1990年代のBKC

1980年代後半から、理工学部の抜本的拡充が全学的な課題として浮上してきました。科学技術の高度化に伴う、教育・研究に対する社会的要請のいっそうの高まりに応えるためには、理工学部・大学院理工学研究科の再編・拡充が不可欠だったのです。しかし衣笠キャンパス周辺には拡張の余地がなく、滋賀県草津市南部の丘陵地に新しいキャンパスを開設することになりました。

滋賀県と草津市の協力を得て確保された校地は約60ヘクタール、衣笠キャンパスの4倍もの広さです。周辺に滋賀県立図書館・近代美術館等の文化施設や、龍谷大学瀬田キャンパス・滋賀医科大学などの教育研究施設がある滋賀県下最大の文化ゾーンの一画で、企業の研究開発施設も集まっています。また名神高速道路や国道1号線、東海道新幹線・東海道本線が通り、人や物資が多く行き交う地でもあります。新校地には豊かな発展可能性が備わっていました。

造成工事に続き、1992年9月には建物の工事が始まり、翌93年11月末には第1期の工事が完了、びわこ・くさつキャンパス(BKC)が誕生しました。

1994年の春、理工学部・理工学研究科は学科・専攻の再編拡充を果たすとともにこのBKCへ移転しました。学生数はおよそ5,000名。研究機材の分解・運搬・組み立て設置作業にはおよそ半年間もの時間を要しましたが、全国の大学でも屈指のコンピュータネットワークやマルチメディア環境、先端的研究設備を備えた未来志向のキャンパスで、学生たちは存分に勉学に勤しめるようになりました。 なお、BKC各施設の名称は英語風のカタカナの名前です。1期に竣工した18施設のうち、8つについては、学生から募集して選ばれた名称が採用されました。

1998年の春には、経済・経営の両学部・研究科もBKCへと移りました。社系の教学を高度化しつつ、エコノミクス・ビジネス・テクノロジーの3分野が連携して文理融合型の教育研究環境を構築することは、新時代において求められる人材育成の課題に応えることであり、社会に開かれた大学として産官学地域連携を強化していくうえでも必要だったのです。また外国語学習環境や情報化環境も一段と増強されました。

この新展開にあたり、アクロスウィング、アドセミナリオなどの新棟が建設され、既存施設の改修も行われました。BKCはキャンパス内で正課はもとより様々な課外活動やイベントまでできる「長時間活動・多機能型キャンパス」へと生まれ変わりました。

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年表・校舎竣工年
  • 1989年滋賀県草津市への新キャンパス設置、理工学部拡充移転を発表
  • 1992年びわこ・くさつキャンパス建築工事起工式
  • 1993年理工学部衣笠学舎「さよならの集い」開催
    ・びわこ・くさつキャンパス建物竣工
    コアステーション、イーストウィング、ウエストウィング、メディアセンター、ユニオンスクエア、プリズムハウス、エクセル1~3、セル、ワークショップラボ、レクセル、フォレストハウス、BKCジム
  • 1994年びわこ・くさつキャンパス開学
    理工学部に生物工学科、環境システム工学科を設置
    情報工学科を改組し、情報学科を設置
  • 1995年テクノコンプレクス、シーキューブ 竣工
  • 1996年理工学部 光工学科、ロボティクス学科を設置
    SRセンター棟竣工
  • 1997年ハイテクリサーチセンター棟竣工
  • 1998年文理融合キャンパスとしての新展開に向けた新施設竣工
    アクロスウイング、アドセミナリオ、コラーニングハウスⅠ、学術フロンティア共同研究センター、アクトα・β、リンクスクエア、アスリートジム、ビーイングスクエア
    経済・経営両学部、びわこ・くさつキャンパスに移転、新展開
    文理総合インスティテュート設置

2000年代のBKC

21世紀を迎えたBKC。本格的なホールや茶室まで備えた多機能型セミナーハウスであるエポック立命21などが建ち上がり、ますます充実した学生生活が送れるようになりました。

2004年、情報理工学部が設置され、学部基本棟クリエーションコアができました。またBKCで進められてきた産官学地域連携を更に強化し、大学と地域産業界の協力により新事業の創出・育成を目指す場として、立命館大学BKCインキュベータも建ちました。ここには多くの企業が入居しており、また学生に対する起業支援も行われています。

2005年には、サークルスペースや自治会施設、飲食スペースなどを備えた学生の集いの場として、セントラルアークが誕生しました。

2005年竣工の防災システムリサーチセンターは、文部科学省21世紀COEプログラムに採択されたなど実績のある立命館大学の防災研究を、さらに深めるために建てられました。建設環境系・情報系・機械系の研究者が連携してプロジェクト研究に取り組みます。学際的な先進研究を推し進めてきた本学の教育・研究のありかたを体現する施設のひとつです。

そして2008年には、サイエンスコアを基本棟とする生命科学部・薬学部が設置されました。開設から間もなく満15年、学生数・建物の数ともに当初の規模の3倍以上に成長したBKCは、まだまだ発展を続けます。

2010年には、スポーツ健康科学部の開設に伴い、インテグレーションコア、ラルカディアが建設されました。

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年表・校舎竣工年
  • 2000年理工学部数学物理学科を改組、数理科学科・物理科学科を設置
    ローム記念館竣工
  • 2001年理工学部光工学科を電子光情報工学科に名称変更
    理工学研究科にフロンティア理工学専攻を設置
    エポック立命21竣工
  • 2003年コラーニングハウスⅡ竣工
  • 2004年情報理工学部を設置(情報システム学科、情報コミュニケーション学科、メディア情報学科、知能情報学科、生命情報学科)
    理工学部に電子情報デザイン学科、マイクロ機械システム工学科、建築都市デザイン学科を設置
    クリエーションコア、立命館大学BKCインキュベータ、アスリートクラブハウス、アクトμ 竣工
  • 2005年大学院テクノロジー・マネジメント研究科(MOT大学院)を開設
    セントラルアーク、防災システムリサーチセンター 竣工
  • 2006年経済学部国際経済学科、経営学部国際経営学科を設置
    キャノピー、燃料電池研究センター 竣工
  • 2008年生命科学部(生命医科学科、応用化学科、生物工学科、生命情報学科)、薬学部(薬学科)を設置
    サイエンスコア 竣工
  • 2010年スポーツ健康科学部を設置
    インテグレーションコア、ラルカディア 竣工

BKC発展の軌跡 ―校舎を竣工年順に追う 1990年代前半

BKCキャンパス開設・理工学部移転の当初に必要な教室棟・研究棟・事務棟や、学生の“暮らし"に直結する食堂等の施設、体育施設が建てられました。

BKC発展の軌跡 ―校舎を竣工年順に追う 1990年代前半 MAP
BKC発展の軌跡 ―校舎を竣工年順に追う 1990年代前半 イメージ
年表・校舎竣工年
  • 1993年コアステーション…理工学部・生命科学部・薬学部事務室、BKCキャンパス事務課、役員室、会議室など
  • 1993年イーストウイング…理工学部研究・実験室、教員個人・院生研究室
  • 1993年ウエストウイング…理工学部研究・実験室、教員個人・院生研究室、保健センター
  • 1993年メディアセンター…図書・新聞・雑誌閲覧室、マルチメディアルーム、グループ学習室、セミナールームなど
  • 1993年ユニオンスクエア…エクステンションセンター、キャリアオフィス、インターンシップオフィス、教職支援センター、生協食堂、ホールなど
  • 1993年プリズムハウス…学びステーション、エクステンションセンター、キャリアオフィス、インターンシップオフィス、プリズムホール、情報語学演習室、情報処理演習室など
  • 1993年エクセル1…理工学部・情報理工学部の実験室など
  • 1993年エクセル2…理工学部の研究・実験室
  • 1993年エクセル3…理工学部の研究・実験室
  • 1993年セル…理工学部環境都市系の水理・風洞・土質・構造・材料に関する各実験室
  • 1993年ワークショップラボ…機械工作室
  • 1993年レクセル…RI実験室(放射線研究施設)
  • 1993年フォレストハウス…教室棟
  • 1993年BKCジム…第1・第2アリーナ、トレーニングルーム、ミーティングルームなど

1990年代後半

経済・経営両学部の移転に伴う、“BKC新展開"の時期でした。社系の教室棟・研究棟・事務棟が建つとともに、学生数の増加に対応して、学生活動のスペースや食堂スペースも増やされました。

1990年代後半 MAP
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年表・校舎竣工年
  • 1995年テクノコンプレクス…ロボティクス・FAセンター(1994年)、SRセンター(1995年)、産学連携ラボラトリー(1996年)、立命館大学ハイテク・リサーチ・センター(1997年)、マイクロシステムセンター(2002年)の複合施設
  • 1995年喫茶・グリル「シー・キューブ」…生協の喫茶・グリル
  • 1998年アクロスウイング…BKC留学生課、BKC海外留学課、国際交流ラウンジ、情報語学演習室、メディアラボ、メディアライブラリー、大学院共同研究室、教員個人研究室、人文社会リサーチオフィスなど
  • 1998年アドセミナリオ…経済学部事務室、経営学部事務室、教室など
  • 1998年コラーニングハウスI…情報処理演習室、情報語学演習室、教室
  • 1998年学術フロンティア共同研究センター…理工学部の研究・実験室、情報理工学部の実験室
  • 1998年アクトα…サークルラボ
  • 1998年アクトβ…サークルラボ
  • 1998年リンクスクエア…生協食堂、書籍部、サークルスペースなど
  • 1998年アスリートジム…トレーニングルーム、ミーティングルーム
  • 1998年ビーイングスクエア…広場

2000年代前半

情報理工学部棟の新築や、エクステンションセンターで学ぶ学生のための自習スペース設置などがなされました。

2000年代前半 MAP
2000年代前半 イメージ
年表・校舎竣工年
  • 2000年立命館大学ローム記念館…大会議室、教員個人研究室、ホール、理工リサーチオフィス
  • 2001年エポック立命21…多機能型セミナーハウス
  • 2003年コラーニングハウスⅡ…インスティテュート研究室、演習室、教室、立命館高等学校スーパーサイエンス施設など
  • 2004年クリエーションコア…情報理工学部基本棟
  • 2004年立命館大学BKCインキュベータ…(独)中小企業基盤整備機構による大学連携起業家育成施設(開発・実験・研究施設)
  • 2004年コラーニングハウスⅢ…エクステンションセンター公認会計士オフィス、自習室他(改築後)…竣工時の名称はアスリートクラブハウス。2008年にコラーニングハウスⅢとなる。
  • 2004年アクトμ…音楽練習場

2000年代後半

生命科学部・薬学部棟や、キャンパスインフォメーション機能を備えたキャノピーの新築、体育施設の増設等がなされました。また、2010年にスポーツ健康科学部の開設に伴い、インテグレーションコア、ラルカディアが建設されました。

2000年代後半 MAP
2000年代後半 イメージ
年表・校舎竣工年
  • 2005年セントラルアーク…学生オフィス、スポーツ強化オフィス、学生サポートルーム、ボランティアセンター、サークルスペース、自治会施設など
  • 2005年防災システムリサーチセンター…理工学部・情報理工学部の防災研究施設・実験室
  • 2005年燃料電池研究センター…産学連携による研究施設
  • 2006年キャノピー…キャンパスインフォメーションセンターなど
  • 2008年サイエンス コア…生命科学部・薬学部基本棟
  • 2010年インテグレーションコア、ラルカディア…スポーツ健康科学部基本棟、教室棟

ちょっと寄り道 クインススタジアムと木瓜原遺跡

BKCのメイングラウンドであるクインススタジアムの地下には木瓜原遺跡が眠っています。ここは7世紀頃に鉄器などが製造されていた、いわば製鉄コンビナートの跡です。キャンパス造成の際に発見され、保存されています。太古の昔、この地は植物の木瓜(ボケ)の原生林だったそうで、燃料となる薪が潤沢だったために製鉄炉の場所が移らず、古代の大規模な製鉄所として発展したと考えられています。ちなみに、クインスとは木瓜の英語名です。

さて立命館スポーツの殿堂クインススタジアムには、“隠れた役割"があります。万一非常な大雨が降ったときには、このスタジアムに雨水がたまり、キャンパスの冠水を防ぐように設計されているとのことです。

ちょっと寄り道 クインススタジアムと木瓜原遺跡 イメージ