「市民みんなで「役割と責任」を持つ市民分権型まちづくり」
私は、市長をやりたいとか政治家になりたいということを、昔は1ミリも思っていなかった。きれいごとかもしれないが、私が小学校4年生くらいの時は、エチオピアの難民のキャンペーンがされていた時期で、当時地球の裏側で食事が食べられず、生きていくことすら大変という映像を目の当たりにした。
それを見て、同じ人間として生きているにもかかわらず、地球の裏側には生きていくのが大変な人もいるのだということを思い、それから10年くらいずっと、アフリカの難民のことが夢に出続けた。そして、ここに関わっていくことを一生涯の目標としてやっていけないかということを思うようになった。
自分の生き方は楽で、そこのために生きていければ良いと思っている。人は大体、目の前の人には優しくできても、地球の裏側にいる人や、自分とは違った立場にいる人にはなかなか優しくなれないというのが人間の性でもある。
日本でも、3.11の地震がある前には、リビアやエジプトやチュニジアの辺りで内戦があり、子どもが銃を持って撃ち合っているシーンがずっと出ていたにもかかわらず、3.11の地震以降はアフリカの状況が出ることも消えてしまった。
松阪市でも、3.11以降は障害者団体への寄付金や企業からの補助が一切なくなってしまった。人は、テレビで見たことや現場で見たことには優しくあれると思う。松阪市でも東日本大震災に対しては1億2,000万円くらい義援金が集まったが、見えている部分に対する優しさと、目に見えないところにも痛みを持っている人や、現実に生きている人がいるということを、大学生の皆さんには感じてほしい。
私はアフリカにいたが、アフリカでは10歳の女の子が売春をしている。それを止めることはできなかった。アフリカの離島でエイズの罹患率が40%くらいの地域で活動をしていたが、エイズ検査をさせることとコンドームを配ることしかできなかった。売春をすることや、女性が権力者のところへ結婚しに行くということに、皆さんは違和感を覚えるかもしれないが、実際には充実感すらその女の子から感じることもある。
私は今35歳だが、あっという間に35歳になってしまったと思う。明日になったらできる、来年になったらできる、ある立場になったらできるということを思っていたら、人生はすぐ終わってしまう。
今を一生懸命生きながら、自分の価値観を持ち続けていき、今できること、今の瞬間にできることを問い詰めていく中で、地球の裏側にいる人に対する優しさを持つようになれれば、困ることはないと思う。
私のモットーは「永遠の偽善者」である。松阪市において、実際に痛みを持っていたり、苦しいと言っていたりする人は目に見えて対応できる。しかし、目に見えない痛みを持っている人に対応することが、行政の役目だと思う。
地域単位、家族単位で考えていかないと、大きなことにはつながらないと思う。現場でいろいろなものを見て、今自分ができること、将来自分ができることを「今、今、今」で考えてほしい。
松阪市は40年くらいまともな選挙をやっておらず、政党が相乗りで、現職を応援するという形になっていた。
私は必ずしも市長になりたかったわけではないが、今自分がいることに対して、地域で問題があるにも関わらず、現職をすべての政党、自治体、企業が応援していることに市民は違和感を覚えている。
私は市長選に立候補する時に、40項目のマニフェストを作ったが、それらは「〜をやりません」というものだった。
就任時松阪市には1,288億円の借金があった。これは市民の皆さんが無責任に「やってくれ」と無自覚に言ってきた、またそんな議員や市長を許してきた結果である。その借金が悪いかどうかではなく、努力すれば将来世代の借金を減らせるかもしれない。今は税収が減っている状況で、人口も減少しており、少子高齢化も進んでいる。一方で医療費も大幅に上がっている。また、リーマン・ショック以降、税収が下がり、行政の費用も伸びている。お金がかかるにもかかわらず、収入は減っているという状況にある。税金を上げればよいのか、サービスを下げればよいのか。
市民の皆さんに役割を持ってほしいということを、私は選挙の前から言ってきた。市長や議員や総理大臣がアホでも、各地域の市民がしっかりしていれば地域は成り立つ。松阪市をモデルケースにしてやっていければよいと思う。市民に役割と責任を持ってもらうというまちづくりをしているのが松阪市である。
松阪市の取り組みの一つに、シンポジウムシステムというものがある。
これまでは、行政がいろいろなことを内部で決めて、ある程度決まった時に議会にかけ、市民には事前には言わないという仕組みになっていた。まず議会に説明し、市民には説明会やパブリック・コメントでアリバイ作りをするだけとなっていた。検討会や審議会を作り、関係団体を集めて10人くらいの専門家集団で、そこから答申をもらう。そして、市民の代表である審議会から意見をもらったため、その方針で進めようとする。
しかし、市民は誰もそのような検討会や審議会のことを知らない。松阪市では、市長は市民に選んでもらった存在であるため、大きな判断をするときには市民にも最低限の責任を持ってもらおうとしている。
松阪市では、週1回程度、シンポジウムをしている。例えば、駅前にホテル、マンション、駐車場を造ろうという計画があったが、それについてもシンポジウムでの議論にかけた。風車事業の実施の是非も地域で意見聴取会を行った。市民病院にCTを入れるかどうかも、シンポジウムで市民に問うた。
そこでは、行政が決定をする前に、徹底的に情報公開するようにしている。市民同士でも意見交換してもらい、最終的に、市民の方にも一定の覚悟と責任を持って方針を決めてもらう。行政も説明責任を持って、最後に市長が決断する。その後、議会に提出するという流れになっている。
議会は、「議会軽視ではないか」ということを言ったが、議会は議会で市民から声を聞いて、それを修正しても否決しても構わず、行政も議会も市民から意見を聞くようにしようとしているだけである。大きな案件には、必ず市民の意見聴取会を行っている。
松阪市には43の小学校区があり、その校区ごとに役割を果たしてもらうための制度設計をしている。各地域に入っていくと、松阪市は結構広い市で、端から端まで4時間くらいかかる。
しかし、地域によって状況は異なるにもかかわらず、行政は一律にしか対応できない。防災も福祉も一律でしかできない。そのため、地域の福祉会や消防団、子ども会に対して一律で補助金を出す。しかし、地域のニーズがあり、例えばある地域では子ども会を重視したほうが良かったり、産業振興を重視したほうが良かったりする。
地域のニーズのことを一番知っているのは、行政職員ではなく、17万人の市民である。それならば、地域でも市民に責任と役割を果たしてもらったほうが良い。行政から地域への責任転嫁ではないかと言われるが、行政がお金を使っても地域がお金を使っても、それは市長のポケットマネーではなく、税金か次の世代の借金でしかない。それをなるべく使わないためには、できるかぎり地域の皆さんにお金と汗を流してもらおうという発想に立っている。そのときに、一番地域のことを知っている地域の皆さんが、お金の使い道を決めるのが良い。
基本的には行政の施策は画一的なため、地域における創意工夫により市民の満足度を高めるのが松阪市の取り組みである。
これまでも自治会という組織が中心となっていろいろな活動をまとめていたため、住民協議会というまとまりの組織をつくらなくても、すでに自治会が地域の活動をまとめているし、住民協議会をつくらなくても良いのではないかという話もあった。
そのように、住民協議会を作ることに対しては、地域の方々から結構反対された。住民協議会を43地域すべてで作ろうという話をしたときも、面倒くさい、いろいろな組織を束ねた住民協議会など絶対につくれない、今の自治会組織で十分やっているのに何故もう一つつくらなければならないのかということを言われた。
しかし、住民協議会は行政が誘導してつくるものでもなかった。自治会の活動はこれからも自治会としてやってもらい、PTAやNGOの活動もそれぞれPTAやNGOとしてやってもらえば良い。今後のまちづくり全体を考えていくときに、経営会議というような形で、それぞれの代表者が集まり、いろいろな案件に対して、お金の使い道を考えてみてはどうかというのが行政の誘導だった。
これまでは、地域に祭りの補助金を100万円、子ども会の費用を100万円、老人会の費用を100万円、防災のために100万円出していたとして、祭りに100万円使わなかったら行政は返還を求めていた。しかし、祭りを50万円でできたら、残りの50万円は他の事業に回せば良い。これまでのように目的を区分けてお金を渡すのではなく、地域に400万円や500万円といったまとまったお金をパッケージにして交付金として渡し、住民協議会でいろいろな人が集まってみんなで使い道を考えるという仕組みにしている。
最初は若い人が集まらないということも言われたが、悩みに悩んで、来年の4月までに住民協議会ができなければ、地域に渡しているお金を全てなくすと言うと、住民協議会の準備会ができてきて、議論の中で新しい取り組みをする地域も出てきた。
若い世代や女性も住民協議会に入ったまちづくりを進めていこうという動きが今松阪市では進んでいる。今では準備会も含めて、35地域で住民協議会が立ち上がっていて、今年度中には43地域すべてで出来上がる方向となっている。
そこに対して、行政でも行財政改革を内部でやる中で、地域に任せたほうが良い予算、行政がしっかりと責任を持って行ったほうが良い予算というように分割していこうとしている。可能な限り、住民協議会にゆだねるようにする。
また、これは全国で唯一の取り組みだが、43地区それぞれに対して、直接ふるさと納税が入るようにしている。それを始めてから、各地域が、自分たちの地域にふるさと納税を入れるとこのような特典を提供するということをアピールするようになり、多いところではすでに30万円ほど入ったところもある。そのように、自主財源を他の場所から取ってくる仕組みも入れている。皆さんで、地域のあり方を考えるという地域づくりを今進めている。
防災訓練などはどこでもしているではないかと思うかもしれないが、松阪市の場合は地域の人が全員参加するというのが特徴で、各種団体も参加し、若い世代から老人まで、全部が一緒になって防災訓練をしたり挨拶運動をしたり、不法投棄の撤去活動をしたりしている。
自治会のレベルを超えて、みんなで取り組むという意識が生まれている。山の中にある地域では、地域でとれたクレソンを売り出している。また、その地域は大学と共同研究を行い、研究発表で賞を取り、得たお金を地域に還元するという形で、大学にアプローチしてお金を誘導してきたりもしている。今では他の大学も今入って研究プロジェクトを立 ち上げており、大学との連携も進めている。
地域主体の地域づくりを実現するために、行政の計画以上に、43地域それぞれがつくる地域計画を重視し、その計画に応じた交付金のあり方にしていくことが必要となる。これまではコンサルに1,000万円ほどで依頼をして環境基本計画などを作ってもらっていたが、これをやめにして、内部で作ると20万円で作ることができた。
国や県の枠組みで行政が作る計画ではなく、今後は地域地域で計画を作っていく中で、地域の住民だけで作るのではなく、行政職員もしっかりと地域地域でかかわらせるという役割を持たせたいと考えている。
住民協議会が43地域で立ち上がった後のステップとしては、住民協議会が5つ程度集まったところに、地域の拠点のようなものを作りたいと思っている。
名古屋市や大阪市にある「区」のようなものを作り、行政の職員を派遣して、地域の計画を作ったり、地域の問題を一緒に考えたりして、職員と住民が共に汗を流すようにしたいと思っている。
今でも松阪市には地区市民センターというのがあり、職員が2名ほどいるが、それをやめにして、住民の方に責任を持って運営してもらおうと考えている。これまでは税金で運営していた地区市民センターを、住民協議会に自分たちのお金で運営させるようにし、そのかわり、5~6地区を束ねたブロックごとの計画を総合計画に反映させるまちづくりを進めている。
地域計画は本当に市民の責任、地域の責任と役割を明確にするもので、多様な主体を全部まとめて地域づくりに参加させようというのが住民協議会である。
松阪市の住民協議会は作るのに時間がかかり、地域内部や行政とも大喧嘩となるが、代表で選ばれた方は地域の住民に説明する責任があり、行政と直接やり取りをする中で、地域づくりを市民みんなでやるという責任と役割を持つようにするというのが松阪市の取り組みとなっている。
代表者が地域の住民みんなに対して責任を持ち、地域の住民もその代表者に対して責任を持つというのが松阪市の特徴となっている。これまで各課が独自に出していた予算を、まとめて交付金として渡すことに加え、これまで松阪市が200万円ほどでやっていた火葬場のマネジメントを、地域で160万円でやってくださいとお願いした。そのかわり、余ったら自由に使っても良いということにした。例えば地域で100万円で火葬場の管理ができたら、残りの60万円は祭りに使っても構わない。
よく地方分権や地域分権と言われるが、最終的には市民分権にしていかないといけないと思う。松阪市として、ではなく全国的に、政治が悪い、市長が悪い、議会が悪いという話があるが、幸せ感をどう感じるかは個人の問題で、どこにいようが何をしていようが幸せを感じている人がいる。
市民一人ひとりが自分自身の責任と役割を感じ、自分自身の幸せ感をしっかり持ち、自分自身が何をできるのか、地域で何ができるのかということをしっかりと考えるようにしなければならない。一人ひとりの市民が、元気で長生きでぽっくりいくまで、しっかりと役割を持ってもらって、一人ひとりが自分たちの地域の中でどうするかを考えないとならない。
市民分権という意識をしっかり持っていかないと、結局幸せ感が感じられず、地域から成熟してこない国になってしまうと思う。松阪市の市民分権は、行政の施策ではなく、住民の幸せづくりの部分に対してどのような枠組みでバックアップし応援していくのかということを考えるものである。
問 住民協議会にやむを得ず出席できなかった人の声はどう吸い上げているのか。
答 日本の選挙制度からしても、代表者を選ぶという間接民主制となっている。本来は17万人すべての声を吸い上げられることが望ましいが、みんなで集まって話すだけではなかなか意見がまとまらない。しかし、私としては30名の代表の市議会議員だけでは、なかなか声が届かないと思っている。
ひとつ落として地域という枠組みで考えれば、地域活動にはほとんどの人がかかわっており、人はなんらかの形で地域では役割を果たしている。本当は地域住民のいろいろな声が可能な限り反映されることが望ましい。全部の声を取り入れるのは不可能かもしれないが、可能な限り多くの声を取り入れたいと思う。
問 「ひげの市長」と言われたりもしているが、何かスタイルに対してポリシーはあるのか。
答 いろいろなスタイルがあると思う。私は就任前もひげは伸ばしていた。議会質問でもひげを伸ばしていて下品だと思わないのかと言われるが、見苦しくていい加減な市長だが仕事はきちんとやっていると言われるのであれば、市民に対して自分の仕事が届いていれば良いと思う。テレビ番組に出るのは断ることが多く、松阪市政のことがあれば100%断っている。今の自分の役割や責任を考えると、ひげで批判されようが、今の仕事さえやっていれば良いと思っている。
問 20年後、30年後の松阪市はどのようになっていると思うか。
答 正直、自分があと何年市長をやるのかわからない。しかし、今自分が松阪市政でやったことは、数十年後必ず問われると思う。
今の価値観と将来の価値観はおそらく異なり、自分が今正しいと思ってやっていることは、5年後10年後には、なぜあのときあのようなことをやったのかと言われるかもしれない。
政治の世界は長くても2期までだと思う。私は2期やったら政治の世界に残るつもりはない。政治の世界から離れるからこそ今やっておこうと思うなかで、今20年後30年後を想定してやれることはするが、20年後30年後に市民や政治家が自分たちのことを考えていける土台づくりをしていこうと思っている。私が政治や行政をつくるのではなく、市民の声を聞ける土台をつくりたいと思う。松阪市のモデルが他の市に広がるようなまちづくりをしていければと思う。
問 住民協議会のこれからはどのように進めていくのか。
答 よく誤解されるが、住民協議会は決して行政の下部組織としてあるわけではない。松阪市の住民協議会は、本当は作らなくても良いものである。行政がサポートできる範囲は限られていて、かかる費用がぐんと伸びる中で、1,280億円あった借金が1,230億円まで、50億円程度減らすことができた。
このように、財政再建しながら、税収が厳しいという状況の中で、地域の一人ひとりが役割を持ってがんばってもらわないと、苦しむことになるということを呼びかける中で、やっと地域の住民協議会が25、準備会が10立ち上がった。
これまで公民館活動や運動会、祭りでは地域の人が集まっていたが、それ以外に常設的に地域の人々が集まることはなかった。地域の中でいろいろな主体が集まる中で幅が広がってくるというのが地域協議会のあり方だと思う。住民協議会同士がお互いの良いところを競い合ったり、住民協議会が5~6つ集まり、そこに行政が絡んでいき、地域拠点を松阪市行政としてつくっていくなかで、地域の住民の自発的な活動と行政の地域ごとのマネジメントを連動させた行政と地域の関係につながっていくようにしようとしている。
問 市民が責任を持って地域をつくるという政策は、17万人の中規模な市だからこそできる政策なのかと思う。もっと人口が多く、地域としてのつながりが見えにくいようなところでも、似たような状況は作れると思うか。
答 できると思う。逆に都市部のほうがやるべきだと思う。松阪市でも、まちなかでの住民協議会設立が大変難航した。17万人という中規模だからとか、100万人、1,000万人だからという問題ではなく、結局松阪市でも一つひとつの単位は1,000人〜2,000人の規模で落としこめている。松阪市でも田舎のほうの地域ではもともと地域コミュニティができあがっていて、お互いの顔を知っていた。そのようなところでは住民協議会も作りやすかった。一方で、駅前や産業の集積している地域など、住民の横の連携がない地域では、住民協議会を立ち上げるのが難航している。
しかし、本当に住民協議会が必要なのは町場である。田舎のほうでは地域コミュニティが昔から地域づくりを行ってきていた。私は43地域すべてで作りたかったため、これまで地域コミュニティがあったところにも住民協議会を立ち上げてほしいとお願いすると、田舎のほうから立ち上がっていった。
東京や名古屋でこのような取り組みができるかと言うと、必ずできる。ただ、行政職員がそこまで汗を流す覚悟をしないとならない。松阪市では、職員が年中朝から夜まで地域をまわり、土日も含めて地域の方々と話しあっている。行政にとっては、何もせずに放っておくのが一番楽だが、住民協議会づくりに対して市長も含めて全庁的に意識を持つようにしている。基礎的自治体が汗を流す意識を持って地域にかかわれば、どれだけ都市部でも必ずできると思う。
問 地方都市全体の問題として、経済の地盤沈下という問題があると思う。それに対して住民ができることにはどのようなことがあると思うか。
答 松阪市も他の地域と同じように、駅前商店街が衰退している。松阪市は、今日本橋に出ている松阪商人発祥の地で、三越などの発祥の地である。今でも商店街が多く、商人意識の高いまちである。
しかし、空き店舗が増えているのは事実で、これまでの松阪市の方針は、駅前にホテル、マンション、駐車場などのビルを建てていこうという都市計画になっていたが、私は本当にそれがまちづくりかという意識を持っていた。
シンポジウムシステムをかなりの回数重ねる中で、まちなか再生プランを行政がつくるのではなく、市民みんなで作ろうということになり、まちづくりシンポジウムを5回くらいステップアップ型で行い、その後ワークショップ形式で、地域の商店街の方々、住民の方々、産業関係の方々を呼んで、公の場で議論もした。
そして、駅前や商店街の振興をどうするかということを、もちろん行政も入るが、市民とともにまちなか再生プランを作っていった。
都市計画に行政が大規模なお金をかけるのではなく、毎年1億円程度の規模で観光振興やボランティア団体の活性化など細かいところにお金を入れていくというのが松阪市の方針となっている。
行政がまちなか開業塾というものも行い、開業の仕方を教えるなどしている。どちらかというとソフト面にお金を使っている。都市計画として多額のお金を使って改善するのではなく、市民の意見を聞いて、市民の責任で駅前の活性化などをやっている。
今後は、地域で住民協議会をマネジメントしてもらうなかで、これまでは別々に活動していた団体が住民協議会という枠組みの中で連動して、一つのまちなかの再生をやっていきたい。まちなか再生プランを作るだけではなく、見直しを実行委員会で定期的に行っている。発表会で市民に報告することもしている。一朝一夕では変わらないため、ソフト面や人の意識から変えていくのがまちづくりかと思う。
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