|
 |
 |
藤原さんは、「部長刑事」「暴れん坊将軍」など数々のヒット作品を生みだしたシナリオライター。
1本のシナリオを書きながら、何本かの構想を練っているのが当たり前という多忙な日々を送っていた。
そんな状況のなか、藤原さんは社会人学生として立命館大学に入学した。 何が「いま、学ぼう」と思い立たせたのだろう。学園生活や大学での学びは、藤原さんに何を与えたのだろう。
彼女の5年間を聞かせてもらいながら、大学での学び方のヒントを探ってみたい。
息詰まったとき、迷ったときは、
成長するチャンス!
立命館での学び方をテーマとしたシンポジウムで、社会人学生パネリストの藤原さんは「社会人学生は時間的にも制約が多い。勉強したい、でも仕事もしなくちゃいけない。だから寝る時間を削るしかない。1時間半ほどをブツギレに眠ってでも学びたい」といった。そんながむしゃらな姿勢が印象に残っていた。それほど忙しい毎日なのに、何が彼女を学ぼうとさせるのか。
「小説が書きたいんです。きちんと時代考証をしたうえで、史実に近いものを膨らませた小説。だから、一度は本気で勉強しておかないとダメだと思っていました」
でも、どうして多忙な時期に?
「迷っていた時期だったんです。いろいろなチャンスに恵まれてシナリオライターとして順調に来たけれど、このままシナリオを書き続けるか、小説へ移るか。もう年齢的にも決心しないといけない時期でした。ずっと勉強したいと思っていたこともあって、立命館に入学しよう、と。私ね、いろんな状況で息詰まったとき、自分のなかに新しいものを取り込むことでしか乗り越えられないんですよ。焦るけれど、そういうときは動き回らない。これは大きなチャンスなんだと思うんです」
自分の目標に向かって、あえて廻り道をしながらも確実に進んでいる藤原さん。彼女に学生たちが目標を見つけるためのヒントを尋ねると「目標なんて見えるわけないですよ。そこに到着して、足を着いて、ああ、これだって。こんな感じだったんだ、って実感するんでしょ。だから、今が大事。学べる環境にあるのならどんどん取り込むことです。やりたいじゃダメなの。やるしかない」ときっぱり。
留まって学んで自分を鍛える、それが次の力をつけることになる。それは分かっていても、不安や焦りで実行できないでいる。それを実践している藤原さんの言葉には、迫力も説得力も備わっていた。
新しい視点やものの見方を学ぶこと、
これは貴重な財産になる
小説家になるための基礎造りであった学園生活。ひとりの学生としてはどうだったのだろう。
「目的を持って入学しましたから、貪欲に教授にくらいついていきましたよ。新しい視点や違った見方を教わったときは、すごくうれしかった。それに自分の息子みたいな学生と一緒に学ぶんですよ。彼らの若さ、感性は刺激的でした。授業は仕事で休んでもコンパにはタクシーでかけつけましたもの。肩書きや役割など何の制約もない空間で、同じように学び合う仲間との出会いは、エネルギーになりましたね」と、振り返った。フルパワーで楽しんだ学園生活。この経験は今後小説家としての「厚み」になっていくのだろう。
立命館での充填期間をエネルギーに、
小説家としてスタート
藤原さんは在学中に本を出している。『シリーズ母 満平ヨネ物語』である。夫も夫の兄弟もろうあ者という家族に嫁いだヨネさんは、自分もろうあ者。そんな彼女が子育てをとおして、幸せをかみしめながら成長していくドキュメント。藤原さんは、以前から興味を持ち、取材を重ねていた障害、差別、高齢者にかかわるテーマでも作品を発表していきたいと考えている。その第一作になる作品である。
「いま、卒業論文の制作中なんです。この論文は、卒業後、小説として書き上げようと思っています。また、高齢者を取り巻く社会から目を離さないで、性の問題や生き方の問題も、自分の視点で取り上げていきたい」と話す藤原さんは、もう小説家の顔。卒業すれば、いよいよ本格的に小説家としての活動がはじまる。
穏やかな語り口調、丁寧な言葉のなかに、はっきりと伝わってくる現状から目をそらさないエネルギッシュな生き方。魅力的な藤原さんの活躍にぜひ期待したい。
|
|
|
|
|