1986 千葉大学薬学部総合薬品科学科 卒業 1986 薬剤師免許 1988 千葉大学大学院薬学研究科博士前期課程 修了 1994 薬学博士(千葉大学)
大学を卒業後、製薬メーカーの研究所に就職しました。大学院時代に手がけた画期的な糖鎖の分析法をさらに発展させたいと考えていたところ、出身研究室から声がかかり思い切って会社をやめて大学に戻りました。 その後、件の糖鎖分析法を引っさげてアメリカに留学し、そこでショウジョウバエと線虫にもヒトと同じくヘパラン硫酸という硫酸化多糖が存在することを証明し、その構造を明らかにしたことで、糖鎖研究者として広く認知されたと思います。当時世界中の多くの研究者が興味を持っていた、“ショウジョウバエや線虫はヒトと同じように複雑な構造をもつヘパラン硫酸を産生しているのか?”というテーマに答えを提出したことが大きな研究成果となり、研究者として道が開けたと思います。
生物を用いた糖鎖機能の解明と創薬研究への展開
ショウジョウバエや線虫といったモデル生物を用いた糖鎖研究を世界に先駆けて展開してきました。最近は、ヒトiPS細胞が産生している特種な糖鎖の分析に成功し再生医療分野への貢献を目指しています。
私たちは、現在世界的に関心を集めているiPS細胞およびES細胞を含むさまざまな細胞の表面糖鎖をターゲットとして糖鎖工学研究を行っています。 生体内の細胞表面は糖鎖(糖衣)で覆われており、糖鎖は、タンパク質や脂質といったさまざまな分子と結合することで、細胞間の情報伝達や生理的機能の発現に重要な役割を果たしています。 iPS細胞やES細胞の表面に発現する糖鎖が細胞のリプログラミングや分化に果たす生物学的役割を解析できれば、より効率が高く、安全、簡便な細胞培養、細胞の状態を規格化・標準化することなどが可能になります。 またiPS細胞が体細胞から誘導される際の詳しい糖鎖環境を解明することが、遺伝子導入を伴わない安全なiPS細胞を作製する新たな手法確立の一助となるかもしれません。 そのほかにも、未分化のiPS細胞やES細胞が混入することによるテラトーマ(奇形腫)の形成を防ぎ、癌などの病気を予防することにも結びつくことでしょう。糖鎖の構造や機能の解明は、iPS細胞、ES細胞の研究・開発を後押しし、再生医療の発展に大きく貢献するはずです。
1つの論文で世界を“あっと”言わせる
薬学科を目指す君に:本学薬学部の開校は2008年と最近です。しかし、開校当初本学に就任して教学改革に取り組んできた一人として、現在、最高に近い内容に進展したと言い切れます。本学のカリキュラムについてきてくれれば、薬剤師としての技能・知識・国家試験に関して必要十分なスキルが身に付きます。皆さんの入学を待っています。 創薬科学科を目指す君に:生体分析化学研究室卒業後の進路の1つとして、製薬メーカー研究所の製剤部で、さまざまな医薬品分析を担当することがあげられます。私自身もその進路を取りました。研究室では研究活動を通じて高度な分析技術の習得ができますので、メーカーで創薬に携わる一員として活躍して欲しいと思います。 一方で、生命科学研究の醍醐味のひとつに、それがどんな研究分野であれ、1つの論文で世界を“あっと”言わせるということがあります。我々は今、未分化なヒトiPS 細胞が積極的に作り続けている、ある複合糖質の解析を主要なテーマの1つにしています。一緒に世界をあっと言わせてみませんか。皆さんの入学を待っています。