2010年12月6日更新
超小型のロボットが身体の中を移動して病気を診断。患部にピンポイントで薬を投与したり、検査用に生体組織の一部を切り取って運ぶ。
これが「マイクロ体内ロボット」の目標だが、すでに「ボディ」は完成している。全長30ミリ、幅15ミリ、高さは8ミリの平たい流線形。これにカメラや腕などを備えた兄弟マシンが5~6種類ほど開発されている。
これまでの医療は人体の外側から検査や診断、手術を行ってきた。今では負担の少ない内視鏡手術も普及しつつあるが、それでも複数の穴を開けねばならない。この「ボディ」に様々な医療機能が搭載されれば、まさに超小型「体内医師ロボット」としての活躍が期待できるのである。
この構想が生まれたのは6年ほど前。理工学部の小西聡、野方誠、牧川方昭の3人が集まり「医療と工学が結び付いたらスゴいものができる。医療を変えよう」と手を握り合ったのが始まりだ。人間が空を飛ぼうと思わなかったら飛行機は生まれなかった。このマイクロ体内ロボットも3人の夢から始まり、その先駆けとして「ボディ」の開発を担当したのが野方誠である。
「飲み込むと画像を電送するカプセル型内視鏡もありますが、消化器官を通過していくだけ。腹腔内を自在に動き、留まるというのは形状も含めてゼロからの開発。特に移動方法には工夫しました」
この「ボディ」に車輪はない。モーターには永久磁石が必要となり、携帯電話の電磁場などが悪影響を与えるからだ。そのかわりに、人体外部で瞬間的に強力な磁場を作り、それにロボットの金属が引っ張られる形で動く。人体に磁気の影響はまったくない。
その後、野方はモーターなしで動く画期的な五角形の超小型車輪も開発した。水より軽い磁性粒子を利用して、この車輪は外部の磁気で回転し続ける。このメカニズムを「ボディ」に応用すれば、身体の中を今よりも自由自在に動き回らせることも可能になるわけだ。そのほかカテーテルの先端で自在に動くマイクロ鉗子 (ハサミ状のつかみ器具)など、この「ボディ」に応用可能なメカが次々に開発されている。
「ロボティクスには機械と電気と電子、それに情報工学まで含まれています。あれがダメならこれという工夫が必要ですが、頭の中のアイデアを何とかして目に見える形にする。世界の誰も考えつかず、誰にもできなかったことを創っていくのが楽しいんですよ」
AERA 2010年12月6日発売号掲載 (朝日新聞出版)このページに関するご意見・お問い合わせは 立命館大学広報課 Tel (075)813-8146 Fax (075) 813-8147 Mail koho-a@st.ritsumei.ac.jp