研究内容


分子の集まり方を制御して
高い機能を創発させる


 材料の性能はその材料を構成する原子の組成・分子の構造(1次構造)だけでなく,原子・分子の集積構造(高次構造)にも強く影響されます。例えば,生体の中では機能分子が集積しており,この分子集合体の構造を精密に制御することで,生体材料は合成材料では実現困難な高い性能・機能を発揮し,生命活動を行っています。合成材料においても,高分子の集積構造(分子の鎖の並び方)を最適化することで,ポリエチレンのようなシンプルな分子から鉄よりも力学的に強い材料が得られます。このように,材料の高性能化・多機能化を考えた場合,材料中における原子・分子の集積構造をいろいろな階層で精密制御(階層的構造制御)することが非常に重要であるとわれわれは考えています。

 「創発」とは部分の単純な総和にとどまらない性質が全体として現れる現象です。材料を構成する原子・分子の世界の微視的領域(ナノメーター領域)から人間の素手で扱えるような巨視的領域(ミリメーター以上の領域)にいたる各階層で構造を制御し最適化する「階層的構造制御」技術を確立して,個々の原子・分子の単なる総和を超越した機能と性能を創発することが当研究室の目標です。

 このような基本的な考え方に基づいて,当研究室では,

  • 分子の集合構造をいかに制御するか?
  • 小さな分子を使って,分子より大きなナノ材料の
    集合構造をいかに制御するか?
  • 集合構造を制御することによって創発する新しい
    機能・性能は何か?

などの研究を行っています。現在進行中のテーマのいくつかを下記に簡単に紹介します。


液晶性金錯体の開発:液晶配向を利用した
発光制御

 金(Au)を分子内に含む化合物は分子間で相互作用が働くと発光します。この相互作用はAurophilic Interactionと呼ばれており,水素結合と同じくらいの強さがあります。このような化合物は分子間相互作用が発現するときだけ発光するので,分子の凝集構造を変えることで分子間相互作用を制御すると,発光特性も変わる可能性があります。実際に当研究室で合成した化合物は,加熱により結晶 → 液晶 → 等方性液体と状態が変わることで発光の色や強度が変化することを明らかにしました。

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この研究については,以下の記事もご覧下さい

R-GIRO活動報告1 >

R-GIRO活動報告2 >

新聞報道 >

英国王立化学会の専門誌(J. Mater. Chem. C)の
裏表紙 >


高分子発光体の開発:白色光を得るために
2種類以上の発光体は必要なのか?

 現在,照明として実用化している白色LEDは,1種類の発光体で白色光をだしているわけではありません。「光の三原色」である赤,緑,青に光る3種類の発光体を使って白色をだしたり,青と黄色の2種類の発光体を組み合わせて白色に見えるように工夫しています。しかしながら,このような白色LEDのスペクトルは太陽光のような自然光のスペクトルとは異なっています。室内照明の場合,従来の白熱電球のような太陽光に似た色が好まれるため,白色LEDでも太陽光のスペクトルに近づけることが課題となります。

 当研究室では,たった1種類の化合物のみで太陽光に似たスペクトルで白色光をだす高分子の開発に成功しました。この化合物は,分子の構造が非常に単純であり,レアメタルや貴金属も含まないため簡単・安価に合成できます。また,柔軟性をもち,薄膜状に成形することも容易であるという特徴をもちます。1種類の発光体だけで白色に光るので,有機LED照明などに利用すると,デバイスの構造をいまよりも単純化でき,デバイス製造プロセスの簡略化・低コスト化・低エネルギー化に貢献できると考えられています。また,天井や壁一面が光る照明装置や,複雑な曲面をもつ照明装置・ディスプレイなどが実現できると期待できます。

この研究については,以下の記事もご覧下さい

新聞報道「白色発光する透明高分子 立命館大が開発,曲面対応」 >
(日刊工業新聞 2017年5月29日付朝刊)


ポリマーロボットの創製

 近年,ロボットの重要性が高まっています。特に,人と共同して作業ができるロボットが求められています。このためには,人とロボットがぶつかっても怪我をすることのない,柔らかいロボット(ソフトロボット)が必要です。このようなロボットの創製を目指して,ロボット用材料の開発を,本学理工学部ロボティクス学科の研究室と共同で行っています。例えば,ロボットの動きを制御するセンサー用の材料として,ひずみ(変形)によって色の変わる材料の開発に成功しました。この材料はゴムのような素材でできており,引っ張って伸ばすと色が変化します。

ひずみセンサー

この研究については,以下の記事もご覧下さい

R-GIRO:先端材料に基づくロボティクス・イノベーション >

引っ張ると色の変わるゴム!(動画) >


金属酸化物ナノ材料の開発と液晶を
利用した配列制御

 ポリオキソメタレートは金属酸化物の巨大分子です。ある単純な構造がたくさん結合して1つの巨大分子になっているので無機高分子の一種と考えることができます。当研究室では,ポリオキソメタレートの一種である大環状ポリオキソモリブデート(POxMo)に着目し,POxMoと液晶分子を組み合わせて凝集構造制御を行っています。当研究室では,POxMoを合成する条件を最適化するとナノメータの空孔が規則正しく配列したナノホールアレイ構造をとることを発見しました。また,有機液晶分子と複合化することで,凝集構造が制御できることも見いだしました。

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液晶を利用した金ナノ微粒子の配列制御

 直径数ナノメーター程度の金ナノ微粒子は量子効果に基づく興味深い物性を示すことから注目されています。われわれは,このナノ微粒子の表面に液晶分子を結合して,液晶の自発的な配向性により金ナノ微粒子を自己組織化することを検討しています。液晶分子を導入することで,一次元や二次元の規則構造を示すことや,界配向規制力により任意の方向にナノ微粒子を配列できることを発見しました。


光応答性液晶の開発とフォトニクス材料へ
応用

 光によって分子の形が変化する化合物(フォトクロミック化合物)を用いて,光に応答する液晶材料の開発を行っています。これまでに,液晶の光応答は従来の電界応答と比べて 10,000 倍も高速であることや高分子液晶でも高速光駆動が可能なことを発見しました。そして,このような現象を光記録・スイッチング・ホログラム記録などへ応用できることを提案しています。また,最近は高分子フォトクロミック材料をMEMS (Micro Electro Mechanical System) 用の材料としても展開しており,可逆的かつ高速に光スイッチング可能な光導波路の作製なども行っています。

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高分子材料化学研究室(堤研究室)|立命館大学

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