Welcome of Labolatory of Molecular Medicinal Science



「ゲノム創薬研究室」が研究活動を開始した2003年は、ワトソンとクリックによるDNAの二重らせん構造の解明から50年という節目の年でした。 奇しくも時を同じくしてヒト遺伝子の全配列が明らかとなり、生命科学は新しい次元に向かって大きな一歩を踏み出しました。そして、2008年4月新設された立命館大学薬学部で「ゲノム創薬研究室」は「生体情報制御学研究室」として新たなスタートをきりました。

創薬科学とは ~創薬のパラダイムシフトと創薬科学~



 かつての「経験や偶然に基づいた」あるいは「天然物資源からの活性物質の抽出に軸足をおいた」医薬品開発は、ヒトゲノム計画をはじめとしたゲノム科学とその周辺技術の進展により、「生化学的研究やゲノム情報解析から導き出された標的分子の同定」と、「論理的なアプローチに基づいた化合物のデザイン」に焦点を当てた方法にシフトしつつあります。「創薬科学」とは少し耳慣れない言葉ですが、「独創的で画期的な医薬品を開発するための知識と技術」を包括する学問です。


 ヒトの体には約60兆個の細胞があるといわれています。たったひとつの受精卵に由来するひとつひとつの細胞は、自身がもつ遺伝情報に基づいて個体を形づくり、また、生体機能を維持しています。それぞれの生物のもつ遺伝情報の総体をさして「ゲノム」といいます。 一方、生物機能の表舞台で活躍しているのはタンパク質です。心臓が絶え間なく血液を送り出したり、肝臓が様々な代謝を行ったりするのはそれぞれの臓器や組織に特異的なタンパク質が合成されているからです。また、朝起きて空腹を感じたり、摂取した食品や栄養を効率よく消化吸収したりするのも、多くはタンパク質から成るホルモンや酵素の働きによるものです。しかし、いつ、どこで、どのようなタンパク質が合成されるかは、遺伝子に情報として組み込まれています。その遺伝子に変異が起こり、つくられたタンパク質の機能が損なわれると病気を発症してしまうのです。

 今日の分子生物学や生化学の発展は計算機科学の進歩と相まって、ゲノム情報の解読からタンパク質の機能や構造などの解明を可能にしました。そうして、タンパク質の性質や量の異常による病気の原因が分子レベルで明らかとなり、効果的な治療法の開発につなげることができます。ゲノム情報を活用することによって、新規に医薬品を設計し作り出すことを「ゲノム創薬」といいます。