1988 京都大学薬学部 卒業 1990 京都大学大学院薬学研究科薬学専攻博士前期課程 修了 1992 京都大学大学院薬学研究科薬学専攻博士後期課程 中退 1996 博士(薬学) 取得(京都大学)
大学学生時代は漠然と研究者になれたらと考えていたと思いますが、とくにどんな分野の研究をしたいなどとは何も考えておりませんでした。 研究室に所属してからは、タンパク質医薬品の高分子修飾による体内動態制御、抗体を用いた抗がん薬のミサイル療法などのテーマで研究を進めていましたが、こうした成果が現在B型肝炎の治療に汎用されているペグ化インターフェロンの開発などに少しは貢献できたかなと思っています。しかし、当時はまさか抗体医薬が世界の医薬品売上げのトップ10に数多く入るとは全く予想できませんでした。 大学院修士課程・博士課程と進むうちに、所属研究室の教授・助(准)教授に本人が意識するよりも先に進路を固められてしまい、気がつくと大学教員になっていました。 私が研究室に所属した当時の大学院の先輩方は、半数以上が大学教授になられていらっしゃいますので、研究室がそもそも研究者になるという雰囲気に包まれていて、それに私も感化されて研究に惹かれていったのだと思います。
体の中のくすりの動きを把握する
医薬品の吸収機構、目的組織への移行機構、体のなかからの消失機構を人体の生理学的側面および薬物の物性面から研究しています。
医薬品の体内動態は、薬物の吸収 (A: absorption)、分布 (D: distribution)、代謝 (M: metabolism)、排泄 (E: elimination)、毒性 (Tox: toxicity) により規定されますが、これらの生体内反応にかかる分子機構は極めて複雑で、いまだもって十分に解明されているとはいえません。本研究室では、こうした ADME-Tox 研究のなかで、主として薬物吸収に焦点をあて、新薬開発初期段階における新薬候補化合物のヒトでの吸収性予測や製剤設計の合理化に関する研究を多くの製薬企業と共同で進めています。 より良い薬をできるだけ早くそれを必要とする患者の手元に届けられるよう研究を進めています。
なぜ薬学部を目指していますか?
みなさんはなぜ薬学部進学を目指していますか? 薬学科では薬剤師免許取得を目指すのは当然として、卒業後の進路はどうでしょう。病院、薬局、製薬企業、公務員など漠然と考えられますね。薬剤師?研究者?その他?いろいろな進路はありますが、薬学では「くすり」という物質を介して患者と対峙することになります。錠剤、カプセル剤、注射剤など様々な「くすり」の形態のなかに何とかよい薬を患者のもとに届けたいという企業研究者の想いが詰まっていることを講義や実習を通じて皆さんに伝えたいと思っております。 また、医療従事者としての薬剤師のミッションは、今後ますます重要となってきています。こうした点も臨床現場と研究現場をつなぐ架け橋的な研究を進めている立場から、新しい薬剤師像についても伝えられればと思います。