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2007年度研究会報告

第2回(2007.10.19)

テーマ 「グローバル市民社会論と公共性『グローバル市民社会年鑑』をてがかりに」
報告者 高嶋 正晴(産業社会学部・准教授)
報告の要旨

グローバル市民社会論は、冷戦終結前後の東欧の市民社会革命、地球環境問題への認識の深まり、そして、国連を中心とするグローバル・ガバナンス論の隆盛を背景に、まさしく、「下からのグローバル化」として、1990年代後半以来の国際社会において、国民国家を主たるアクターとはしないポスト冷戦秩序、ポストウェストファリア秩序体制の行方を左右する重要な概念として議論されてきた。本報告では、ロンドン政治経済大学院(LSE)の研究所が毎年刊行している『グローバル市民社会年鑑(Global Civil Society Yearbook, 2001~)』に注目し、これを手がかりに、グローバル市民社会をめぐる諸論点を整理し、グローバルな公共性の観点をふまえてグローバル市民社会構想のもつ意義と限界について試論した。

本報告では、まず、グローバル市民社会(論)の隆盛の国際的な脈絡とその歴史的特徴について言及した。国際的な脈絡としては、1989年の冷戦の終結と東欧の市民革命、そして、1995年の国連グローバル・ガバナンス委員会の報告『Our Global Neighborhood』での国連改革のなかでの市民社会の重要性の指摘、2001年の世界社会フォーラム開催および『グローバル市民社会年鑑』の刊行について触れた。続いて、年鑑の主幹編纂母体であるLSEグローバル・ガバナンス研究センターおよびUCLAシヴィル・ソサイエティ・センターについて解説した。

続いて、本報告の本題である『グローバル市民社会年鑑』についてより詳細を見ていくこととし、刊行にあたっての問題意識、M・カルドーをはじめとする編者について、そして、年鑑の内容構成について触れ、年鑑のある種、外形的な特徴を明らかにすることを試みた。次いで、グローバル市民社会概念をめぐる論議のなかで同年鑑をどのように位置づけうるのかを試論した。そこでは、たとえば、同年鑑にみる、グローバル化をめぐる4つの立場およびグローバル市民社会の位置づけの変化について、また、国際NGOの増加や活動分野の変化などから見えてくるグローバル市民社会の現況や表出形態について触れた。これらをふまえて、同年鑑にみるグローバル化概念および(グローバル)市民社会概念の変化と特徴をどう見るか、また、グローバル・ガバナンス論およびグローバル公共性論におけるグローバル市民社会の意義をいかに評価するか、そして、同年鑑を通じて見えてきたグローバル市民社会論のはらむ理論的問題点や課題などについて試論した。

高嶋正晴

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