立命館大学 理工学部 環境都市工学科 インフラマテリアル研究室

English

研究内容

インフラマテリアル研究室では、「非破壊試験による材料(コンクリート、鋼材、ゴムなど)の損傷・劣化評価」、「環境負荷低減型コンクリート材料」、「コンクリートに関する新規用途開発」などを行っています。
今後も、私たちが安心・安全に暮らしていくために、現存するインフラの劣化の早期評価や新たな技術開発が不可欠です。また、本研究室では、「コンクリート+異分野」で実施している研究も多く、「防災・減災・環境」に着目した、未来のより良いコンクリート社会に繋がる幅広いテーマで研究を進めています。その中で、ほんの一部のプロジェクトを以下に示します。以下に紹介した研究以外にも、多種多様な研究を進めております。もし研究内容に興味があれば、是非ご連絡ください。

材料・構造グループ(MSG)

香水コンクリート(Per-Con:パルコン)の開発

コンクリートの新たな適用先として、香り+コンクリートに着目した研究です。芳香性を持った香水コンクリート(Per-Con:パルコン)の開発を進めています。香料成分は有機物ですので、コンクリートの水和反応(硬化する速度や熱量など)、硬化後の特性(強度など)に影響します。それらの影響について、化学的な視点からも検討を進めています。一方で、香りの効果としては、芳香成分により香りが1週間程度しか持続しないもの、数か月持続するものも存在します。どのような条件で香り持続性が、数時間、数日、数週間、数か月になるのか、材料開発、配合設計などから取り組んでいます。バラやラベンダーの香料を使用したコンクリートを養生室に置いておくと、養生室内がたまに良い香りがします。構造部材への適用は難しいかもしれませんが、建材パネルやコンクリートオブジェなどに適用することをイメージして、香りの官能評価も進めています。この研究ではコンクリート工学だけではなく、香り(臭気)評価に関わる学問、人間工学などの異分野連携を通じて、新たな挑戦をしています。

ラベンダー香料から作製した香水コンクリート

ラベンダー香料から作製した香水コンクリート

左:通常のコンクリート、右:香水コンクリート(数字はラベンダー香料の混入比率)

左:通常のコンクリート、右:香水コンクリート(数字はラベンダー香料の混入比率)
香料を入れると、人の感覚にポジティブな印象を与える

天然資源使用の抑制、CO2吸収など環境負荷低減を目指したコンクリートの開発

コンクリートに使用される材料のほとんどは天然資源に依存しています。その天然資源の枯渇化や使用量抑制について、国際的にも課題の一つとなっています。この研究では、コンクリート硬化体を作製するために使用する材料として、天然資源をできるだけ使用しないことを目指しています。また、セメントをほぼ使用しないコンクリートも研究しています。これらは、コンクリート材料として不適とされてきた砂漠砂、自然災害や紛争などで発生したコンクリート瓦礫など様々な廃棄物を有効活用できることも期待されています。この研究の一環として、月面で施工可能な硬化体の開発にも挑戦しています。

左:廃棄コンクリート粉を使用した硬化体、右:月の模擬砂(レゴリス)を使用した硬化体

左:廃棄コンクリート粉を使用した硬化体、右:月の模擬砂(レゴリス)を使用した硬化体
いずれもセメント不使用、水は数gのみ使用、曲げ強度は通常のコンクリートよりも大きい

産業廃棄物などで作製した造粒骨材

産業廃棄物などで作製した造粒骨材
(造粒のため少量のセメントを使用)

スラグ・副産物グループ(SAG)

スラグや産業副産物・産業廃棄物を使用したコンクリートの諸特性に関する研究

近年、天然骨材資源の枯渇化・低品質化が問題視され、採取量が規制される地域が増加しています。それに加え、環境保全や循環型社会のために、産業廃棄物や産業副産物を有効活用する傾向も高まっています。産業副産物の中でも注目されているスラグ骨材を従来の天然骨材の代替品として高置換率で使用することが可能になれば、天然骨材の枯渇化・低品質化への対策と環境保全および循環型社会への寄与度を高めることができると考えています。しかし、スラグ骨材や産業廃棄物の置換率を上げていくと、ブリーディングや材料分離のリスクが増加すること、それに伴う強度や耐久性低下など各種性状に影響を与える可能性があります。本研究室では、高炉スラグ(粗骨材、微粉末)、電気炉酸化スラグ(粗骨材)、琵琶湖から採取した底泥、下水汚泥焼却灰など様々な副産物・廃棄物を利用した研究を進めています。また、各種骨材とモルタル界面の接着状態が破壊過程に及ぼす影響について、非破壊試験法のアコースティック・エミッション(AE)法により破壊メカニズムの解明にも取り組んでいます。再水和による自己治癒効果の検証も進めています。

高炉スラグ粗骨材を使用したコンクリートのスランプ

左:電気炉酸化スラグ粗骨材、右:コンクリートのタンピング試験

非破壊試験グループ(NDTG)

IoTを活用した橋梁モニタリングに関する研究

橋梁の多くは5年に1回の点検が義務付けられており、その数は約73万橋です。このうち、建設後50年を超える橋梁(2m以上)の割合は、2030年に約55%、2040年に約75%と試算されており、人間だけでなく橋梁も(橋梁の方が)超高齢化社会になっています。点検しなければならないインフラ施設は橋梁だけではないため、安心・安全にインフラ施設を使用するためには非常に多くの人とお金が必要になります。この研究では、主として「モニタリング」に焦点を充てています。そのモニタリングのために、できるだけ安価で簡潔に設置、運用ができるシステムを開発しています。実験室レベルでの小型実験から、実際の橋梁を使用した現地計測などでIoTモニタリングシステムの改良、アップグレードを進めています。土木、コンクリートの知識だけではなく、電子工作やプログラミングなどの知識も融合しながら、頑張っています。

左:群馬県内での現地計測(センサ類のほとんどを学生が設置)、右:RC梁の載荷試験

左:群馬県内での現地計測(センサ類のほとんどを学生が設置)、右:RC梁の載荷試験

橋梁用ゴム支承の損傷評価に関する研究

橋梁の上部構造と下部構造の間に設置される積層ゴム支承は、免震対策として多くの橋梁で適用されています。特に、1995年の阪神淡路大震災後に急速に普及していますが25年以上経過しており、近年では、積層ゴム支承の劣化や地震後の破断が多く報告されています。直近の巨大な地震災害である2011年東北地方太平洋沖地震、2016年熊本地震、2024年能登半島地震、全てでゴム支承の破断が報告されています。ゴム支承が破断すれば取り換え判断は容易ですが、破断しなかったゴム支承については、取り換えの判断が困難です。地震後の損傷評価、環境要因などによる劣化評価をするための非破壊試験法がほとんど研究されていません。この研究では、非破壊試験法の一つであるAE(アコースティック・エミッション)法を適用して、ゴム支承内部の損傷や劣化について非破壊評価することに挑戦しています。また、非破壊評価とゴム支承の残存耐震性能の相関についても検討しています。

ゴム支承の載荷試験中のAEモニタリング状況

ゴム支承の載荷試験中のAEモニタリング状況

現地でのAEモニタリングの様子

現地でのAEモニタリングの様子

PAGE TOP