新任教員FD研修会挨拶(2018519日)

 

 教育開発推進機構長・教学部長の森岡でございます。本学に教員として赴任された皆様に改めて歓迎の意を表します。また本企画へのご出席に感謝申し上げます。

 さて,春学期が始まり5週間から6週間が立ちました。そろそろ本学での授業に慣れ,落ち着いてこられた頃でしょうか。それとも,開講までの準備の貯金がつきて,毎回の授業の準備に追われていらっしゃる頃でしょうか。いずれにしても,毎週90分の授業を3コマから6コマ行っていくことは,けっして簡単なことではなく,それぞれにご苦労されていることと存じます。

 言うまでもなく,大学教育の基礎には研究があり,皆様はそれぞれ立派な研究のご業績をおもちと思います。とはいえ,よい研究は,自動的によい教育,よい授業を生み出すとは限りません。そこには,意識的な努力が必要です。この新任教員実践的FD研修プログラムのねらいの一つは,今後皆さんがそうした努力を行って頂くための手がかりやヒントをお示しすることです。プログラムの中で開かれるワークショップは,皆さんの教室のなかでの経験や,その中で直面されている様々な悩みを相互に交流する場として設定されています。

 さきほど「よい授業」と申し上げました。大学における「よい授業」に必要な条件とは,いったい何でしょうか。大学教育の背後に様々な分野での創造的・批判的な研究があることは当然として,授業そのものについては,私自身は次のように考えています。

 第1は,科目を開いている学部・研究科のカリキュラムを理解することです。現在の大学教育は,以前に比して組織的な性格を強めています。より詳しく言えば,学部・研究科内での科目配置の体系性が高まり,個々の科目や科目群がカリキュラムの中で担う役割が明確化されてきたということです。担当する科目は学部や研究科の教育目標とのどのような関係にあり,それを受講した学生がどんな力を身につけることを到達目標として設定しているのか。これらの点を念頭に置いて授業を行うことが重要になっています。教室内での担当教員の授業設計の自由は最大限に尊重されるべきですが,どんなに巧みな授業でも,科目の位置づけを無視したものであれば,「よい授業」とは申せません。

 第2は,準備と工夫です。準備の大切さについては,多くを述べる必要はないでしょう。工夫という点で特に強調したいのは,学びの動機づけ・習慣づけにつながる工夫を行っていただきたいということです。本学では2016年度から全学生に「学びと成長調査」という大規模な学習状況および学習を通じた達成感の調査を行っており,新入生の9割以上,在校生の半数以上から回答を得ています。その調査では,本学の学生の学びの状況について,多くの積極的側面とともに,授業外での予復習・課題学習や自主的学習の時間が十分ではないという問題が浮上しています。manaba+R等も活用しつつ,広く共有できるような工夫がこのプログラムに参加した皆さんから発信されることを期待しています。

 第3は,教員の側の熱意です。いささか精神論的ではありますが,教員の熱意は学生に伝わります。もちろん,時には,すれ違うことや,空回りすることもあります。しかし,学生は,教員が授業に臨む姿勢をよく見ています。毎回の授業のなかで愚直に学生と向きあうことが,結局は,学生の意欲を引き出す最も確かな方法であるというのが私の実感です。

 いろいろ申し上げましたが,「よい授業」についてはもちろん,他にもさまざまな考え方がありえます。私自身も,毎年様々な失敗を繰り返しながら考え続けているところです。どのように考えるにせよ,「よい授業」とは,カリキュラム,社会の要請,さまざまな設備やソフトの利用可能性などのさまざまな前提や条件のもとで,教室での学生の生きたやりとりを通じて,探求してゆくほかないものです。

 現実には,研究を進め,入試や管理運営上の職務も分担しなければならないという厳しい条件の中で,授業の準備にあてることができる時間は限られています。だからこそ,「よい授業」に向けた努力を,できるだけ効率的に行うことが重要であると考えます。この新任教員実践的FDプログラムは,そのための場として設計されています。こうしてお集まり頂くことには大きなコストがかかっておりますが,本プログラムが皆さんに参加の意義を十分に見いだせるようなサポートや交流の機会を提供できることを願いまして,機構長の挨拶と致します。