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2016年度SnSグループ紹介

当チームでは、SnS (硫化スズ,Tin(II) Sulfide, Tin mono sulfide) 薄膜の物性調査と太陽電池の 作製を行っています。

SnSとは?

SnSはSn(すず, Tin) と S(硫黄, Sulfur)という、資源量の豊富な2つの元素から構成される化合物半導体です。

この材料は、Cu(In,Ga)Se2やCdTe等の従来材料が持つ優れた光学特性、電気特性、生産性に加え、 Cd(カドミウム)などの毒性の強い元素を使わず、またIn(インジウム)やTe(テルル)等の希少元素[1]を使いません。
* K. H. Wedepohlの報告[1]によると、陸地の地殻中の存在度は Snが2.3*10-4% (0.00023%), Inが50*10-7% (0.000005%), Teが5*10-7% (0.0000005%)

このようにSnS薄膜は、従来の化合物薄膜太陽電池材料に比べ、埋蔵量の多い材料を用いています。 将来、太陽電池が現状より遥かに大量生産されるようになっても、高効率なSnS太陽電池を実現することにより、 原料の面で制限を受けずに造り続けられるようになると私達は考えています。

 

SnSの基礎物性について

SnSはII-VI族(Snが2価の役割を行う)の半導体で、電気特性はp型を示します。 また、同じII-VI族半導体であるCdTeと同様に昇華性を持ち、蒸着法[2]、気層化学成長(CVD)法[3]、硫化法[4]、 スパッタリング法[5]、昇華法[6]等々、様々な手法での成膜が可能な材料です。 加えて、化合物太陽電池の光吸収層として精力的に研究されている
Cu(In,Ga)(S,Se)2 , Cu2(Zn,Sn)(S,Se)4 等と比較し、2元素のため組成制御が容易である点も特長の1つです。

私達のグループの報告したSnS膜[2]は、約1.3eVの光学バンドギャップを持ち、キャリア密度は1015〜1017cm-3、 ホール移動度は薄膜で6.0cm2/Vsを超える優れた値となっており、高い変換効率に繋がる光吸収材料として研究を続けています。

SnSの最も高い変換効率としては、他研究機関にて4.63%(開口面積:0.24cm2)が報告されています[3]。

本グループの実験

現在は、バッファー層のCdSを均一に成膜するために前処理によるエッチング および超音波洗浄の検討を行っており、今後はSnS 光吸収層の粒径を増大させVoc とFFを改善するためにH2S雰囲気化でアニールを行うことや、SnS層のNa添加量 を制御するために新たにSnS 光吸収層の上にNaF層を電子ビーム蒸着法によって 成膜する予定です。
(この時SLGの代わりに無アルカリガラスであるEAGLE XGを用います。)


SnS太陽電池の構成


[1] K. H. Wedepohl, “The composition if the continental crust”, Geochimica et Cosmochimica Acta 59 (1995) 1217-1232.
[2] Y. kawano, C. Jakapan and T. minemoto, ”Impact of growth temperature on the properties of SnS film prepared by thermal evaporation and its photovoltaic performance”, Current Appl. Phys. (2015) doi:10.1016/j.cap.2015.03.026.
[3] P. Sinsermsuksakul, L. Sun, S.W. Lee, H.H. Park, S.B. Kim, C. Yang and R.G. Gordon, “Overcoming efficiency limitations of SnS-Based Solar Cells”, Adv. Energy Mater. 4 (2014) 1400496.
[4] T. Minemura, K. Miyauchi, K. Noguchi, K. Ohtsuka, H. Nakanishi and M. Sugiyama, “Preparation of SnS films by low temperature sulfurization”, Phys. Status Solidi C 6 (2009)1221?1224.
[5] T. Ikuno, R. Suzuki, K. Kitazumi, N. Takahashi, N. Kato and K. Higuchi, ”SnS thin film solar cells with buffer layers”, Appl. Phys.Lett. 102 (2013) 193901.
[6] A. Wangperawong, S. M. Herron, R. R. Runser, C. Hagglund, J. T. Tanskanen, H. B. R. Lee, B. M. Clemens and S. F. Bent, ” Vapor transport deposition and epitaxy of orthorhombic SnS on glass and NaCl substrates”, Appl. Phys. Let. 103 (2013) 052105.

  

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