2011年2月14日更新
フトンの中で寝入る直前は手足が温かくなる。これは身体が放熱して体温を下げ、活動を最小限にとどめているからだ。深夜に体温が低下。再び上昇して朝を迎える。こうした睡眠研究のデータを電気毛布に応用して大ヒット商品にしたのが、岡田志麻である。
「それまでの電気毛布は睡眠中に温度調整できないので、夜中に温かくなり過ぎて目が覚めてしまった。そこで、寝る時間と起きる時間をセットすれば自動で温度調整できるようにしました。寝入るときは温かくして放熱を助け、次第に温度を下げる。高齢者は自律機能が衰えるので、快適な眠りにつながるこの毛布は高価にもかかわらず人気があったようですね」
そんな岡田が現在取り組んでいるのが、「他動的揺動装置」だ。足元の円盤が前後左右、8の字方向に様々な角度やスピードでグラグラと「揺動」する。一頃流行した乗馬マシンは「座る」ものだが、こちらは「立つ」ことに特徴がある。
「電車内で立っていてブレーキがかかると転倒しそうになりますよね。どんな揺れを与えると、人間はどのように対応するかを数値で解明する機械です。立つためには視覚、平衡感覚、足の筋力に代表される体性感覚などの複雑な組み合わせが必要。様々な揺れを与えて、身体がどう反応するかを調べています」
この装置で身体の情報を読み取り、研究を進めることで、どのような可能性につながるのだろうか。
「人が転倒する兆候を分析し、数値として把握したい。転倒兆候の解明だけでなく、この機械に何度も乗ると転倒しにくくなるトレーニング効果も確認しています。膨大なデータ計測が必要となりますが、蓄積してこれらの証明につなげていきたい」
未来の話だけでなく、これまでの睡眠研究との組み合わせで新たな成果も見えてきた。
「ADHD(注意欠陥/多動性障害)など発達障害の子どもは睡眠中に頻繁に身体を動かします。睡眠時の体動のセンシングからADHDを診断し、この機械を使ったトレーニングで、運動療法と症状の改善傾向を確認できるシステムができればと考えています」
人間の行動をデータ化することは『かゆいところに手が届くロボット』の開発につながる。例えば、転びそうな時にすぐに手を差し伸べてくれるロボットも夢じゃない。
「将来的にはロボットが人間の顔色を判断して喜怒哀楽も理解してくれるようにしたいですね」
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