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CIS系薄膜太陽電

Cu(In,Ga)Se2(以下、CIGSと略す)太陽電池は薄膜太陽電池の中でも最も変換効率が高く、長期信頼性も実証されていることから、次世代型太陽電池として注目されている。現在、CuInSe2(以下、CISと略す)とCuGaSe2(以下、CGSと略す)との混晶であるCIGS薄膜太陽電池は多結晶Si太陽電池に匹敵する変換効率19.9%を達成されている。また、理想的な禁制帯幅1.4eVに制御できることから、変換効率25〜30%の可能性がある。しかしながら、Voc(開放端電圧)の伸び悩みにより最高変換効率は禁制帯幅1.1〜1.2eV付近でしか実現していないのが現状である。そこで、本グループでは以下の研究を行っている。



 

「新規材料の高効率太陽電池の研究」

Cu(In,Al)Se2薄膜太陽電池の研究

 CIGS太陽電池と同様のカルコパイライト型構造のT-V-Y族化合物半導体であるCu(In,Al)Se2(以下、CIASと略す)薄膜太陽電池の研究ではCIS(1.0eV)とCuAlSe2 (2.7eV)の混晶であるCIAS薄膜をMBE(Molecular Beam Epitaxy)装置を用いて高真空蒸着成膜した。結晶粒の増大とV字構造が望める三段階法を確立する研究を行っており、現在、禁制帯幅1.16eVで変換効率13.8%を得ている。CIAS太陽電池は、CIGS太陽電池の変換効率に及んでいないが、今後の研究によりCIGS太陽電池同様の高い変換効率を得られる可能性が十分にある。



窓層(ZnMg)Oの研究

 現在、CIS系薄膜太陽電池ではバッファ層としてCdSが主流として用いられている。しかしCdSは環境汚染などの問題があるため、Cdを含まないバッファ層または窓層を用いたCIS系薄膜太陽電池の研究が注目されている。本研究室では、ZnMgO(以下、ZMOと略す) を用いて研究を行っている。ZMOはZnOとMgOの組成比を変化させることにより、禁制帯幅を3.2eVから7.7eVまで変化させることが可能である。それによりバンドオフセット制御が可能となり、ワイドギャップCIS系薄膜太陽電池の窓層としてZMOを利用する研究を行っている。

 

 

「低コストCIS系太陽電池に関する研究」

ポリイミドフレキシブル太陽電池

応用の幅を広げるために低コストなポリイミド基板を用い、柔軟性があり軽いという特徴を備えたフレキシブル太陽電池の作製を行っている。ポリイミド基板は、一般的にCIS系薄膜太陽電池の基板として用いられるソーダライムガラスに比べて、耐熱温度や線熱膨張係数において不利であるため、成膜温度やプロセスの最適化を行っている。高変換効率のフレキシブル太陽電池が実現できれば、ロール・ツー・ロール方式による大面積・低コスト化が期待できる。

現在は基板のフレキシブル化、低コスト基板の利用に向けて、ガラス基板上に作製したCIGS層を他の基板上に移乗してやる研究を行っており、CIS系太陽電池作製の新たなアプローチの確立を目指している。

電着法による低コストCIS系太陽電池の作製

材料利用効率が高く、投入電力を低減することのできる電着法(Electrodeposition)を用いた超低コスト薄膜太陽電池の研究を行っている。CIS、CGSなど多様なカルコパイライト系薄膜の電着成膜法を確立しており、CISとCGSを組み合わせたCIGSなどの四元化合物の作製することで、より高効率な太陽電池の実現を目指している。

硫化法によるCuInS2太陽電池の作製

禁制帯幅が1.5eVと太陽電池の吸収層として適しているCuInS2薄膜太陽電池の研究を行っている。成膜プロセスとして、プリカーサーとなるCuIn積層膜をスパッタ法により作製した後、硫化法を用いてCuInS2薄膜の作製を行う。スパッタ法を用いることでCuとInの比を膜厚のみで制御可能であり、また材料利用効率が良く、簡易な硫化法を用いることで低コストかつ高効率CuInS2薄膜太陽電池の実現を目指す。

薄膜化に向けたテクスチャリングの作製

CISの薄膜化のアプローチとしてテクスチャ構造をもちいたCIS薄膜太陽電池の研究を行っている。テクスチャ構造を用いることにより光路長が増加し、より多くの光、特に長波長域の光をとりこむことが可能となる。テクスチャ構造により、CIS層を薄くすることで減少してしまう光吸収を向上させることを目指す。