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植村充典(うえむら みつのり)
理工学研究科総合理工学専攻 博士課程後期課程3回生
有本・川村・伊坂研究室
植村充典
4月10日〜15日までイタリアのローマにてIEEE(米国電気電子学会)の主催する国際会議ICRA(IEEE International Conference on Robotics and Automation=ロボティクスとオートメーションに関する国際会議)が開かれ、植村充典さん(理工学研究科博士課程前期課程3回生)の論文が「IEEE Robotics and Automation Society Japan Chapter Young Award」に輝いた。
「IEEE Robotics and Automation Society Japan Chapter Young Award」とは、日本人の学生研究者のなかでも優秀な研究を行った個人へ、世界最大の学会であるIEEEのRobotics and Automation Societyの日本支部より授与される賞である。今回は、学部時代よりロボティクスの研究に取り組み続け、国際会議という檜舞台で活躍される植村さんにお話を伺った。
Q

国際的な会議での受賞、おめでとうございます。まず、学会へ提出された論文やご自身の研究分野について教えていただけますか?

植村

大きく言うと、私の研究対象は「ロボット」です。ロボットも自発的に動こうとするときには、人間と同じように体を動かす筋肉や腱が必要となります。私はその「筋肉や腱」となる部分に「バネ」を使うことでロボットの運動の効率化を高める研究を行っています。バネを使うことによって少ないエネルギーでロボットを制御することが可能になり、将来的には、ヒューマノイドロボット(人間型ロボット)などで柔軟で自由な動きを実現したり、さらなるエネルギーの効率化が期待できます。

今回提出した論文のタイトルは「A New Control Method Utilizing Stiffness Adjustment of Mechanical Elastic Elements for Serial Link Systems」(日本語訳: 多関節ロボットに対する剛性調節を利用した新しい制御方法)というものでした。賞はICRAへ論文を提出した日本の学生研究者15人のうち5人に与えられる「IEEE Robotics and Automation Society Japan Chapter Young Award」として選ばれるもので、そのうちの一人に私が選ばれました。実は今回、ICRAへの論文の提出は3度目でした。1回目は大学院のマスター時代の研究を引き継いだ内容、2回目は「バネを使ったパワーアシスト」の研究発表を行いました。今回の内容は、2回目の研究をより複雑にしたものです。IEEEは世界最大の電気電子学会で、ICRAは毎年開催されるロボットに関する世界最高峰の国際会議です。そこで表彰されたことは研究者として大変名誉なことでした。

Q

研究を進めていく課程や、研究の内容で大変だったことを教えてください。

植村

私がもっとも苦労したのは、新しい切り口から研究テーマを考えだすことでした。面白く、特徴的なテーマは既に研究し尽くされているので、自分なりの着眼点からテーマを練り込んでいくのにとても多くの時間がかかりました。そしていざ研究に入れば、理論を考え実際にロボットを使っての実験の繰り返しです。証明できると思っていた理論が証明できなかったり、ロボットがスムーズに動かなかったりと思うように研究が進まずに苦労したこともありました。こうした状況でも決してあきらめず、何とか研究を続けることができました。

私は学部時代から、ロボットについての研究を行っていました。理工学部のロボティクス学科に入学した時は、人が関節で発揮している力(関節トルク)を計測する研究をメインでやっており、大学院でのマスター時代にはパワーアシスト制御を安定させるための研究を行っていました。今と比べると研究テーマこそ違いますが、ロボットや物理が好きだという気持ちがあったので、現在もドクターまで進んで研究を続けているのだと思います。

Q

これからの目標を教えてください。

植村

まずは今回のバネを使ったロボットの制御に関する研究をもっと突き詰め、より数学的に解析していきたいと思います。そして、ひとつの理論としてまとめ、仕上げることのできるような論文を書ける研究者になりたいです。また、1年に国際学会が1〜2回、国内学会が2〜3回ほどあるので、その場で今以上の研究成果を発表できるように努力していきたいと思います。
私の日常の研究は、ロボットを使って理論の確認をしていくという地道な作業の繰り返しです。思うように研究が進まないことがあっても、あきらめない姿勢を貫きたいですね。将来的には、私の研究が人や社会の役に立つようなロボットに応用されて、実際に普及するようになればと思っています。

取材・文辻 健太郎(経済学部4回生)
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