第1講 はじめに――講義方針について
1.講義の目的
・分析技法科目等で使用される基礎的技法や概念を理解すること
・基礎的数学の復習(演習の重視)
2.カリキュラムにおける政策分析技法入門の位置づけ
政策科学部の教学目標は、問題解決型能力の育成にある。この教学目標を達成するためにカリキュラムには次のような3つの特徴がある。
(1)コミュニケーション能力の育成
現実問題を解決するには、相手の考え方を理解し、理解した上で相手に自分の考え方(=対案)を理論的にわかりやすく伝える必要がある。
ディベート能力=基礎演習
語学能力=外国語科目 グローバル化に対応するため、海外の人々とのコミュニケーションが増える
情報リタラシー=情報教育科目 情報化、ネットワークの活用(リタラシー=読み書き能力)が不可避。
(2)専門基礎教育の重視(政策科学基礎科目 政策分析技法科目)
なぜ、単なる基礎科目(一般教養科目)ではなく、「専門」なのか。
政策科学部は「学際性」に富んでいる。が、それは問題解決が一つのアプローチでは不可能だからである。
※学際=いろいろな学問の総合
政治学、経済学、法学等、様々な角度からのアプローチが必要であり、それぞれのコアの部分を身につけるのが専門基礎科目である。
(3)専門領域の選択とその分野の習熟(政策展開科目 専門演習等々)
(1)(2)で身につけた「土台」をもとに現実問題に対処する必要がある。
その際、専門領域として、環境政策、福祉政策、情報政策、地域公共政策、国際公共政策が設定されている。
「政策分析技法入門」はこの中で、(2)に位置づけられる。
1、2回生の間は、(1)(2)をよく勉強して、「政策科学」とは何か、何をやろうとしているのか、ということを考えて欲しい。
政策分析技法科目は、「情報リタラシー」と「分析ツール」という2つに類別され、「政策分析技法入門」は「分析ツール」への導入部分と位置づけられる。
「情報リタラシー」=パソコンを使いこなす力=Web、メール、ワープロ、表計算、デジタルコンテンツ作成・・・コンピュータ入門I、IIほか
「分析ツール」=データをいかに収集、分析するか、データ分析・情報処理の方法
・・・政策分析技法入門、統計学 さらに、データ解析入門、社会調査法、モデルシミュレーション、OR入門(オペレーションズ・リサーチ)
なかでも「政策分析技法入門」は、数学をベースにした科目であり、基本的な手法を勉強する。
分析技法科目等で使用される基礎的技法や概念を理解することが目標である。
文理融合で文系学生にも数学力が必要。
3.政策科学的アプローチの4つの段階と政策分析技法入門の意義
「政策科学的アプローチ」・・・新しい学問ゆえに決まった形はまだない → 明確な形にしていく必要がある
政策課題へのアプローチの具体例(例:介護保険制度、4月から導入)
(1)現状分析:本格的高齢化社会の到来と「介護」の社会化の必要性
「社会的入院」による医療費の増大
人口構造の変化、少子化・高齢化、一世帯あたり人数の減少(大家族、3世代同居から核家族へ)
昔は短命、家族も見る人が多くいた・・・「介護の社会化」
人口の予測・・・ある一定の分析技法によって行う 基礎的なデータ
国立人口問題研究所 http://www.ipss.go.jp/
・・・これがあたるのか?予測はあてにならないか?
どういった方法で予測しているのかを知っておく必要がある。「情報」としてのデータが重要。
(2)論点整理: 誰が負担するか 税(公的な形)か保険(国民負担)か
誰に給付するのか 65歳以上 (40歳でも障害を負った人には給付するべきではないか)
保険給付の対象 家族介護の取扱
介護保険を導入するにあたって、「論点整理」のために審議会が開かれる=何を抑えれば政策にできるか
*基礎演習は、「現状分析」と「論点整理」が中心となる。
(3)政策の確定とシステム(制度)の設計:
政策の方向性を決めていく
保険制度(地方自治体を保険者とする)
負担のあり方(1割;自己負担 残り9割;公的負担(税金):第2号被保険者(40〜64歳):第1号被保険者(65歳以上)=0.5:0.33:0.17)
給付のありかた(在宅サービス;要介護度別 介護施設;特養、老健、療養型)
介護保険制度の設計=厚生省 政策科学部ではある領域でシステム設計がができる力をつける。
(4)モデル構築とシミュレーション分析
四則演算の利用による保険料や給付水準の決定(四則演算の文章題、のようなもの)
保険制度の問題点や維持可能性についてのデータ情報の提供
保険料はいくらか。制度をモデル化。実際の制度がうまくいくのか。
政策分析技法入門は、上記の(1)(4)に有用である。
4.その他
(1) テキスト:使用しない。講義ノートを各回、講義終了後にWeb上に公開するので、必要に応じてプリントアウトすること。
(2) 評価の方法:最終試験のみで評価する。本年度は小テストを行わない。
(3) 関連科目:数学の理解を前提とするすべての科目
(4) 参考文献:「経済経営系・数学概説」 竹之内脩 著 (新世社、1998年発行 1800円)
高知工科大学の「1999年度版基礎数学ワークブック1、2」
(http://www.ele.kochi-tech.ac.jp/inoue/worktop/workhome.html)
(5) 注意事項:講義中の私語、飲食は禁止。また、携帯電話等の電源はOFFに。