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カラダで感じるデジタル通信

デジタル無線通信と“音”

デジタル情報を 数十Mbps のビットレートで、数GHz のキャリアにのせて、電磁エネルギーとして空間に放出したら、これはデジタル無線通信です。 数bps のビットレートで、数百Hz のキャリアにのせて、空気分子の運動エネルギーとして空間に放出したら、音になります。 …ということで、デジタル通信の信号を音にしてみました。

※Windows Media Player から 「視覚エフェクト」→「バーとウェーブ」の 「海の霧」(周波数領域波形)や「スコープ」(時間領域波形)を使うと オシロスコープのかわりになります。

ASK, FSK, PSK

ASK (Amplitude-Shift Keying / 振幅偏位方式), FSK (Frequency-Shift Keying / 周波数偏位方式), PSK (Phase-Shift Keying / 位相偏位方式), のデジタル通信の波形を音声ファイルとして作成してみました。 ASK では、振幅で 0 と 1 をあらわすので、音の“強弱”として聞こえます。 FSK では、周波数で 0 と 1 をあらわすので、音の“高低”として聞こえます。 PSK では、位相で 0 と 1 をあらわすので…、あれ?
ASK の例
ビットレート: 5.38bps (8192/44100)
キャリア周波数: 172Hz (256/44100)
0 と 1 の振幅比: 1:7
送信ビットパターン: 1001001010 の繰り返し
FSK の例
ビットレート: 5.38bps (8192/44100)
キャリア周波数: 0 ... 172Hz (256/44100), 1 ... 230Hz (192/44100)
送信ビットパターン: 1001001010 の繰り返し
PSK の例 (知覚不能)
ビットレート: 5.38bps (8192/44100)
キャリア周波数: 172Hz (256/44100)
0 ... 基準音と同相, 1 ... 基準音と逆相(180度回転)
送信ビットパターン: 1001001010 の繰り返し

PSK 知覚実験

PSK、すなわち、位相は通常人間には知覚不能ですが、 方耳に信号音、もう片方の耳に基準音を与えると知覚できるはずです。 人間は単音の位相は知覚できませんが、左右の耳の位相“差”は知覚できるのです。 方向感覚のような違和感として感じます。 以下、知覚実験用音声ファイル。 注意:スピーカから鳴らすのではなく、ヘッドフォンを使うこと。(スピーカから鳴らすと、音が干渉して ASK になってしまうので。)
ある映画音楽のリズム
送信ビットパターン: 1001001010 の繰り返し
3拍子
送信ビットパターン: 100100 の繰り返し
4拍子
送信ビットパターン: 10001000 の繰り返し

PSK 位相差の変化による比較

「180度(2.9msec at 172Hz)も回るから判らないのかも…」という方のためのデータです。
3拍子(位相差90度, QPSK相当)
送信ビットパターン: 100100 の繰り返し
4拍子(位相差90度, QPSK相当)
送信ビットパターン: 10001000 の繰り返し
3拍子(位相差45度, 8PSK相当)
送信ビットパターン: 100100 の繰り返し
4拍子(位相差45度, 8PSK相当)
送信ビットパターン: 10001000 の繰り返し
3拍子(位相差15度, 24PSK相当)
送信ビットパターン: 100100 の繰り返し
4拍子(位相差15度, 24PSK相当)
送信ビットパターン: 10001000 の繰り返し

QAM

振幅と位相の組合せなので、音の大きさと方向感の組合せとして人間には感じられると思います。ヘッドフォンで左チャンネル:信号音、右チャンネル:基準音です。知覚するのは難しいかな…。 Mapping については付録: QAM mapping参照。
64QAM の例
ビットレート: 129.2bps
シンボルレート: 21.5symbol/sec (2048/44100)
変調方式: 64QAM
キャリア周波数: 345Hz (128/44100)
送信ビットパターン: このデータファイルにて(I,Q) の系列で与えたもの。次の図に示す回転パターンの繰り返し。(左図→右図→左図→右図)

OFDM

OFDM の例
ビットレート: 1033.6bps
シンボルレート: 5.38symbol/sec (8192/44100)
変調方式: 64QAM
サブチャネル数: 32
キャリア周波数: 86.1Hz*i (for i=0...31)
送信ビットパターン: このデータファイルにて(I,Q) の系列で与えたもの。(I,Q)が32セットで1シンボル。
複数周波数の重ね合わせなので、人間の音楽の感覚で言えば“和音”になります。 音楽の周波数(等比音階 f*pow(2,i/12))を直交周波数(等差音階 f*i)の近い値に 対応付けて、その周波数に強弱をつければ単音演奏になります。 この例では、ベース周波数の16倍近辺(高音 16f, 19f, 21f, 14f, 15f)でメロディを、 8倍近辺(中音 8f, 7f)で装飾音を、4倍近辺(低音 4f, 3f)でベース音を入れて和音にしました。 なお、出したい音以外の周波数は 64QAM の最も小さい出力である(+1,+1)を 割り当てています。 音楽としてはゼロにしたいのですが、そうすると変調としてはズルになるためです。 この微小音の重ね合わさった波形が出てしまいますが、 ベース周波数として音楽のベース音の周波数を選ぶことで、 その波はベース音のような感じで聞こえます。 また、この例では位相はすべてπ/4にしています。 (64QAM だが結果として 1:3:5:7 の 4ASK としてしか使っていない。)


泉 知論立命館大学 理工学部 電子情報デザイン学科 , Jun 2006


付録: QAM mapping

4QAM の信号点(b0,b1)配置
Q \ I-1.0+1.0
+1.01000
-1.01101

16QAM の信号点(b0,b1,b2,b3)配置
Q \ I-3.0-1.0+1.0+3.0
+3.01000101000100000
+1.01001101100110001
-1.01101111101110101
-3.01100111001100100

64QAM の信号点(b0,b1,b2,b3,b4,b5)配置
Q \ I-7.0-5.0-3.0-1.0 +1.0+3.0+5.0+7.0
+7.0100000100010101010101000 001000001010000010000000
+5.0100001100011101011101001 001001001011000011000001
+3.0100101100111101111101101 001101001111000111000101
+1.0100100100110101110101100 001100001110000110000100
-1.0110100110110111110111100 011100011110010110010100
-3.0110101110111111111111101 011101011111010111010101
-5.0110001110011111011111001 011001011011010011010001
-7.0110000110010111010111000 011000011010010010010000


泉 知論立命館大学 理工学部 電子情報デザイン学科 , Jun 2006
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