「さいたま市 未来創造図 〜こんなまちを創りたい〜」
さいたま市は、名前は知っているが、何かイメージが湧かないところではないかと思う。さいたま市は今年で合併してから10年目を迎える、旧大宮市、浦和市、与野市、岩槻市が合併してできた市である。さいたま市と言ってすぐにイメージが湧かないというのがさいたま市の特徴ともなっている。これからのさいたま市は、どのようなブランドイメージを築きあげていくかが今後の課題だと思う。
さいたま市がどのような市かを話したい。平成13年5月1日に、大宮市、浦和市、与野市の3市が合併した。当時浦和市は49万人、大宮市は46万人、与野市は10万人ほどだった。関西で例えると、西宮市と尼崎市と芦屋市が合併したというような規模だと思う。合併後、平成15年に全国で13番目の政令指定都市となった。その後隣接する岩槻市を編入し、人口123万人となり、全国で12番目に大きい市となった。大宮市と浦和市の合併の話は以前から何度も出ていたが、8度目にしてやっとできた。その背景には、さいたま新都心のことがある。旧与野市に、国の機関が移転することになり、さいたま新都心が形成されることになった。これを一つの契機として、4つの市が合併をした。
さいたま市は平坦な地で、山も海もない地域である。大宮駅の一日あたりの乗降客は62万人で、全国13番目で、京都駅よりも多い。また、さいたま市から市外へ通勤する人が47%いる。他の政令市とは違い、産業というよりは、生活を中心とした大都市である。簡単に言うと、ベッドタウンという言い方ができる。ここが他の政令市とは違う点である。
今回、東日本大震災があった。さいたま市のまわりでも、災害でなくなった方が多数出たが、埼玉県、さいたま市では死者数がゼロだった。内陸型の都市ということもあり、大変自然災害に強い都市だと言える。
大宮駅には上越新幹線、信越新幹線、山形・秋田・青森方面への東北新幹線が走っており、東日本の玄関口となっている。交通の要所であるという地域特性を活かして、これからさらに大きく発展していきたいと思う。
さいたま市の地域資源として、鉄道がある。大宮は昔から鉄道のまちとして繁栄してきて、平成19年に鉄道博物館ができた。すでに400万人の集客を誇っている。
さいたま市には浦和レッズと大宮アルディージャというJ1のチームが2つある。浦和レッズはJリーグの中でも最も大きなチームであ、熱狂的なサポーターが多いことも有名である。
大宮の中に盆栽町という地区があり、昨年3月に世界で初めて公立の盆栽美術館ができた。関東大震災の後に、盆栽職人が大宮のほうへ移住してきて、そこに盆栽村ができた。盆栽美術館、世界で、日本で一番高い盆栽が展示されている。
岩槻地区は、節句の人形の生産額が日本で一番多い地区となっている。中央区には首都圏で唯一残されてきた自然環境として、見沼田んぼがある。浦和ではうなぎの消費地として有名で、蒲焼の発祥の地となっている。
チーズの支出金額は全国1位、パスタとドレッシングは全国2位となっていて、市民はどちらかと言うと、イタリア向きの市民と言えるかもしれない。
さいたま市は合併をした市で、地域の個性はあるものの、一体感がないのが一つの課題でもある。
また、さいたま市は、経済的には他の政令市と比べると少し弱いと言える。一方で、光学系(光学機器・レンズ)の出荷額では全国第1位で、医薬品も政令市の中では大阪市に次いで第2位となっている。この二つに関しては、大変集積した都市となっている。
今後、医療分野を主要産業としていくことを目標としている。メディカルリサーチパークで医療現場と連携した研究を進めている。小さな有力企業がたくさんある都市で、さいたま市がテクニカルブランド認証企業として位置づけ、ものづくりに力を入れている。
さいたま市が抱える課題に大きく二つあり、人口の高齢化という課題と、公共施設の高齢化という課題である。
一つ目の人口の高齢化は、さいたま市だけではなく、日本全体の問題だが、これがなぜさ いたま市にとって問題かと言うと、現時点では政令市の中では川崎市に次いで平均年齢が二番目に若い市だといわれているが、今後、急速に高齢化が進んでいくためである。
さいたま市には団塊の世代の方々がたくさん住んでおり、その方々の高齢化が今後一気に進む。5年前は生産年齢人口4.5人で高齢者1人を支えていたが、今後は3人で1人を支えることになっていく。さいたま市が誕生した10年前は、高齢化率は13.8%だったが、10年経った今では18.8%となっている。さらに10年経つと、26%になると見込まれている。
二つ目の公共施設の高齢化は、合併をした4つの市はそれぞれ、昭和40年代に、公民館などの公共施設を多く造り、これらがそろそろ法定耐用年数に近づいてきているという課題である。試算をすると、今後20年間で、1兆5,000億円ほどの投資が必要となり、平均して、1年間で約750億円のお金が必要となる。現状でも280億円前後のお金を使っているため、約500億円の不足が出ることになる。
財政面の課題として、平成23年度から27年度の中期財政見通しでは、5年間で1,069億円の財源不足が生じることが見込まれている。毎年700億円くらいの赤字になり、一般会計予算4,409億円を一律に15%カットしても、まだ黒字にならないという状況になっている。人件費や法定事務もあるため、全部を15%カットすることはできないため、ほぼ不可能な数字となっている。さいたま市はこれまで、政令市の中では1位か2位に位置するほど、健全財政を維持してきた都市である。市民一人あたりの市債残高は日本で一番少なく、交付税も不交付団体となっていたが、昨年度から交付団体となっている。こういった状況の中で、新たな行財政改革を進めながら、新たなさいたま市づくりを進めていく。
昨年、「行財政改革推進プラン2010」という計画をつくった。これは、3つの視点からつくったもので、「見える改革」、「生む改革」「人の改革」がある。
「見える改革」では情報公開度をナンバーワンにすることを目指している。予算を作るには、各担当部局で概算要求をし、財政局査定が行われ、その後、市長査定が行われる。この予算編成過程をすべて透明化しようということで、それぞれの金額とすべての積算根拠をホームページ上で公開している。これまではあまり予算編成過程は公開されてこなかったが、どうしてその予算がついたのか、つかなかったのかを市民にとって分かりやすくするため、公開している。その背景には、旧大宮と旧浦和という2つの大都市が合併したため、地域間で市民意識の微妙な違いがあることもある。この取り組みが、全国の市民オンブズマンの大会で、政令市中第3位となった。今後は全国第1位を目指したい。
また、さいたま市の意思決定は都市経営戦略会議で行われ、その中身も公開している。どのようなことが議論され、決まったのかを知ってもらおうとしている。地元の自治会や市民からのさまざまな要望についても、あまりしっかり答えを返してこなかったという過去があるため、いつ実現できるのかということを公開している。
「生む改革」では、平成22年度から平成24年度までの3年間で、600億円の財源創出をすることを目標としている。その内訳は、192億円の歳入確保と408億円の歳出削減である。
「人の改革」では、職員の意識改革に取り組む。組織文化の創造をしていく。行政サービスを提供するのは職員一人ひとりで、職員が変わらなければ、本当の行財政改革はできない。やる気のある職員がしっかりと活躍できる場をつくっていこうということで、事務事業改善率を100%にすることを目標としている。また、職員が働きがいを持って働いていると答える割合を80%にすることを目標としている。
「見える改革」では、公募の提案型公共サービス公民連携制度を導入する。これはさいたま市が行っているさまざまな行政サービスを、市民団体、企業など民間団体のアイデアを借りながら、公民協働の提案を募集するというものである。
簡単に言うと、さいたま市がやっている行政サービスを、法律で明確に市がやるべきと規定されているもの以外は、市民・事業者のみなさんから私たちがやったほうが安く良いサービスが提供できるというものを提案してもらって、それを実行していこうというもので、今それを市民・事業者のみなさんに呼びかけているところである。
これをやるまでは、駅前の自転車駐輪場の整備では、行政が土地を買って、駐輪場を整備してということで、たくさんのお金をかけていたが、昨年は市の持っている土地を貸して、施設を造るのも運営もすべて民間業者にやってもらい、さいたま市としては一切お金をかけないでやってきた。それにより、3つくらいの駐輪場を造ることができた。
「生む改革」では、公共施設をどうしていくかが最大の課題となる。さいたま市だけの問題ではなく、全 国のほとんどの自治体が抱えている問題だと思うが、政令市の中ではさいたま市が最も進んでいると思う。さいたま市には今1,670の公共施設があるが、そのうち学校施設が55%、行政施設が12%、市民文化・社会教育施設が9%で、今後大規模改修や建て替えが必要となってくる。それぞれの施設の稼働率、コストといった数値をすべて市民に公表し、今後、それぞれの区で、地域の特性に合わせて、どの施設をやめるのか、どの施設をくっつけて安くするのかということを市民と一緒に考えるということで、公共施設マネジメント計画を作っていっている。
公共施設をハードすべてそろえるのはなかなか難しい時代で、できるだけ今ある施設を長く使っていくという長寿命化を図りながら、民間の知恵を使ってできるだけお金をつかわずにやっていく、場合によっては統廃合をしながら進めていこうというものである。
「人の改革」では、「一職員一改善提案制度」を導入している。私が当選する前の平成20年から同じような制度は一応あったが、年間の提案件数は398件だったが、私が就任してからは力を入れて取り組み、当選をしたその年には1,338件、昨年は5,000件を超えた。先日、庁内での提案募集をし、一次・二次審査を経た改善提案を行ってもらった。ある区役所では、民間では当然となっている託児スペースが役所には常設的なものはなかったため、そのようなスペースを区役所につくろうということで、いろいろ知恵をしぼった。
話だけ聞くと、大したことないと思うかもしれないが、重要なのは、さいたま市役所の職員がさいたま市民のことを考えている。少しでも役立とうと思って取り組んでいるということを市民に知ってもらうことが大事だと思っている。
ちょうどさいたま市は誕生して今年で10年を迎えた。4つの市が合併したが、さまざまな違いがあり、なかなか一つになり切れなかった10年だと思う。10年を記念して考案したキャッチフレーズが、「これまでの10年、これからの100年」である。
これからの100年に向けたビジョンとして掲げているのは、「子どもが輝く、絆で結ばれたまち」である。子どもは未来への象徴で、子どもを軸として、家族、地域の絆を深め、市民や事業者のみなさんが互いに絆を結びながら進めていこうというものである。
私は、これまでの二年間、三つの基本姿勢・基本方針の下でやってきた。一つは、責任と共感・共汗、一つは徹底した現場主義、一つは公平・公正・開かれた市政である。
一つ目の責任と共感・共汗というのは、市民・事業者のみなさん、そして行政がそれぞれの役割と責任をしっかりと役割を果たし、共に汗を流し感じ合いながら、地域の課題、さいたま市全体の課題に取り組んでいこうというものである。
二つ目の徹底した現場主義は、とにかく現場へ行って現場で課題を見つけて来ようというものである。私は日本一行動する政令市の市長でありたいと思い、240回の現場訪問を行い、50回の市民とのタウンミーティングを行い、92校の学校訪問を行った。また、職員の訪問も行い、お互いの考えを話し合い、私の考えるさいたま市の姿を話している。私は、市民の一人ひとりが幸せに暮らすさいたま市にしたいと言っている。さいたま市役所は市民の幸せのコーディネーターとしての役割があり、それぞれの職員が何を感じて仕事しているのかを聞きながら、共に議論している。
基本方針の一つ目は、徹底した行財政改革と生産性の高い都市経営で、徹底した行財政改革と職員の都市経営力が、地方自治体に求められていることだと思う。
二つ目は、総合力と個性を大切にした全員参加の1つのさいたま市づくりで、さいたま市にはすばらしい市民の方々が住んでおり、すばらしい企業があり、大学もたくさんある。それぞれが力を発揮して全員参加でさいたま市をつくっていきたい。123万人の大都市としての総合力を生すとともに、それぞれの地域としての個性を大切にしていきたい。
三つ目は、さいたま市民しあわせ倍増計画である。さいたま市を導くキーワードがあると思う。
一つは教育である。さいたま市は、全国学力テストの結果を見ても、全国的にかなりレベルが高いほうに位置する。学力の高さだけではなく、体力、徳力、コミュニケーション力といったものもしっかりとつけられる都市にしていこうということで今取り組んでいる。子どもたち一人ひとりが夢を持って、その夢を子ども自らが切り拓ける能力を身に付けられる公教育の実現を目指して取り組んでいる。
その中で重視しているのが、「土曜チャレンジスクール」というもので、学校と地域と家庭が連携して子どもたちを教育していこうというものである。さいたま市でも地域の格差がかなりあり、学力レベルの低い子どもたちの底上げをしていくことが、さいたま市全体の教育レベルを底上げすることになると思う。そのために、土曜チャレンジスクールを行っている。さいたま市全体では、小中、市立高あわせて164校あるが、今年度はその約半分にあたる80校に土曜チャレンジスクール事業を導入しようということで、取り組んでいる。来年度には全校で導入できるように行っている。
これと連動して、スクールサポートネットワークという学校応援団のようなものを作っている。また、今防犯ボランティアを作っていて、104校の小学校に、それぞれ30人から100人を超えるまで、ボランティアの方に登録をしてもらっている。延べ、10,000人以上のボランティアが登録をして、子どもたちの安全を守っている。これは、さいたま市にとって大変重要な地域の文化だと思っている。さらに大きく広げていきたいと願っている。
さいたま市では、子どもの体力が全国平均よりも下回っており、少しでも向上させようとして、「逆上がり・縄跳びプロジェクト」というものも行っている。さいたま市では、スポーツをやっている子どもの体力はものすごく高いが、やっていない子どもの体力はものすごく低いというように、子どもたちの体力が二極化しており、縄跳びや逆上がりをすべての子どもができるようにして、達成感を味わってもらおうとしている。
それ以外にも、プロスポーツ選手が先生となって学校へ行くミラクル先生ふれあい推進事業を、さいたま市内の全小中高校で行っている。また、すべての学校で子どもたちが農作業体験をする「学校教育ファーム」も行っている。
毎月23日は、ノーテレビ・ノーゲームデーとして、その日はテレビを見たりゲームをしたりしない習慣を付けようとしている。
子育て支援では、保育所の待機児童が多数いるため、保育所の増設も進めているが、それだけでは親と子の絆がつなぎきれないため、親と子の絆を深める子育て支援をしていこうと思っている。例えば、一日保育士体験を実施して、親としての心を育ててもらおうという事業もしている。子育てにお父さん方も積極的に参加してもらおうということで、さいたまパパスクールという取り組も行っている。親と子、地域の絆を深めながら、子どもたちの育成を図ろうとしているのがさいたま市の取り組みの特徴だと思う。
スポーツと健康に関しては、さいたま市は全国でも有数のスポーツが盛んな地域だと思う。昨年、政令市では唯一、「さいたま市スポーツ振興まちづくり条例」というものを設定した。これは、ただスポーツを振興させようというものではなく、スポーツを通じてまちづくりを行っていこうというものである。
国でもスポーツ基本法が成立したが、さいたま市では健康という面だけではなく、幅広く、文化、都市計画、環境、経済といった総合的な分野でスポーツを活用し、スポーツ都市さいたまをつくっていこうと考えている。そのため、これまでさいたま市の中でスポーツ担当のセクションは教育委員会の中にあったが、これを市長部局に持ってきている。そして、市民スポーツ・文化局というものをつくった。そして、学校体育以外のスポーツはここで一元的に扱うようにしている。その中で、いくつか取り組みを行っている。
一つは、「スポーツ健康広場倍増計画」である。さいたま市が持っている遊休地がたくさんあり、これらをスポーツに活用してもらうため、多目的広場にして、市民のみなさんにスポーツをしてもらおうとしている。
さいたま市ではボール遊びを禁止している公園が多数あるが、そのことによって、子供たちが自由に公園の中でサッカーをしたり、お父さんたちとキャッチボールをしたりということもできない状況となっていたため、多目的広場でスポーツをしっかり楽しんでもらおうとしている。
今年の10月にはスポーツコミッションというものをつくる予定としている。これは、本格的なものとしては、全国で初めてのものになる。スポーツコミッションとは、簡単に言うと、スポーツイベントの誘致をしたり、スポーツイベント受け入れのためのコーディネーターの役割を果たしたりするというものである。これをつくることで、スポーツビジネスや、新たなスポーツ観光の市場を生み出していき、さいたま市の地域経済をさらに活発にしていこうというものである。
さいたま市にはJリーグのチームが2つあり、埼玉西武ライオンズがさいたま市でも年間数試合行っており、プロバスケットボールチームもある。こういった数多くのプロスポーツチームがあるため、これらをさらに活用し、全国レベル・国際レベルのさまざまなイベントの誘致をしていきたいと考えている。
さいたま市には、大震災のときに避難場所ともなった、さいたまスーパーアリーナという大変大きなスポーツ施設がある。また、さいたまスタジアム2002というワールドカップのときに作った東洋一のサッカー専用球場がある。これらを大いに活用して、地域経済を活性化したいと思う。
去年、アメリカのインディアナ・ポリスに行ってきた。ここは、全米で初めてスポーツコミッションを立ち上げたところである。スポーツイベントを行う際の集客ノウハウや、スポンサー企業の集め方など、マーケティングのアドバイザーとして大きな大会に積極的に関与して、400を超える国際的なスポーツ大会を誘致している。経済効果は累積で約2,000億円と試算されている。日本のスポーツ産業市場は4兆円から5兆円と言われている。浦和レッズの年間の経済波及効果は、127億円、大宮アルディージャは50億円と言われている。こうしたスポーツビジネス、スポーツツーリズムを多いに活用していきたい。
健康で長生きのできるまちを作ることはさいたま市のもっとも重要な柱の一つとなっている。急激に高齢化が進む中で、できるかぎり健康で長生きしてもらおうというのがさいたま市の願いである。これからの高齢者施策にさいたま市として取り組んでいくことは、大きく二つだと思っている。一つは、健康で長生きをしていただくための施策の充実を図っていくこと。もう一つは、いざというときの福祉・医療を充実させる施策である。この二つを、行政の仕事として取り組んでいる。
一つ目の健康で長生きをしていただくための施策として、「シルバー元気応援ショップ」という取り組みがある。市内ですでに900店を超える店舗から協力をいただき、65歳以上に配っているシルバーカードを持っていくと、割引をしたりおまけをしたりしてもらっている。買い物だけではなく、美容院やスポーツクラブでも使える。友好都市にも協力をしてもらっているため、旅行先で宿泊するときにも使える。積極的な、アクティブな高齢者のライフスタイルを応援していきたい。
また、健康で長生きをしていただくための大きなポイントの一つは、働くということである。今の男性の平均寿命の日本一は長野県だと思うが、長野県の65歳以上の就業率は全国でも圧倒的な一位となっている。働くということが健康で長生きするための大きなポイントである。さいたま市ではシルバー人材センターなどを通して、高齢者の方に地域で活躍してもらったり、働いてもらったりするよう取り組んでいる。現役で会社では働かなくなっても、地域で活動をしてもらい、働いてもらうというスタンスで充実を図っている。
老老介護の方のために、地域包括ケアセンターを年中無休24時間開所化している。今年度から、スマートウェルネスシティ構想にも参加し、これは、つくば大学の先生が中心となって行っているものだが、健康の康の字を「幸」として、地域や人とのつながりを持ちながら、健康で元気に暮らせるまちづくりを行っていこうというものである。狭義の健康づくりを行うのではなく、食事に気を付け、体力、活動量を増やし、健康に関する知識をつけ、住環境の充実を図った総合的なまちづくりを進めていく上で、健康を実現していこうというのがスマートウェルネスシティの考え方である。その中で、健康寿命を伸ばし、スマートウェルネスシティの実現を進めていこうとしている。
環境では、さいたま市は昨年度から電気自動車の普及促進に取り組んでいる。電気自動車の普及促進については、少なくとも全国でも少なくとも三本の指に入る地域だと思う。充電施設の整備、電気自動車を買ってもらうための補助金をつけるなどインセンティブを積極的に働かせることを進めている。まだ電気自動車に乗ったことのない人も多くいるため、地域に密着した形で啓発活動を行っている。
充電施設では日本で一番充実している都市がさいたま市である。すでに、日産自動車、本田技研工業、スバル、三菱自動車とは包括協定を結んで進めている。今、次世代自動車特区という特区の申請を行っている。単なる電気自動車の普及促進だけではなく、電気を使った移動手段の充実を図っていこうということしている。
また、電気自動車は動く蓄電池と言えるため、エネルギー問題が重視されている中で、新しいエネルギー政策の一つとして位置付けて、取り組んでいこうとしている。先般、ホンダとスマートホームの実証実験を行うことで協定を結んだ。
太陽光発電だけではなく、家庭用ガスエンジンをつけたりして、複合的なエネルギーを駆使して、災害に強い新しいエネルギーを取り入れた実証実験をしていこうと取り組んでいる。最終的に、スマートホームコミュニティを作っていこうということで、取り組んでいる。これについても、総合特区提案を行っている。
私自身は大学を卒業して松下政経塾へ入り、県会議員を経てさいたま市長となっている。私の原点は、高校3年生にベトナム戦争へ行っていたカメラマンと出会ったことだった。戦争の話を聞いて大変衝撃を受けて、戦争や飢えをなくしたいとずっと思ってきた。それが、高校3年生から大学生にかけての時期だった。タイの難民キャンプにも行き、いろいろな場所で戦争や飢えを目の当たりにしてきた。その中で、少しでも戦争と飢えをなくすために役立ちたいと思って松下政経塾に入った。
当時は松下幸之助氏が存命中で、世界のことも大事だが、まずは足元のことから考えようという考えだった。私はそれまで、日本も大変だと言っても、戦争が起こったりせず、食べ物も食べられず死んでいく人がいないだけましではないかと思っていたが、日本各地をまわって、今まで私自身が思っていた日本地図が本当に小さな日本地図だったと気づいた。戦争や飢えをなくすには、身近なところから変えないとならない。国が変わらないとならない。そのためには、地方自治体が変わらなければならない。私たち自身が、家族が変わらなければ、世界は変わらない。
今でも、私は私の究極の目的は何かと聞かれれば、戦争と飢えをなくすことだと答える。そのために、私はさいたま市の中で理想のまちをつくりたいと思う。住んでいる人が幸せを実感し、楽しく、一人ひとりがきらきら輝いているようなさいたま市をつくっていきたいと思う。それが、きっと将来の平和、戦争や飢えがなくなることにつながると信じている。
これからの基礎自治体は、もはや行政だけではしっかりとした運営ができない。お金がなく、厳しい財政状況の中で都市経営を行っていかないとならない。行政ができることはきわめて限られている。その中で、市民、事業者、行政がそれぞれの役割を果たしていくことが必要となる。
今回の大震災でも、私たちはそのことを改めて痛感したと思う。今まで、コミュニティが崩壊し、さいたま市でも都市化が進んで核家族化が進み、どんどん家族の絆や地域の絆が切れてきた。そのために、行政がやらなくてはならないことも増えてきた。これからの行政、まちづくりを建て直すためには、絆、コミュニティを再生し、市民と事業者と行政がしっかりとタッグを組んで、一緒に汗をかいてまちづくりを行っていくことなしには新しい時代は迎えられないと思っている。
みなさんの中にも、将来地方自治体の職員になろう、国の官僚になろうといういろいろな方々がいると思う。是非、みなさんにもそういった意識をしっかりと持って、若い力と新しい発想で、都市経営に息吹を吹き込み、活力を与えてもらえればと思う。これからの大変な時代を乗り切っていくことのできる力は、若い人の力しかない。
問 大宮駅は新幹線がさまざまな方向に走っているが、今後北陸新幹線の延伸や、北海道新幹線の延伸などで、これまでとは違った人の移動が予想されるが、それに対する対応は何か考えているか。
答 さいたま市は新潟市と大変仲良くしており、さいたま市は東京と新潟の結節点にある場所だと思っているため、新潟市と連携をとり、いくつかの拠点をつくり、物流を進めていこうとしている。
東北地方との関係では、ほとんどの新幹線が大宮に止まり、東京・大宮間が非常に過密なダイヤとなっているため、今後は大宮が始発となる新幹線もできるのではないかと思う。東北地方の玄関口としての役割を果たそうということで、さまざまな経済交流を行っている。東北地方の企業にも積極的に声をかけて、進出をしてきていただいたり、お祭りという形で提携して来ていただいたりしている。東北の企業が首都圏に進出するときにはまずさいたま市に会社をつくっていただけるようにしたいと思う。
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