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第14回 番組提案に求められるもの(双方向2)

 

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第14回 NHK講師<講義概要>


 今回の講義は、講義を受けている学生が考えた番組提案表の中で加藤さんが注目した6つの案を提案者がプレゼンテーションし、それに対して加藤さんがコメントするという形で始まった。最初のプレゼンテーションはネット炎上についての番組。次は福岡ヤフードームの花火師に迫る番組、3番目はオタク文化についての番組、4番目は期待が高まる高校3年生の陸上選手に迫る番組、5番目は海外協力に燃える女子大生に迫る番組、そして最後はゆるキャラについての番組だった。


 どの番組も構成がしっかりしていて、なおかつ提案者自身の素直な好奇心が伝わってくると加藤さんは感想を述べられていた。
次に、番組を作るときのポイント講座が行われた。その中で、「番組の出発点は自分が面白さや不思議さを感じたものである」、「新聞や雑誌、インターネットなどの後追いでも、視点や切り口を変えれば違う番組になる」、「番組は起承転結で成り立っている」など、プロデューサーの目線から見た番組作りについてお話を伺うことができた。


 最後に、「提案の中で一番大事なのは“ねらい“である。”ねらい“がしっかりしている番組提案ほど人に伝わる」と講義を締められた。

 

<感想>
 今回の講義で一番印象に残ったのは、何度も繰り返されていた“ねらい”という言葉だ。私のイメージだと、番組の“ねらい“というものは製作者が視聴者に感じてほしいことであったが、ただそれだけのものではないようだ。”ねらい“は視聴者に感じてほしいことに間違いはないが、そこには番組提案者の興味や関心、好奇心など、もっと見たい、知りたいと思った事柄も溶け込んでいるものらしい。


 昨年の「クローズアップ現代」のある回で、漢方薬につかう生薬の産地がテーマとして取り上げられた。加藤さんによると、そのきっかけはディレクターの山の散策だったそうだ。大学を出て間もない若手ディレクターが山を散策していると、見たことのない作物が大量に栽培されているのを発見した。気になったディレクターが農家の方に何を栽培しているのかを聞くと、漢方薬の材料になる生薬を栽培していて、かなり儲かっているという話を聞くことができた。野菜や果物ではない生薬がなぜそんなに儲かるのか気になったディレクターが調べを進めると、漢方薬をめぐる覇権争いが世界規模で起きている事実に直面した。その事実を番組にまとめて、昨年の4月に放送したらしい。この話を聴いて私は、加藤さんの「番組の出発点は自分の興味、好奇心である」という言葉の意味を改めて実感した。もし、山を散策していたディレクターが作物に興味を示さなければ、この番組は成り立たず、また、興味を示しても、もっと知りたいという好奇心がなければ生薬の栽培に隠された世界規模の覇権争いは見えてこなかっただろう。自分の見たものに対して素直に興味や関心が持てるということが、ディレクターには必要なのかもしれない。


 また、番組提案のときの“ねらい”を噛み砕いていうと、起承転結になるらしい。「起」で自分が見つけた興味・関心のある事柄に対して現状把握を行い、「承」で背景などを調べて内容に厚みをつける。そして「転」でクライマックスを迎え、「結」で番組の方向性を提示する。この流れは番組だけでなく、プレゼンテーションやディベートなど、何かを人に伝える場でも大切であると加藤さんは言われていた。私もそれは実感している。大学生になってプレゼンテーションを行う機会が増えたが、やはり発表には起承転結がないと説明しにくく、逆に、他の人の発表を聴いていても起承転結がないと何が主張したいのかが理解しにくい。ドキュメント番組も、起承転結である“ねらい”がはっきりしていないと面白い番組にはならないことから、一種のプレゼンテーションなのかもしれないと私は感じた。発表者が画面の中にいるか外にいるかの違いであって、ドキュメント番組とプレゼンテーションの本質は「人に伝える」という面では同じものかもしれない。そう考えると、画面の向こう側だったテレビ番組も、実は意外と身近なのかもしれないと感じる。また自分がプレゼンテーションをする機会があれば、自分の興味・関心があることを追求して起承転結を作り、聴いている人がドキュメント番組を観ているように感じるプレゼンテーションを行ってみたい。


 今回の講義はドキュメント番組を見るときに、番組提案者が何を“ねらい“にしてその番組を作ったのか考えてみたくなる講義であった。皆さんも、”ねらい”を意識して番組を観てはいかがだろうか。

 

記者 立命館大学産業社会学部 榊原功樹

 
 
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