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科学研究費助成事業研究紹介

  グローバル社会に貢献できるようになるためには、異なる言語能力や異なる文化背景を持つ人々と協力することが非常に重要です。
 ますますグーバル化が加速する中、本プロジェクトでは、習熟度や母語の異なる英語学習者がどのようにコミュニケーションを行うのかを質的、量的に分析することを目的としています。
本プロジェクトには研究分野の異なる、様々な専門家が参加しており、同じデータを工学、談話研究、認知言語学、社会言語学、心理言語学などを専門とする研究者が多角的に研究を進めています。

【レゴ・タスク1】

 本研究は、情報を持つ指示者が情報を持たない作業者に指示を与えるという課題達成型のデータの分析を通して、参与者がどのように共有知識を形成し課題を達成していくかという基盤化のプロセスを解明するものです。
 こうした研究は、たとえば、外国人旅行者が日本の旅行会社に問い合わせをしたり、逆に、コンピュータ上で問題が起こった際に日本語母語話者が海外のサポートセンターに英語で問い合わせたりといった、情報の非対称性を均衡にするような場面でのやり取りへの応用が可能で、社会的な意義を持ちます。

【レゴ・タスク2】

 母語の異なる複数の英語学習者(ヨーロッパ言語、アジア言語、日本語を母語とする学生)があるイメージを共有しながら、協同で自由にレゴ・ブロックを組み立てる作業に参与し、物語を創造的に生成させるというものです。
 この課題では限られた時間内に合意に至ることが求められるため、「提案する」、「意見を出す」、「根拠を挙げる」などの様々な能動的な言語活動とともに、「譲歩する」、「妥協する」、「賛同する」、「静かに聞く」などの協調的な言語活動が予想されます。これはより現実に即した日常会話の特徴に接近することができることを意味します。
 このような多人数を対象とし、かつ異文化を背景とする者同士の英語での基盤形成のプロセスを解明する試みは、これまでの日本の会話分析、談話分析の研究を見ても未開拓の領域であり、現在の話しことば研究の裾野を拡げるという意義があります。
 さらに近年、グローバル化を背景に、共通の母語を持たない者同士が「共通語としての英語」によってコミュニケーションをする機会が増えていることから、今回構築する会話コーパスは、そうした場面において母語でない言語で人々がどのようにして相互理解を達成するかを知るための資源となります。
 なかでも、短時間で合意形成をすることが必要となるビジネスや医療現場では、こうした能力を育成することが喫緊の課題となります。非英語母語話者同士による合意形成は日本だけに限られるものではありません。
 本研究は、あらゆる地域や場所における意味交渉への応用可能性を念頭に置いており、今後の発展が期待できます。