2013年3月11日更新

復興を担う子どもたちの健康を守る体力向上運動プログラムを開発

家光 素行
立命館大学スポーツ健康科学部准教授
家光 素行(立命館大学スポーツ健康科学部准教授)
医学博士。1973年岡山県生まれ。1996年川崎医療福祉大学医療技術学部健康体育学科卒業。1998年東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻修士課程修了。2003年筑波大学大学院医学研究科生理系専攻博士課程修了。筑波大学、環太平洋大学などの助手、講師を経て2010年から立命館大学で現職。主な研究テーマは、生活習慣病予防に役立つ運動・食事(サプリメント摂取)方法の開発など。学生時代は短距離の選手。自宅から大学まで約3キロを徒歩通勤することもしばしばという。「旅行も好きですね。それに東京ディズニーランドは何十回と行ったので、すごく詳しいですよ」と見かけによらない意外な趣味も。
micromicro

東日本大震災から2年あまり経過したが、立命館大学では震災直後に復興支援室を立ち上げ、様々な支援活動を行ってきた。その中でもスポーツ健康科学部が作成した運動プログラムは10年後、20年後の被災地の復興を担う子どもたちの健康を守るために家光素行らが作成したものだ。

「被災地の小・中学校のグラウンドには仮設住宅が建ち、体育館は部活の取り合いで運動する場がなかったからです。特に成長期の中学生が十分に運動できなければ、将来的な健康に影響が及びます。大人のケアも大切ですが、私たちは未来を担う子どもたちに貢献したいと思いました」

岩手県大船渡市の大船渡市立第一中学校の協力を得て、特別な道具なしでも筋力がつき、走る場所がなくても持久力を向上させ、狭いスペースでも子どもが柔軟性を高められるストレッチ体操までを一連の運動メニューとして提案した。

「2012年2月に、このメニューと短時間に多人数が測定できる簡易体力テストを導入。約250名全員の筋力、持久力、柔軟性を測定できました」こうして第一中学校の生徒たちは家光らの指導を基に運動プログラムに取り組んだのである。

「2月の測定では部活動の有無に関わらず体が硬いという結果でしたが、6月の測定では柔軟性が顕著に向上。それ以外の持久力、筋力も向上し、ケガをする子どもが減ったと聞いて本当にうれしかったですね。トレーニング用DVDも完成したので、これまでの冊子と併せて他の学校にも本格的に普及させていく段階です」

その一方でライフワークの一つとして家光が取り組んでいるのは、個人の遺伝に基づいた「オーダーメード」の運動・健康維持プログラムの開発だ。

「同じ運動を続けても、それで痩せる人と効果に乏しい人がいます。後者は運動では痩せにくい遺伝を持っているからで、それなら食事療法のウエートを高めた方がいいわけですね」それとは逆に、遺伝的な生活習慣病のリスクが若い頃からの運動によってキャンセル(回避)できることも解明されているという。「遺伝と運動の関係をより深く追求していくことで、スポーツ健康科学は予防医学としての活動や貢献も可能になると思うのです」

AERA 2013年3月11日発売号掲載 (朝日新聞出版)

このページに関するご意見・お問い合わせは 立命館大学広報課 Tel (075)813-8146 Fax (075) 813-8147 Mail koho-a@st.ritsumei.ac.jp

ページの先頭へ