2010年12月13日更新

主治医は超小型ドクターロボ!(後編)

小西 聡
立命館大学理工学部教授、バイオメディカルデバイス研究センター長
小西 聡(立命館大学理工学部教授、バイオメディカルデバイス研究センター長)
博士(工学)。1968年生まれ、関西育ち。1996年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。1996年から立命館大学。日本コンピュータ外科学会講演論文賞などを受賞。MEMS(微小電気機械システム)のバイオメディカルエンジニアリングへの応用が研究テーマ。「休みの日の過ごし方を『動』と『静』で表現すると、夏はサッカー冬はスキー。少なくとも心の中では、今でもアクティブに活動しています(『動』)。『静』は、木々や草花の四季の息づかいに触れることですね」
ロボット医療

人体の中に入って診断や治療まで行う「マイクロ体内ロボット」は、前編で紹介した「ボディ」や「脚」(移動手段)で完成したわけではなく、同時並行で様々な研究開発が進められている。

この体内ロボットの腕や手となるのが、小西聡が開発した「マイクロハンドみゅーたん」だ。シリコンラバー製で、その先端に1ミリ幅の5本の指があり、その 1本1本を自由に動かすことができる。指の中央部の間接に秘密があり、ここを風船のように膨らませると指はモノをつかむ動作となり、圧力を抜けば真っすぐに戻る。2005年の「愛・地球博」では、まつげを思い通りにカールできる微細な動きで注目を集めたが、医療でも多彩な利用が考えられている。

掌に乗る極小サイズのマイクロ体内ロボット。上はカメラを付けた有線タイプ
幅1mmの5本の指が並ぶ「マイクロハンドみゅーたん」。
「小さく、柔らかく、安全な」マイクロハンドみゅーたん

既に、このマイクロハンドを備えた体内ロボットが製作された他、内視鏡にも装着されている。まさにヘッド(先端部)の両側で、その行く先を妨げる臓器を、傷つけることなく押し分けていく「腕」だ。この「腕」が患部に直接触れて薬を塗ったり、臓器をマッサージすることができるのだ。

マイクロハンドを搭載したマイクロ体内ロボット。

小西は半導体製造技術を応用したMEMS(微小電気機械システム)の生体利用を推進してきたエキスパートであり、「生体は細胞レベルではマイクロ、ナノという極小世界で構成されています。MEMS技術を活用すれば、この微細なスケールまで対応でき、特に医療分野の技術革新が可能になる。そのキーワードは小さく、柔らかく、安全に。新材料の開発まで含めた幅広い視野も不可欠です」と語る。

さらに、体内にぴたりと密着する特殊な吸盤構造を開発。これに検査機能を持つマイクロチップを搭載したり、薬を特定の部位に運んで集中的に注入する DDS(薬剤最適投与システム)としての利用も期待されている。患部に密着できるため、より確実な検査・診断や治療が可能になるという。

「僕はもともとは電子工学の出身ですが、生命に興味がありました。生体は素晴らしいモチーフなので、ものづくり技術の結晶であるメカやデバイス、バイオなど様々な分野のプロが結集すれば、ライフサイエンスや医療分野への応用など多彩な可能性が無限に広がる。僕が担当するバイオメディカルデバイス研究センターでは、そんな最先端の異分野融合に挑戦しています。もっと医療を人間に優しいものにしたい。日本発で、世界の医療のあり方を革新していきたいですね」

AERA 2010年12月13日発売号掲載 (朝日新聞出版)
→動画を見る

マイクロ体内ロボット、ロボットから見た世界、
鶏肉を使ったシミュレーションムービー


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