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尾籐広志(びとう・ひろし)
経済学部2回生
能楽部部長
尾籐広志
5月14日(月)、衣笠キャンパス以学館前広場・特設舞台にて、能楽部主催による「第25回 立命薪能」が行われた。
薪能とは、数ある能の種類の1つであり、屋外にかがり火を焚き、その明かりを背景に演じる能である。
陽が落ちて辺りが薄暗くなると火入れ式が行われ、夜の以学館をバックに幻想的な能舞台があらわれた。
会場には大学生や周辺の地域市民の方々が多く集まり、日本の伝統文化を継ぐ能楽部の舞に魅入った。
今回は、この公演を終えた能楽部部長、尾籐広志さんにお話を伺った。
Q

立命薪能の公演お疲れ様でした。学生が主体となって行う公演は珍しいと聞きました。公演するにあたって、特に苦労されたことや、それを乗越えて公演した感想をお聞かせください。

尾藤

今回の公演には、大学生のみならず地域住民の方々が例年より多く見に来てくださり、能楽部一同大変嬉しく思っています。私達は、部員16名で活動しており、少ない人数ながらも無事講演を終えることができたのはOBの先輩方やプロの先生方、参加してくださった地域住民の方々のおかげです。

今回の公演には、「巻絹」という演目を選びました。この演目は「都の男が、勅命により巻絹を奉納すべく熊野権現に向う途中に、音無天神に参詣し和歌を歌うのですが、期日に遅れた罪で縛られてしまい、その男を天神の乗り移った巫女が和歌の素晴らしさを称えて、男を助け、神がかりの態で神楽を舞う」という物語です。この演目を演じるにあたり、役割別の自主練習や、立ち方と地謡の合わせ練、そしてプロの先生の指導と、去年の暮れから準備をしてきました。

立命薪能の特徴の1つは、公演開催までの準備すべてを部員だけで行うことですが、その中で一番大変だったのは能舞台の設営です。キャンパス内での設営であるため、限られたメンバーと時間でいかに良い舞台を作り上げるかが問われ、作り上げたときは、強い達成感を感じました。部員が一丸となり、1つの目標に向けてみなが努力しあった結果、部員同士の繋がりが強まりました。2年前までは「伝統芸能フェスティバル」の一貫でこの公演を行っていましたが、昨年からは単独開催ということになり施設面などで苦労することが多く、講演自体が存続の危機に陥ったこともあります。しかしこの困難を乗り越え、準備から講演まで無事に終わらせることができたことで、今後の能楽部の活動にも弾みがついたと感じています。

Q

RS Webの読者の方には「能楽」について詳しく知らない方もいらっしゃると思います。そもそも「能楽」とはどのようなものなのか教えてください。

尾藤

たしかに「能楽」と聞いてはっきりとしたイメージが浮かばない方もいると思います。能楽は14世紀・室町時代初期に成立し、わが国の伝統芸能である「能」と「狂言」、その両者を表すものです。能は、「幽玄」(ゆうげん)という言葉で表される優雅で柔和、典麗な美的情趣に彩られた象徴劇で、歴史や古典文学に取材して歌(うた)と舞(まい)を中心に構成され、主役である演者が能面をかけて演じる点に特色があります。事件ではなく人間の運命を描くことを主題とし、簡素な舞台上で凝縮された様式性の高い演技が展開されるものです。

能には、シテ方(能の主役を演じるほか、地謡、後見、作り物の製作、幕上げ、装束の着付けなど役割は多岐にわたる)・ワキ方(シテ登場の引き出し役)・囃子方(笛・小鼓・大鼓・太鼓の四つの楽器で演奏する)が必要で、その形式によって様々な種類に分かれます。

Q

次回公演に向けてなど、今後の目標を教えてください。

尾藤

私たち能楽部は地域の方々との交流を大切にしており、嬉しいことに立命薪能を見ていただいた観客の方から、さっそく地域で公演をしてもらいたいとの依頼を受けました。さらに、地域で行われるさまざまな催しでも公演をして欲しいという声も頂いています。私達の活動目標は「日々の練習で得たものを学内や地域の人々に還元しよう」ということですので、公演の依頼を頂くことは大変励みになります。このように地域の住民の方に大きな力添えを頂いて活動しているので、この善意ある行為を能の舞いに変えて多くの方に還元できたらと感じています。

今後の公演は、6月30日に前期の活動の集大成となる部内発表会「紫陽会」、7月7日に京都学生能楽連盟による「翡翠の会」、11月に1年間の集大成となる「立命能」を行う予定です。これから次の公演に向けて、練習を積み重ねていきたいと思います。

取材・文植田絵里奈(文学部3回生)
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