Interview 10

「なぜ」を突き詰める楽しさを原動力に、より優しい社会を目指す。

Interview 10

「なぜ」を突き詰める楽しさを原動力に、
より優しい社会を目指す。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校 マネジメント学科 博士課程1年 河本 倫妥さん (2012年卒業) 2026.02.24

Introduction

立命館小学校4期生。立命館中学校・高等学校を卒業後、アメリカのカリフォルニア大学バークレー校へ進学。心理学部で集団心理やダイバーシティについて学び、現在はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の博士課程に在籍中。趣味は料理、論文を読むこと、文章を書くこと。美術館巡りがマイブーム。座右の銘は「どうにかなる」。

Growth Trajectory

5年生で抱いた問いを原点に、
研究者の道へ。

現在、UCLA大学院の博士課程で組織行動・マネジメント領域を専攻。人々の不平等に対する認識が、政策への支持やジェンダーに関するステレオタイプとどのように関係するのかをテーマに、研究に取り組んでいます。既存研究のレビューから仮説の構築、実験設計、統計分析、論文執筆まで、研究プロセス全体を一貫して担当する日々を送っています。
私がこの道を志した原点は、立命館小学校での「ワールドウィーク」にあります。海外の先生方と交流し多様な価値観に触れるなかで、5年生の時に一つの問いが芽生えました。「個人としては国や文化の違いを越えてこんなにも仲良くなれるのに、なぜ国同士になると戦争が起きるのだろう」。これまでのワクワクする疑問とは違う、考えれば考えるほど心が沈むような問いでした。同時に、目を背けてはいけない大切な問いだと強く感じたことを覚えています。振り返れば3年生の頃から、クラスの中で個人としては仲が良い相手でも、グループになるとどこか距離が生まれる瞬間に違和感を覚えていたように思います。「個人と集団では、関わり方の根本に何か違いがあるのではないか」。この疑問が、今も私の研究の原点になっています。
答えを求めて図書室に通い、本を読み漁るなかで出会ったのが、心と行動を科学的に読み解く「社会心理学」でした。どれだけ本を読んでも答えが見つからないのなら、自分で実験を行い新しい知を生み出し、伝えていこう。そう決意したのは、私が中学生の頃です。

小学校6年間で育んだ、
好奇心と自ら答えを探しに行く姿勢。

立命館小学校で過ごした日々を振り返ると、そこには今の私を形作る大切な経験がいくつも詰まっています。とりわけ、研究者としての私の姿勢は、この6年間で育まれた「好奇心」と「自ら答えを探しに行く習慣」によって支えられています。
何より印象に残っているのは、1年生の時に取り組んだ「自学ノート」。自学ノートとは、調べ学習をしたり詩を書いたりと、好きなことを自由に、思う存分ページにまとめる宿題でした。私は「脳はどうやって働くのか」や「冬のリンゴはなぜ甘いのか」、「頭を打つと尻もちをつくより痛いのはなぜか」といった身近な疑問を、思いつくままにノートに書いていました。私の問いに対して、先生は決して正解を教えるのではなく、「よく気づいたね、調べてごらん」と背中を押してくださるのです。たとえ見よう見まねの拙い文章でも、考え方そのものを否定されることは一度もありませんでした。ある時にはライチョウの生態が知りたくて、野鳥の会に直接電話をかけたことも。そうした行動を先生方が尊重し、温かく見守ってくださったからこそ、自分で答えを探しにいく姿勢が自然と身についたのだと思います。
さらに、日常的にプレゼンテーションの機会が多かったことも、「自分の思考を外に出す」というアウトプットへの大きな動機付けになったと感じています。
6年間の学びの中で、「点数」を取ることだけが目的だった時間は一度もありません。学びは純粋に楽しいものだという実感と、答えのない問いに粘り強く向き合う姿勢。それらは、今の私の確かな財産となっています。

「ないなら作る」の精神で自ら動いて機会を掴む。

高校生の頃、心理学の研究は理系でも文系でもないため、高校生が課外活動として成果を発表する場が限られているという理由から、研究を進めるのは難しいだろうとアドバイスを受けたことがあります。それでも、どうしても諦めきれず独学で統計を学び、立命館大学の教授を自ら訪ねて指導をお願いしました。さらにクラスメイトにも協力を仰ぎ、試行錯誤を重ねながら、ようやく自分なりに実験を形にすることができたのです。
国内に発表の場がないのならと、英語でポスターを作成しアメリカの学会へ。唯一の高校生としてポスター発表に挑戦しました。そのときバークレー校の教授に話しかけ、研究内容について直接議論を交わした経験は、のちにバークレー校へ進学を志す大きなきっかけに。研究とは知識を詰め込むことではなく、何もないところから自らピースを集め、周囲の人々を巻き込みながら形にしていくものだと実感した瞬間でした。
「自分が求めるレベルの研究をするには、アメリカに行くしかない」。そう決意して進学したバークレー校では、「将来、博士課程に進んで教授になる」という明確な目標を立て、そのために何が必要かを常に考えて動きました。大人数の大学では、待っているだけではチャンスは巡ってきません。自ら人を集めて勉強会を開き、研究内容がマッチする研究室には直接アイデアを持ち込みました。その結果、複数の研究資金を獲得し、卒業論文の準備を通常より1年も早く開始。卒業時には学部の研究賞を受賞することができました。
博士課程での生活は、業務を指示してくれる上司も、決められたスケジュールもありません。すべてを自分で決めて進める必要があります。だからこそ、これまでに培った「自分で計画を立て、自らチャンスを掴みに行く姿勢」は、今の私にとって何物にも代えがたい大きな力となっています。

Column

「英語が大好きになったきっかけ」

小学校の頃に出会った英語の先生は、私に「言葉が通じる楽しさ」を教えてくれた大好きな先生です。私にとって英語は、机に向かって勉強する科目ではありませんでした。休み時間に先生とお喋りをしたり、家に帰って母に英語の歌を聴かせたり。そんな何気ない時間を彩り、日常を楽しくしてくれるものという感覚だったのです。先生と「今日の晩御飯は何?」と会話を交わすのが嬉しくて、伝えたい一心で夢中になって言葉を覚えました。先生のおかげで英語が大好きになり、言語の壁への恐怖心がなかったからこそ、アメリカへの進学も迷いなく決断できたのだと感じています。

Goal

「優しい社会を目指して」

今後は組織行動や社会心理学の研究をさらに深め、「人はどのようなルールや判断を『公平だ』と感じるのか」、「どうすれば平和や平等への社会の意識を高められるのか」を解き明かし、新しい知を生み出したいと考えています。小学校の頃から大切にしてきた知的好奇心を、研究者として社会をより優しい方向へ変えるために使っていきたい。それが今の私の目標です。

Message

入学希望者へのメッセージ

立命館小学校での学びは、私に「正解を探すこと」よりも「自分で考える楽しさ」を教えてくれました。疑問に思ったことをそのままにせず、「なぜだろう?」と自ら調べ、考え、言葉にしてみる。その日々の積み重ねは、大人になり研究の道に進んだ今も、私を支え続けている大きな原動力です。みなさんにも、たとえ上手くいかない日や迷う日があっても、考えることそのものを楽しんでほしいと思います。そして保護者のみなさまには、お子さまが見つけた小さな「なぜ?」や「ふしぎだな」という好奇心を、どうか温かく見守っていただければ幸いです。立命館小学校で過ごす時間は、未来の学びや人生を支える揺るぎない「土台」となります。この場所で育まれる確かな力が、みなさんの未来を豊かに切り拓いていくことを願っています。

※プロフィールや内容は掲載当時のものです