磁気円二色性

○ 概要

X線磁気円二色性(X-ray Magnetic Circular Dichroism XMCD)とはX線吸収分光を応用したもので、 磁性体試料に円偏光させたX線を照射したとき、吸収スペクトルが試料の磁化方向と円偏光の光スピンの方向に依存して異なる現象のことをいいます。 この現象を利用して実験を行うことで、磁性体の研究を行うことができます。

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上図に示すように、光吸収強度は円偏光の光スピンの向きと試料の磁化の向きが平行か反平行かで異なってきます。 円偏光の向きを変えることによって吸収強度に差があるエネルギー領域があります。 この現象の応用例として、XMCD-PEEMでは差分スペクトルが大きい光エネルギーを用い、 円偏光の向きを変えて測定を行うことで、試料の磁区(特定の向きに磁化している、つまり電子スピンの向きが同じ方向を向いている領域)の構造を観察することができます。

 X線吸収は元素ごとにちがった光エネルギーで起きるので、 光エネルギーを適切に選んで実験を行うことで、元素ごとの情報が得られます。ですから、XMCD実験を行うことで元素ごとの磁気的状態がわかります。