[佐藤満HomePage]
[「政策科学と政治過程論」目次]
むすびにかえて
かくして政治過程論は政策過程という新しい視座を得ることになった。この新しい政治過程論が政策科学にいかなる貢献を行うかについて簡単に述べてむすびとしたい。
そもそも「政策科学」なる語自体がおそらく定義を要する論争的な語ではないかと思うが、ここではラスウェルの定義をひいておく。彼は「政策科学 ( policy sciences )」を「その時代の政策問題に関係するデータを取りそろえ解釈を与えつつ、政策形成と政策執行の過程を説明することにかかわる学問( desciplines ) (Lasswell, p.12)」と定義している。「政策科学」という語を世に広めたラスウェルの定義から読み取れるのは、政策問題指向の知識と過程指向の知識(Dunn and Kelly, p.10)の合成により政策科学はなりたっている、ということである。
ラスウェル以降の「政策科学」の展開において、決定のための補助技術(松下、147頁)ばかりが目立ってしまった状況があるために、ラスウェルの定義の中の重要な柱として当初から政治過程論による知見が位置付けられていることが忘れられがちである。しかしいまひとたびこの出発点における定義の含蓄を味わえば、政治過程論が問題指向の知識をもとりいれ、内容を豊富化して行くことは、まさに政策科学の探求と軌を一にしていることが理解されるであろう。