自然共生型機械材料高効率利用プロジェクト | 材料設計に新しいパラダイムをもたらす調和型構造材料の創出。

高効率材料の創出・評価・加工を研究

日本において、これまで基盤となる製造業を支え、経済発展の原動力となってきたのは、世界最高水準といわれる素材産業、機械生産・加工産業です。自然資源の枯渇や環境問題など多くの課題を抱えながら、今後も日本がこうした分野で世界をリードしていくためには、希少元素や有害物質の使用を抑制しつつ、より高効率な材料の創成、最適設計、加工の技術を確立することが求められています。

私たちのプロジェクトでは、複数の専門領域が結集して「材料を創る」だけでなく、「特性を評価し、最適設計する」「高精度で加工する」という3分野を総合的に研究し、機械材料の高効率利用を目指しています。こうした研究の場は、教育機会としても非常に有効です。研究を推進するのと同時に、学術横断的な研究環境のもと、幅広い知識と技術、視野を備えた次世代の研究者を育成したいと考えています。

「ナノ・調和」という新アイデア

これまでの材料開発では、超微細化、かつ均一化が重視されてきました。しかし「ナノ・均一」材料では、強度と延性という相反する特性を同時に満たすことは困難です。私は、非平衡粉体プロセスの一つである超強加工プロセスを用いることで、この二律背反を克服する「ナノ・調和」材料の創出を可能にしました。これはすなわち、全く新しい材料設計のパラダイムが生まれたことを意味します。

非平衡粉体プロセスを経ると、製造された粉体は平衡状態への遷移過程において、低温・低荷重で変形することも可能になります。私は超強ひずみ加工プロセスを活用し、微細組織構造を制御することに成功しました。さまざまな金属粉末に超強ひずみ加工を施すと、高強度を示すナノ結晶粒構造を持つシェル部と、延性に富むメゾスケールの結晶構造を持つコア部からなる複合組織構造の粉末を作製できます。この粉末を焼結することで、ナノ・メゾ構造が調和し、延性を維持しつつ、高い強度を示す材料を創製することができることをこれまでに、純鉄、純銅、純チタンやステンレス鋼、チタン合金などで実証しました。

高強度かつ、軽量で靭性に優れた特性を生かせば、チタンやステンレス鋼素材の医療機器への応用のひろがりが期待できます。その他にも非平衡プロセスを用いれば、セラミックスなど加工の難しい材料の精密成型も可能となります。これまでに高硬度のTi-Si系、Ti-C系セラミックス材料を開発しました。この手法によって、MEMS領域に新たな素材を提供する道も開けるでしょう。

評価・最適設計・加工で実用化を目指す

非平衡粉末を急速加熱して焼結でき、セラミックスや金属等の非平衡状態を活かした材料創製が可能

材料開発と同時に、材料の実用化に向けて実証試験や各種評価、最適設計も行っています。微視的構造解析、常温・高温強度といった静的特性評価、疲労・衝撃強度などの動的特性評価、耐食性・耐熱性など物理化学的特性評価を実施します。続いて加工性能や被加工性といった加工特性も評価し、高精度化していきます。

こうしてプロジェクトから生まれた材料は、いずれ医療領域や環境領域、エネルギー領域など多様な分野の要請に応えることでしょう。今後の課題は人材育成です。材料開発のみならず、評価など多領域に関する専門性を身につけた技術者・研究者を育てる仕組み作りにも取り組んでいきます。

調和型組織、ナノ・調和材料、ものづくり、低環境負荷材料、減量・代替材料、高信頼性・最適設計、高機能加工プロセス

飴山 惠 教授

飴山 惠 教授

1986年 京都大学大学院工学研究科博士課程単位取得退学。工学博士。'79年 信州精機(株)(現:セイコーエプソン(株))、'86年 立命館大学理工学部助手、'92年 同助教授。'96年 同教授、現在に至る。日本金属学会(理事)、日本材料学会、日本鉄鋼協会(評議員)、日本粉体粉末冶金協会(参事)に所属。'87年 金属組織写真奨励賞を受賞。'01年 西山記念賞、第49回日本金属学会論文賞を受賞。

研究者の詳しいプロフィール
立命館大学研究者データベース:飴山 惠
飴山研究室 Ameyama Lab

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