QUESTION 真似はダメ?
コピペの表と裏

KEYWORD #知的財産法

みなさんは、学校で「コピペはダメ。きちんと引用しましょう!」と学んでいると思います。でも、真似は本当にいけないことでしょうか?

日常生活の中で、音楽・映画・写真などはインターネットを通じ国境を越えて世界中で流通しています。私たちも日々、小説を読んだり動画を見たりして楽しんでいますよね。これらは法学上「著作物」と称され、著作権法によって保護や利用の整備がされています。著作権法は文化の発展を目的としていますので、真似そのものを禁止しているわけではありません。恋愛をテーマとした類似する小説・映画・音楽などは、世の中に溢れかえっていますよね。では、なぜパクリがいけないのでしょうか?

著作権というのは、実際にはコピーする権利(複製権)・音楽を演奏する権利(演奏権)・画像やファイル等をアップロードする権利(公衆送信権)に代表されるような複数の権利からなっています。この他にも、改変されない権利(同一性保持権)のように、自分の作品を無断で編曲・変更されない権利が認められています。著作権は著作者あるいは著作権利者が「専有」するため、無断で利用することはできません。パクリが許されないのはそのためなのですね。出典を明記することなく本の一節を抜き出してレポートに使ったり、流行りの曲を音源として振付けて踊った動画をアップロードしたりすると、著作権を侵害するという違法行為になります。替え歌も、オリジナルの歌詞を変えているので理論上は著作権侵害です。

現在の著作権法について議論された1960年代には、「コピペ」は一般的な技術ではありませんでした。ところが、デジタル化が進んだ現代では、クリック一つで画像を複製することが可能になり、複製が容易になりました。タブレットにダウンロードした音楽をスマホへ移し替える時にはコピペをしますが、これは複製権を侵害することになるのでしょうか?答えは否、です。なぜなら、自分で楽しむ範囲での複製は無断であっても私的使用という名目で許容されるからです。著作権は強力な権利なので、例えば日常生活に不便をきたすような場合には制限がされます。真似についても、パクリのような丸写しは違法ですが、音源の一部をリミックスして新たな楽曲を作る場合には適法引用として合法とされることもあります。また、著作権には期限があります。多くの作品は著作者の死後70年を過ぎると著作権法による保護の対象外となり、自由に利用できるようになるのです。ですから、古いクラシック音楽を真似ることは必ずしも違法ではありません。

このように、コピペが禁止されているからと言って、真似全てが違法行為なわけではなく、パクリを規制する著作権法には表と裏があります。しかしながら、法学の世界には正解はほとんどありません。著作権法でも、どこまでがセーフでどこからアウトになるのか、その線引きは微妙です。真似を前提として発達してきた領域には、他にも特許(切り餅などの発明)・商標(商品のメーカー名)・意匠(タイヤなどのデザイン)などの「知的財産」があります。権利と制限のバランスを考える学問、著作権法や知的財産法を学んでみませんか?