9000億円、雇用人員は4700人で、そのうち市内居住者は1400人となっている。年240億円税収が上がる見込みで、一方で360億円の軽減を行っている。この条例はさらに3年間延長し、堺の湾岸の先端部門と内陸部のものづくりの技術をドッキングしたいと思っている。

都心地域の業務系ゾーンに事業所や教育機関が入る場合、補助金を出している。堺はその他の都市と同じように都心地域の空洞化が始まっているため、臨海部は元気だが、都心の元気がなくなってきている。都心部に事業所を持ってくるために、補助金を出し、賃料を安くするという政策をとっており、その効果も出始めている。

 

3−2.観光振興@(古代からの歴史を持つ堺の観光資源)

堺は古代からの歴史を持つ観光資源がたくさんある。多様な産業、産品の発祥の地で、仁徳天皇陵古墳から埴輪や鉄器、武具が多数出土している。現在世界遺産登録を進めていて、暫定一覧表に記載された。世界からこの古墳群を見に来てほしいと思う。

中世には自由と自治の都市として有名で、千利休も堺から茶の湯文化を創り、日本に根付かせた。信長、秀吉ゆかりの神社仏閣もある。近世では、堺の打ち刃物を作った。今ではプロ料理人の80%が堺の打ち刃物を使っていると言われている。

歴史的建造物も多く、山口家という住宅は江戸初期の住宅で、それを買い取り自由に観覧できるようにした。近代では与謝野晶子が堺で生まれた。また、阪堺電鉄が1911年に開業した。

現代は環境モデル都市に指定されており、クリーンフロント堺や、3000世帯の電力をまかなえるメガソーラーもある。ナショナルトレーニングセンターが今年の4月に完成し、日本代表チームがワールドカップへ行く前にここで練習してから関西空港から旅立って行った。予想よりも多く入り、60〜70万人の利用がある。

 

3−3.観光振興A(観光資源を活かした主な取り組み)

堺の観光客は現在年間656万人で、5年後には1000万人にしたいと思っており、堺の観光の中心である歴史文化観光をソフト・ハード両面から深堀したいと思っている。そのために、千利休と与謝野晶子をコンセプトとして、文化・観光拠点を作ろうとしている。世界文化遺産の認定を踏まえた準備のために、百舌鳥古墳群や仁徳天皇陵の周辺を整備している。

また、堺の新しい魅力を活かしたニューツーリズムを多面的に展開しようとして、産業観光やスポーツ観光を動かしている。インバウンド(外国人旅行者の誘致)振興のために、海外からの人をどう呼び込むかを考えており、インバウンド研究会を、韓国、中国、シンガポール、インドネシアのインバウンド関係者を招いて行っている。その結果、堺へ行く必然性をまず作るように言われた。その必然性として仁徳天皇陵を一つの資源にしたいと思う。

 

3−4.温暖化対策(「クールシティ・堺」の実現に向けて!)

堺市ではベイエリアを「大阪ベイエリア次世代エネルギー・環境再生特区」として提案している。ここでは、税金も安くなり、環境の総合的な研究もでき、人材育成もできる。この技術をカンボジアなどの外国に伝えるため、職員を派遣して、環境改善施策を考えてもらうようにしたい。こういったクールシティ堺を作りたいと思う。

そのために、人材育成プログラムや海外技術者の受け入れを考えており、大阪府立大学と一緒に研究している。








4.地域主権時代の自治体経営

 

4−1.政令指定都市への移行(平成18年4月)

堺市は、平成18年4月に政令指定都市へ移行した。政令指定都市は基礎自治体で最大の権限と財源を持ち、府県並の事業を行う。

 

4−2.堺市の状況(主要統計データの指定都市比較)

堺市の状況をデータから他の政令市と比較したい。

人口では、平成17年国調で19都市中14位となっている。

昼夜間人口比率は15位で、堺は関東圏と似た傾向がある。

上場企業数では、17社で16位となっている。大阪から本社が東京へ移るのを防ぐために、オール大阪として取り組まないとならないと思う。堺にも本社が来たり、中小企業が上場できたりするような政策をとっていきたい。どのようなインセンティブをつけることで、堺に来てもらうことができるか、堺で生まれた企業が上場できるかを考えている。これも堺に来る必然性を作らないとならないと思うため、個別具体的な検討をしている。

市職員の数では、平成20年4月1日では5954名の18位で、非常に少ない人員で仕事をしている。

財政力指数は、0.81で12位となっている。財政力指数とは、収入割る需要のことで、基本的な都市としての需要と収入を比べ、収入が上回れば豊かな団体であると言える。収入は主に税だが、1が豊かさの一つのバロメータとなる。堺市は0.81なので、支出に収入がついてこないため、国から交付税をもらっているため、財政直指数を1にしたいと思う。大阪市は0.96で1に限りなく近い。1を超えているところは豊かな団体で、名古屋市は1.05となっている。河村市長は市民減税を行うと言っているが、これは豊かな団体だからできることで、市民減税を行うことで、さらに企業や個人が来たら名古屋がどんどん栄えると市長は言っており、正のスパイラルを作ることを目指している。

経常収支比率では、94.6で8位となっている。経常収支比率とは、義務的な経費を税収などの経常的な一般財源で割ったもののことである。義務的な経費とは、職員の人件費や公債費、生活保護費などの扶助費があたる。94.6ということは、投資費用は5.4%しかないということになり、100を超えると投資的経費が0ということになるため、堺もギリギリのところである。浜松市は1位の86.1で、14%投資的経費にまわせるということになる。大阪市は99.2で、ほとんど余裕がない。堺市では80%台を目指し、少なくとも10数%は投資的経費にまわしたいと思う。

財政力指数や経常収支比率を見ると、堺は財政的にはそれほど豊かではないということが言える。

実質公債費比率を見ると、6.9%で2位となっている。実質公債費比率とは、標準的な財政規模の中に占める公債費の割合だが、堺市は非常に少なく、借金をしていないということが言える。将来負担比率は、81.1%で3位となっている。千葉市など、300%を超えている所もあり、これは標準財政規模の3年分をすでに借金しているということを意味する。堺市は将来にわたって健全な起債状況であると言える。

かつて堺はラスパイレス指数(国家公務員の給与を100としたときの、市町村の公務員給与の指数)が135まで行き、日本一高かったことがある。その時はどんどん投資も行い、財政破綻をした。

財政破綻した経験を踏まえ、行革を進めてきている。堺市の今の財政状況を一家の家計に例えると、かつて贅沢をしてその家は落ちぶれたが、反省して、現在は非常に堅実な家計運営をしている家だと言える。堅実だが、収入が弱いというのが現状のため、企業や担税力のある人を呼び込みたい。堺は教育が素晴らしい、福祉が素晴らしい、産業が素晴らしいと思ってもらえるようなイメージを、実体をともなって全国に発信していきたい。

 

4−3.これまでの行財政改革の取組

これまで行財政改革を続けてきており、平成14年度から21年度で、単年度効果額では812億円、累積効果額では1903億円にものぼっている。また、職員数を見ても、集中改革プランでは平成17年から平成22年までで10%の削減目標だったが、結果として12.9%の削減に成功した。

 

4−4.新たな「行財政改革プログラム」の策定に向けて

するべき行革をしなければ、どんどん無駄がたまっていく。随時見直しをしていくために、今年度中に平成25年度までの改革プログラムを策定し、方向性と取組手法を示したいと思う。

市役所改革としては、人件費の総点検を行い、民間企業と均衡のある人件費にしたいと思う。政令市の人件費は人事院という国の機関と市の人事委員会が共同で給与実態調査を行い、決められているが、この調査は50人以上の事業所に限られるため、堺の実態を考えると、30人以上で見てはどうかということを提案している。

平成21年度からの10年間で、さらに2割の人件費削減をしたいと思っている。職員は少なければ少ないほど精鋭になると思っている。そのために、堺版事業仕分けを行っており、無作為の堺市民を選び、堺の32事業について、事前説明を行い、市民に入ってもらい、専門家と市職員を交えて議論してもらっている。

その効果が今回の予算で、何億円かの削減効果として出ると思う。

財政構造改革としては、税源涵養施策の充実や、事業の選択と集中を徹底する。

外郭団体改革としては、外郭団体は市の本体では出来ないような仕事をするのが本来の姿だが、段々としなくても良いような仕事までするようになってしまうという弊害があった。そのため、役割を終えた外郭団体を統廃合するためのプランを策定している。

市政の見える化(可視化)では、意思決定過程を徹底的に公開している。庁議での発言はすべて市民に公開している。予算編成過程もすべて公開しており、何のために予算をつけたのかということを公開している。市長定例会見もインターネットでライブ放送し、市長の考えをリアルタイムで伝えるようにしている。

来年2月からは議会もインターネットで公表するようになる。

 

4−5.期待される堺市職員像

(1)公務員としての高い志を持っていること

私は大阪府で19年人事をやっており、多数の採用試験の面接にも関わった。今までは、「安定している」、「競争が嫌だ」という理由で公務員を受けに来て、面接でも堂々とそのようなことを言う人がいたが、そのような人は全員お断りした。今の公務員は「地域を動かす」、「公益性が分かる」、「地域の郷土愛を持つ」ことが必要だと思う。

別枠で、58歳までの社会人採用を行っているが、ここには民間の人が公務員を受験しに来て、新しい渦を堺市役所に巻き起こしている。民間で厳しい競争を経験してきた人が我々の職場に入ると、大きなインパクトとなる。例えば、今年は55歳の民間の出版会社にいた人が採用され、図書館に配属となった。民間企業とはひと味違った公務員として、高い志を持ってきたと思う。実務経験を持った人が堺市を変えてくれると思っている。

(2)市民の痛みを共有できる

市には市民からいろいろな相談が上がってくる。私はなかなか現場に行けないが、相談を基に現場に指示を出し、場合によっては私が直接見に行くようにしている。

ある人は、「父親が脳内出血で倒れ、支援策の相談を区の福祉窓口にしに行ったら、要介護度の認定のみ行い、重度障害者の認定の制度を教えられていなかった。」という訴えをした。重度障害者に認定されると、NHKの受診料が安くなるなどの特典があるため、そのデメリットを過去に遡って支払ってもらえないかということを言われた。確かに区の窓口でしっかり教えられていれば防げたかもしれないが、やはり申請主義であるため、今まで申請していなかった人との公平性を考えると、過去に遡って支払うことは難しいと伝えた。

なかなか納得していただけなかったと思うが、窓口対応をもっとしっかり出来ていれば良かった、ということをその時に感じた。市民の訴えに共感を持つことが大事だと思う。ワンストップサービスで対応できるような体勢にしていきたい。

一方で、モンスター市民がいることは確かで、ちょっとした誤りを捉えて、何日も苦言を呈しに来る人がいる。無理だと思ったら毅然とした対応をとるよう職員に指導している。

(3)政策立案能力と説明責任を兼備する

人員削減を進めると、コンサルタントなどの業者に任せて仕事を進めていくことがあるが、大事な部分は職員が汗を流して考えるべきだと思っている。市民に対して説明責任をきっちり果たせる職員が望まれると思う。

(4)広い視野を持っている

堺市も今いろいろなところで事業を行っているおり、今までは公の領域は限られていたが、今は公・民がボーダレスになっている。指定管理など、民間の企業を使って公共施設を管理するようになっている。公務員の視野だけでなく、民間に対する折衝力が必要になってくるため、ネゴシエーションが出来る人でないとならない。

堺には古くからいろいろな人が来ている。例えば、行基は渡来系の人で、堺で生まれ、公共事業を行い、天下泰平のために全国行脚された。また、千利休や、一休などいろいろな人物が外から来られて堺を造りあげた。このように、グローバルな人材を今求めている。

また、ストレス耐性として、職場風土の厳しい中でどのように仕事ができるかということを考えられないとならない。嫌なことを忘れ、リフレッシュする術を持っているかどうかということが重要である。

(5)堺への熱い思いを持っている

堺への熱い思いを持ってもらうために、小学校から堺の歴史を教えている。また、地元の祭りに必ず参加させるなど、地元から子どもへの働きかけが必要だと思う。熱い思いを持って外に出て行って、また堺に戻って来てもらいたい。堺は、南蛮貿易の街であるように、堺から外に飛び出し、また堺に戻ってくるという人材を求めている。









5.関西から発信する多様な自治制度

 

5−1.地域主権改革の意義

「地域主権改革」という言葉が今日本の国の中で大きな話題となっている。現政権の一丁目一番地と言われるが、まず初めに、国・府県・市町村の役割分担を明確にすることが必要だと思う。国から地方への権限、財源の移譲が必要で、国の出先機関の権限と財源を府県や市町村に渡さなければならない。例えば、ハローワークは元々は府の機関だったが、いつの間にか国の出先機関になっていた。地方にあった権限が、国に行ってしまうといったように、分権改革に逆行するようなこともあった。このため、ハローワークを都道府県へ移管するよう主張している。

今、国の出先機関が一杯あるが、そのほとんどの事業が、府県や市町村で出来ることである。例えば、近畿経済産業局のやっている事業は、府県や市町村でできる事業がたくさんある。商店街振興の補助金が国から出ているが、地元の商店街振興の事業に何故国が補助金を出さないとならないのか。市町村に権限を譲って、市町村がそれぞれの商店街を振興すべきだと思っている。

国の今の出先機関の事業は、地方分権改革に逆行するようなものがたくさんある。きちっとチェックしていかないとならない。

地方分権改革、地域主権改革の要点は、基礎自治体中心主義、基礎自治体優先の原則である。その中身は二つあり、補完性の原則と近接性の原則である。事務事業を地域に任せれば良いのではないかということを第一に考え、地域にできないことは市町村がやり、市町村ができないことは府県がやり、府県でできない国防などは国がやるというように、補完性の原則に従い、それぞれの事務を再度捉えなおすべきである。

自助、共助、公助という考え方が、災害の時には大切になる。

近接性の原則は、よく”near is better”と言われ、身近なサービスは身近な自治体でやった方が、住民にもよく分かり、税金の使い道もしっかりチェックできるという内容である。

 

5−2 関西4政令指定都市の連携

関西の4政令指定都市は連携しており、平成21年1月26日に二条城に集まり、二条城宣言を行った。政令市が連携することで、自らの質を高め、それぞれの地域に合った地域力・文化力・人間力に磨きをかけ、競争するという内容である。道州制の導入も含め、大都市の役割の抜本的な見直しを国や府県に求めていこうとしており、周辺の自治体と水平連携し、協力しながら地域の発展を目指していきたい。

 

5−3 橋下知事の「大阪都構想」

私は橋下知事と一緒に大阪府で政策企画部長をしていた。橋下知事の実行力、発想力、カリスマ性、大阪府が財政危機から一転して黒字化したことは本当に素晴らしいと思う。

 行政改革を徹底的にやっていくために、橋下知事は「大阪都構想」を打ち出している。この要点は「強い広域自治体と優しい基礎自治体」である。強い広域自治体とは、産業基盤や都市基盤など大規模で広域でやるべきものは府県が行い、福祉、教育、衛生など地元密着のものは基礎自治体がやるというものである。そのために、現在の大阪府と大阪市には二重行政の弊害があると指摘されている。二重行政の弊害を取り除くためには、「ONE大阪」として、大阪の指揮官は一人で良いのではないかということを橋下知事は述べている。

例えば、港湾行政では、大阪港と堺泉北港は管理者が違う。湾岸で一体に続いているのに、何故二つの市と府県がやらなくてはならないのかという疑問があり、管理者は一つで良いということで、神戸市も含めて動き出した。

また、水道、用水供給事業は、大阪府もやっていて大阪市もやっている。大阪市は水を作っても人口減少で水余りが起きている。同様に大阪府も、かつての高度成長のときから比べて水が余っている。この二つを一緒にしようとしたが、うまくいかなかった。そのため、大阪府下の42市町村が企業体を作り、水作りをしていき、いらないところを整理して、大阪府の組織から切り離し別の組織体として立ち上げた。今の水道料金は、大阪府と大阪市では10円違うが、企業団にすることで大阪府分を下げることができ、大阪市と同じ水準にすることが出来た時に、府市統合ができると思っている。しかし、43市町村が一緒の用水供給ができれば、もっと効率的かつ安全で安心な良質な水を送れると思う。

大規模施設でも二重行政があり、例えば、なみはやドームと大阪市中央体育館はほぼ同じものであるため、府民・市民から見たら税金の無駄遣いとしかうつらず、このような二重行政を排除する必要がある。国際的な都市間競争に勝つためには、大阪がどのように関西の中心となっていくかを考えないといけない。

 

5−4.関西広域連合の発足

より強い広域連携を発揮するために、関西広域連合を発足させようとしている。堺市は当初は入っていないが、第2フェーズとして、国の権限が移譲された時に入るつもりである。市にある直轄国道、一級河川はすべて関西広域連合にやってもうらおうと考えており、これは道州制への第一歩だと思う。道州制に対しては、京都府知事も兵庫県知事も危惧しているが、危惧を払拭するためには、大阪府・大阪市から権限を分散させていく必要がある。関西州の州都は3つあっても良いのではないかと私は思う。

 

5−5南大阪全体の発展に向けた広域連携から都市州まで

関西全体の活性化のために、4政令市の連携で関西全体を牽引し、東京一極集中を打破したい。また、南大阪には今元気がなく、関空のメリットを享受できていない。南大阪は関空が来るときに多くの公共投資をして公共施設を造ったため、苦しい状況にある。フルセットの公共施設からハーフセットの公共施設へと整理し、その調整権限を堺市が持てば良いと思う。将来はドイツに見られるような都市州も検討に値するのではないだろうかと思っている。

堺は南大阪地域全体の活性化、連絡、調整機能を担っていきたいと思う。








 質疑応答

<問> 重点政策の「子どもに元気を」ということでは、具体的にどのような取り組みをしていこうと思っているのか。

<答> 子どもを元気にするために、今まで幼稚園までが対象だった医療費の補助を、中学3年まで、500円の自己負担ですべて出来るようにした。このことで、子どもが病気になったなど不足の事態に備えている。また、塾に行きたくても行けない子どものために、小学校3年から中学校3年まで、無料の放課後学習をしている。堺の教育は魅力があると思って貰い、堺を好きになれるような教育をしたいと思っている。その意味で、堺を元気にするためには、まず子どもが元気にならないといけないと思っている。

 

<問> 市政の可視化に関して、議会の反発はなかったのか。

<答> 確かに、水面下では反発はあったと思う。しかし、全部公開してしまうと楽になるのは確かだった。公開することで、市民から市政がよく分かるようになったという意見もいただいているので、おそらく私が独創でやったことが市民にとっては良かったと思う。

 

<問> 堺にある観光資源を、どのように観光産業へ持っていくのか。

<答> 今は観光のモデルルートを考えている。例えば、韓国の人に対しては、行基は大陸系の方で、その遺跡がたくさんあるためそこを見てもらい、また、仁徳天皇陵へも行ってもらう。そしてその後奈良の飛鳥へ行ってもらうというようなコースが考えられる。中国の人へはまた適したコースがある。そのように、個別に考えている。

産業観光では、シャープからどのように工場へ行ってもうらかなど、ルート作りを進めている。堺に来る必然性の戦略を練らないとならないため、いろいろ発信をしている。例えば、11月27日に「るるぶ堺」という情報誌が出た。今までは声がかからなかったが、堺がおもしろいということで、JTBが来てくれ、堺の町歩きを紹介した。

 

<問> 職員とどのように関わっているのか。また、職員にどのようなことを期待しているか。

<答> 自分の頭で考えて、自分で汗を出して動いてほしいと思っている。また、職員をルーティンな仕事から解放しないといけないと思う。知恵の部分を職員が担い、あとは民間に任せても良い。職員が精鋭になるように、より少数にして、政策立案能力を高めたいと思っている。そのため、職員にはかなり厳しいことを言っている。

 

<問> これから人や企業を集めて税収を上げ、堺市の財政を改革するとのことだったが、これらの計画を行うためには支出が増えるように思うが、計画がうまくいかず頓挫しそうになった場合、最悪の事態を回避するための対策は考えているか。

<答> 民の力を借りることが必要だと思う。援助がなければ100年走っているチンチン電車を潰すということを阪堺電気軌道が言ってきたが、堺市は阪堺と議論をして、10年間で50億円出すと言った。民間の方にも、ファンドのような形で低床車両を購入してほしいということを言った。民間の人がこの電車を残すためにどのようなことができるかを考えてもらうことや、国の資金も安全・安心な保線整備のためには必要で、堺市単独では事業ができないため、民の力、国の力を投入し、そして市民がチンチン電車を愛するということを盛り上げるというように、すべて総合的に見ていかないといけないと思っている。これから投資的経費が増えるかもしれないが、建設については50年かかるような大きな事業には50年の起債をしても良いと思う。無駄にならないような形で、費用対効果が1以上になるように、費用便益分析をしっかりやって公共事業をやっていきたい。

 

<問> 観光によって得られる資源をどのように市民に還元していくのか。

<答> 今の観光客の90%以上が日帰り観光で、日帰り観光では堺で消費するお金が約5千円程度にしかならないが、これを宿泊観光にすると平均2万円となる。そのため、堺の個人や事業所に対して、観光客にそのくらいのお金を使ってもらえるようにすることが、市民を豊かにすることであると伝えている。そうすることで、税収も上がり、堺市も豊かになる。そのような正のスパイラルを観光によって作りたい。

 

<問> 民間経験の人を採用したことで、具体的なメリットがあったら教えてほしい。

<答> 銀行経験のある方が債権回収をやっている。また、出版会社出身の人が図書館の事務職員をやるなど、公務員と違う立場でその仕事をしていた人が、公務員になることで、職員たちにまったく新しい考え方が生まれる。人材が混ざることで活性化が起きている。









Copyright(c) Ritsumeikan Univ. All Right reserved.
このページに関するお問い合わせは、立命館大学 共通教育推進機構(事務局:共通教育課) まで
TEL(075)465-8472