超分子創製化学研究室
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第15回ホスト-ゲスト・超分子化学シンポジウム(2017年6月3日~4日)を
立命館グローバル・イノベーション研究機構(R-GIRO)プロジェクト
科研費・新学術領域「高次複合光応答」計画研究が2014年6月からスタートしました。 キーワード 超分子(supramolecule)、ナノ材料、ソフトマテリアル(ゲル・液晶など)、ポリマー、 研究概要 「新規π電子系の合成を基軸とした新概念・新機能の創出」 生命活動は、強固な共有結合や弱い分子間相互作用を巧みに利用し、分子が集合体や高次構造を構築することによって実現されています。当研究室では、精密に設計された生体分子の構造や機能を「参考」にしながら、有機合成を駆使して既存にない分子や集合体を構築し、天然系を凌駕する物性・機能性の発現に挑戦しています。「未知の骨格を持つ分子は既存の分子にはない特徴を示す(はず)」という考えのもと、π電子系(π共役系)を基盤とした新たな機能性色素分子を合成し、「個々の分子にはないポテンシャルを有する(つまり1+1>2)」超分子集合体やナノスケール組織構造の形成・制御を行い、新機能・新概念の創出、さらに新しい化学の創成を目指して研究を行っています。 具体的には、●分子への「プログラミング(=骨格構造の設計、相互作用部位の導入)」による超分子集合体やナノ組織構造の構築(→機能性マテリアルへの展開)、●特定の金属イオンやアニオン(陰イオン)に対する親和性の評価・制御(→薬剤・センサーへの展開)、●分子・集合体の電子・光物性(どのような光を吸収し発光するか、どれだけ電気を流しやすいか、など)の評価・制御(→デバイスへの展開)に関して、各種分光法や表面測定を駆使して検証しています。 以下の項目を基盤とし、「デザインされたπ電子系イオンを基盤とした、新たな次元制御型集合体の創製」を研究指針のひとつとして展開しています。 [0] 機能性生体関連分子の創製 [1] 金属イオン架橋型π電子系の構築 [2] アニオン応答性π電子系の合成 [3] 次元制御型イオンペア集合体の創製 [4] 多様なイオン性集合体への展開 これまでの研究を9報の総説(最近の論文として、Chem. Commun. 2013, 49, 4085; Chem. Commun. 2013, 49, 4100; Pure Appl. Chem. 2013, 85, 1967; Bull. Chem. Soc. Jpn. 2013, 86, 1359; 有機合成化学協会誌 2016, 74 (3), 243)、書籍章分担(10編:代表例としてSupramolecular Soft Matter: Applications in Materials and Organic Electronics; Nakanishi, T. Ed.; Wiley, New Jersey, 2011, Ch. 6; Supramolecular Chemistry: From Molecules to Nanomaterials; Gale, P. A., Steed, J. W. Eds.; Wiley, New Jersey, 2012, Vol. 5, 2581-2610; Intelligent Stimuli Responsive Materials: From Well-defined Nanostructures to Applications; Li, Q. Ed.; Wiley, New Jersey, 2013, Ch. 4; Nanoscience with Liquid Crystals: From Self-Organized
Nanostructures to Applications; Li, Q. Ed.; Springer, 2014, Ch. 9; Synergy in Supramolecular Chemistry; Nabeshima, T. Ed.; CRC
Press, 2014, Ch. 4; 自己組織化マテリアルのフロンティア(エキゾチック自己組織化材料研究グループ 編)2015, フロンティア出版, Ch. 3-2)、各種解説記事(「高分子(Hot Topics)」「ファインケミカル」「未来材料(Review)」「化学(2011年の化学:最新のトピックス)」「液晶(解説)」「化学と工業(支部発 話題欄)」「光化学(レビュー)」「高分子(トピックス)」ほか)などにまとめています。 研究の進め方 当研究室では原則的に一人一人に研究テーマが与えられ、教員とのディスカッションを通して目標を設定し、研究を行っています。また、研究に対する意識向上や、基礎知識を身につけることを目的とし、下記のセミナーをほぼ毎週行います。 (a) 研究会:自分の実験結果を報告(各々1ヶ月に1回のペース) (b) 抄録会:最近のトピック論文を読んで簡単に解説 (c) 雑誌会:自分の興味を持った研究に関連する論文を読んで解説(原則、半期に1回) [0] 機能性生体関連分子の創製 特定の物理的刺激(光など)や化学種に応答・反応する有機分子を設計・合成し、生理活性の検証・評価を試みています。たとえば分子に光誘起を照射して活性酸素の発生を実現することで(報告例としてOrg. Biomol. Chem. 2010, 8, 4308)、光線力学療法への応用展開を検討しています。 [1] 金属イオン架橋型π電子系の構築 金属イオンを「接着剤」として利用できる有機分子(π電子系)を設計・合成し、金属イオン架橋によるポリマーや、ケージ・ばね・プリズム状構造、さらに発光性ナノ粒子の創製を新たに見出しています。 1-1. 金属配位ポリマーによる発光性コロイド粒子の形成 金属配位能を有するπ電子系(ジピリン)を2個連結した分子(2量体)を合成し、金属イオン(ZnIIなど)との錯化による1次元超分子錯体(配位ポリマー)の形成を見出しました。配位ポリマーは溶液中で規則的粒径を有する発光性球状コロイド粒子を構築し、錯化条件(溶媒)に依存した多様なモルフォロジー発現を明らかにしました(J. Am. Chem. Soc. 2006, 125, 10024)。また、直接連結型2量体を合成し、金属イオン架橋による組織構造の形成や、縮環型誘導体への自発的な変換を見出しました(JPP 2013, 17, 86)。 1-2. 金属架橋マクロサイクルから2重らせん構造への展開 「鋳型分子」の共存によって、単分散型の金属架橋マクロサイクル(2核2量体錯体)の選択的形成に成功し、ZnII錯体では立体異性体(ジアステレオマー)間の相互変換を観測しました(Chem. Eur. J. 2007, 13, 7900)。さらにNiII架橋マクロサイクル(2核2量体錯体)から環状分子2分子を4個のZnIIで架橋した錯体を形成し、外部環境(温度など)に依存した2重らせん構造(ZnII架橋ビジピリン錯体)の構造変化と、それにともなう電子・光物性の制御を実現しました(Chem. Eur. J. 2010, 16, 11653)。また、鋭角スペーサーで錯化部位を連結した環状2量体・3量体錯体を形成し、π電子系の規則配列に起因した、固体状態における電荷輸送特性の発現を明らかにしました(Chem. Eur. J. 2013, 19, 11676)。 1-3. 金属架橋2重らせんモードの検証 ZnII架橋2重らせんにストラップ(アルケニル鎖)を導入し、アルケニル鎖長によりπ電子系ユニット(ジピリン)間2面角が制御され、それに起因した電子物性を観測しました。理論計算を駆使し、2面角が鋭角および鈍角の状態において、2重らせんは局所安定構造を有することを見出しました(Chem. Sci. 2013, 4, 1204)。 1-4. ホウ素-ジオール架橋によるπ空間の構築 直線状(側方方向)に複数のπ電子系ユニット(ジピリン)を連結した分子を合成し、ホウ素-ジオールユニットでの架橋による、長方形型やプリズム型構造を有する2重鎖や3重鎖の構築に成功しました(Dalton Trans. 2013, 42, 15885)。
[2] アニオン応答性π電子系の合成 天然のイオンチャネル構造を模倣した機能性色素分子(レセプター)を設計・合成し、アニオンやアミノ酸に対する高い認識能を保有させ、蛍光・円偏光センサー(光る ←→ 光らない)として応用展開しています。 2-1. 動的構造変化を示すアニオン応答性π電子系の合成 2個のピロール環をホウ素架橋1,3-プロパンジオン鎖で架橋したπ電子系を新たに合成し、アニオンとの会合能を有することを明らかにしました(Chem. Eur. J. 2005, 11, 5661; J. Org. Chem. 2006, 71, 2389)。ピロール環周辺修飾にも成功し、フルオロ基(Inorg. Chem. 2006, 45, 8205)、アルキル基(J. Org. Chem. 2007, 72, 2612; Synth. Met. 2009, 159, 792)、直鎖アルキル基(Org. Biomol. Chem. 2008, 6, 433)、アルコキシ基(Chem. Commun. 2012, 48, 2301)、芳香環(J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 13661; Org. Biomol. Chem. 2008, 6, 3091;Org. Lett. 2008, 10, 3179; J. Org. Chem. 2011, 76, 5177)、縮環芳香環(Chem. Eur. J. 2010, 16, 10994)の導入によって、アニオン会合(認識)能が制御可能であることを見出しました。また、ピロール環修飾だけでなく、ホウ素周辺をジオールユニットや芳香環で修飾する手法を開発し、ホウ素置換基に起因する電子・光物性や、特定のジアニオンに対して高い会合選択性を有する多量体の構築を実現しました(Chem. Commun. 2008, 4285; Org. Biomol. Chem. 2010, 8, 4308)。 種々の誘導体合成により、アニオンに対するセンシングだけでなく、集合体形成などへの多様な展開が可能となっています。 2-2. 共有結合多量体(オリゴマー):アニオン駆動型π電子系の創製 レセプターユニットを適切に共有結合で連結したオリゴマー分子を合成し、多様なアニオン駆動型らせん構造を構築することを見出しました。分子構造を制御した2量体や4量体はアニオンに対して高い認識能を発現し、さらに新たに合成した環状分子においては、協同的な静電的水素結合によってCl- イオンに対する異常に高い会合能(CH2Cl2中において > 1010 M-1)を保持することを明らかにしました(Chem. Eur. J. 2011, 17, 1485)。また、エチニル基を基軸とした共有結合や金属配位結合2量体を合成し、アニオン架橋[2+2]型らせん状集合体を溶液中で形成することを見出しました(Chem. Commun. 2011, 47, 9342)。さらに、放射状にレセプターユニットを配置した3量体や6量体を合成し、多様なアニオン会合モードの発現や、固液界面における2Dパターニングの形成を実現しました(Chem. Commun. 2013, 49, 5310)。 2-3. キラル光学特性の発現 ホウ素周辺へのキラルユニットの導入によって、化学刺激(アニオン)による円偏光発光のON/OFFスィッチングに世界ではじめて成功しました(J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 9266; Highlighted in NPG Asia Materials)。さらに、レセプター2量体によって形成されるアニオン駆動らせん構造の巻き方向をキラルなカチオンとのイオンペア形成によって制御し、ジアステレオ過剰率と相関を示す円偏光発光挙動を観測しました(Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 7967)。 [3] 次元制御型イオンペア集合体の創製 レセプター構造のデザインによって集積化を可能にし、刺激応答性を有するソフトマテリアル(超分子ゲル・液晶・ベシクルなど)を形成しています。さらに、電荷種(カチオン・アニオン)の規則配列によって次元制御されたイオンペア集合体を構築し、既存システムでは実現不可能な有機デバイスへと展開するコンセプトは、世界的にも高く評価されています。 3-1. アニオン応答性π電子系の集合化 われわれが合成したアニオン応答性π電子系分子は、πユニット間での積層により集合体の形成が期待できます。実際に、結晶(すなわち3次元組織構造)において電子・光物性(電荷輸送能など)の制御を実現し、結晶多形(同じ分子から異なる結晶が形成する)、レセプター周辺置換基、さらにアニオン会合(対カチオンが結晶中で会合体近辺に配置される効果)がその重要な要因であることを解明しました(Chem. Eur. J. 2010, 16, 10994)。また、次元制御性の付与を目的として周辺に長鎖アルキル基を導入することで、2分子を基本ユニットとしてカラム構造を形成し、サーモトロピック液晶を発現することを明らかにしました(Chem. Commun. 2010, 46, 4559)。さらに、炭化水素系溶媒から超分子ゲルを形成し、アニオン(立体型カチオン塩)の添加にともなう溶液への転移(アニオン応答性)を発現しました。このとき、レセプター-アニオン会合体が立体型カチオンと溶解性の高いイオンペアを形成することが重要な要因であることを明らかにしました(J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 13661; 関連するConcept論文 Chem. Eur. J. 2008, 14, 11274)。また、ゲル化挙動はピロールβ位への置換基修飾(J. Org. Chem. 2011, 76, 5177)や水素結合部位(アミド基)の導入(Chem. Commun. 2011, 47, 7620)によっても制御できることも見出しました。 種々の周辺修飾により多様な集合体形成の実現が可能となっています。親水性置換基を導入した両親媒性アニオンレセプターが、水溶液中でπユニットが平行に積層した集合体を形成し、cryo-TEMによってレセプターからなる2分子膜を基盤としたベシクルなどの集合体を形成することを明らかにしました(Chem. Eur. J. 2009, 15, 3706; Phys. Chem. Chem. Phys. 2011, 13, 3843)。セミフルオロ置換体は液晶性を示し、フルオロアルキル部位の占める割合に依存した高効率の電荷輸送特性を見出しました(Chem. Mater. 2013, 25, 2656)。また、適切にキラルアルキルユニットを導入したレセプターはキラル光学特性を発現し、アニオン会合および平面状カチオンとのイオンペア集合体形成によるスイッチングが可能であることを明らかにしました(Chem. Eur. J. 2013, 19, 16263)。さらに、芳香環縮環体による中間相の発現(Chem. Commun. 2012, 48, 2301; Chem. Asian J. 2013, 8, 2088)や、ホウ素周辺修飾による集合体形態の制御(Chem. Commun. 2013, 49, 2506)も実現しています。 3-2. レセプター-アニオン会合体を基盤としたイオンペア集合体への展開 π電子系イオンの規則配列(イオンペア集合体の形成)により、これまでに実現不可能な物性や機能性の発現が期待できます。イオンペアを構成するユニットとして、とくに合成が容易ではない平面状アニオンを、レセプター-アニオン会合体の形成によって導入する戦略を検討しました。 平面状のレセプター-アニオン会合体と効果的に積層構造を形成しうる平面状カチオンを共存させることによって、ファイバー状組織体からなる超分子ゲルを与えることに成功しました。この超分子ゲルは溶媒を除去することによってサーモトロピック液晶性を発現し、いずれの状態においても、SPring-8での放射光X線測定によって、レセプター-アニオン会合体とカチオンが交互積層したカラム状構造(電荷積層型集合体)を形成することを見出しました。液晶状態においては電場応答性の発現も明らかにしました。このように、平面状イオン(カチオン・アニオン)を規則配置する新しい手段を開発したことで、世界的にも高い評価を受けました(Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 10079; Selected as a Hot Paper and highlighted in Press Release; Org. Biomol. Chem. 2012, 10, 2603)。さらに、レセプターの周辺修飾、とくにピロールβ位への置換基導入によって電荷種分離配置型の寄与を有する液晶性の発現が観測され、イオンペアから構成されるマテリアルにおける両極性型電荷輸送特性(電子・正孔いずれも輸送する性質)も明らかにしました(Chem. Eur. J. 2012, 18, 7016)。 3-4. ビルディングブロックの精査によるイオンペア集合体の制御 レセプター周辺だけでなくカチオン種に注目し、種々の立体型カチオン(テトラアルキルアンモニウムカチオン)共存下における電荷積層型の寄与を有する中間相の発現を明らかにしました(Chem. Eur. J. 2012, 18, 3460)。また、対カチオンとして、ジカチオン性π電子系とハライドアニオンの会合体に注目し、アニオン性レセプター-アニオン会合体とカチオン性レセプター-アニオン会合体からなるイオンペア集合体の形成に成功しました(J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 14797)。 ソフトマテリアル形成能を示さないレセプターのアニオン会合体に対し、長鎖アルキル基を有する修飾カチオン(カチオンモジュール)を共存させることで、レセプター周辺置換基に依存した電荷積層型および電荷種分離配置型の寄与を有する集合体の形成を実現しました。このとき、電荷種分離配置型の寄与を有する集合体において、より効果的な電荷輸送特性の発現を見出しました(J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 1284)。対照的に、修飾アニオン(アニオンモジュール)とソフトマテリアル形成能を示さないレセプターの会合によって、電荷積層型集合化を基盤とした層(ラメラ)状構造を形成することを明らかにしました。この場合、多様なアニオン(およびカチオン)をイオンペア集合体の構成ユニットとして導入することが可能となり、修飾アニオンの置換基(アルキル鎖長など)に依存した電荷輸送特性も示されました(J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 8896)。 [4] 多様なイオン性集合体への展開 4-1. 平面状イオンペアからなる次元制御型集合体 2個のピロール環をピラゾールで架橋したπ電子系を合成し、プロトン化によって対アニオン(TFAアニオン)と平面状[2+2]型イオンペアを形成することを明らかにしました(Chem. Commun. 2007, 1136)。さらに周辺修飾によって次元制御性を付与し、固液界面での2Dパターンの形成や、超分子ゲルや中間相の発現を明らかにし、とくにCubic相を形成することを新たに見出しました(Chem. Eur. J. 2013, 19, 9224)。 4-2. 双性イオンを基盤とした動的共有結合性を有するポリマー・オリゴマー イオン間の究極の相互作用が共有結合であることに着目し、適切なカチオン部位(トリチル)およびアニオン部位(フェノキシド)を有する双性イオンをモノマーユニットとした、ポリマーおよびオリゴマーの創製を実現しました。ポリマーは沈澱として得られ、溶液中に存在するオリゴマーは環状3量体が主成分であることが分かりました。ポリマーとオリゴマーは相互変換せず、その生成比率はモノマーの初期濃度やイオン部位を連結するスペーサーの形状に依存することを明らかにしました(Chem. Eur. J. 2013, 19, 6956)。 上記の研究成果は論文発表済の内容に限定していますが、継続して、新たな分子の合成を基盤とした、既存の分子・集合体システムを凌駕した新機能・新概念の創成に挑戦しています。 論文掲載決定後にその内容を掲載します!
第50回 構造有機化学若手の会 夏の学校(2018年8月8日~10日)を
湯の山温泉で開催いたしました。
立命館大学 BKCキャンパスで開催いたしました。
「有機生命資源の有効利用による電子・光機能材料の創製」が
2017年4月からスタートしました。
バイオインスパイアード・ケミストリー、π電子系(色素分子)、刺激応答性、ホスト・ゲスト、
分子マシン、有機半導体、次世代デバイス