立命館大学で学ぶ 金融・経済

日本証券アナリスト協会・日本経済新聞社 協定科目「金融・証券分析の基礎 ~新聞記事から読み解く~」

次世代を担う若者に現実の社会の理解を

2008年から開講している日本証券アナリスト協会・日本経済新聞社協定科目
「金融・証券分析~新聞記事から読み解く~」。
この科目を昨年受講した2名の学生が集い、講義を通してどのような力を身につけたか、
さらにそれを就職活動や将来の仕事にどう生かしていけるかについて語り合った。

  • 松村勝弘
  • 森谷修康
  • 池田倫啓
  • 三好秀和

「金融・証券分析~新聞記事から
読み解く~」を受講するきっかけ

三好 ・・・・・

最初に、自己紹介を兼ねてこれまでに学びをお話しください。

森谷 ・・・・・

私は2011年3月に経営学部を卒業し、経営大学院(MBA)に進学。現在、企業会計コースのファイナンス&アカウンティングプログラムで学んでいます。学部時代は公認会計士を志し、主に会計学を勉強しました。4年間の成果として、公認会計士試験に合格。一度は就職活動し、企業から内定も得ましたが、金融や経営についての実践的な知識やスキルを高めたいという気持ちが膨らんで、大学院への進学を決めました。

池田 ・・・・・

私は今年、経営学部3回生になりました。現在は、ファイナンスについて学ぶゼミに所属し、コーポレートファイナンスの基礎理論やその分析手法を習得しています。また2回生の9月からカナダのアルバート大学に留学し、国際感覚や語学力も磨きました。

三好 ・・・・・

お二人は、2010年度に、日本証券アナリスト協会・日経新聞社協定科目「金融・証券分析~新聞記事から読み解く~」を受講されました。この科目を受講した理由を聞かせてください。

森谷 ・・・・・

とにかく受講生が多く立ち見がでるほど。数字を読み解く会計だけでなく、実践的な経営にも触れてみたいと思い、4回生の時、「金融・証券分析~新聞記事から読み解く~」を受講しました。もともと自分自身が経営手腕をふるうような仕事に関心を抱いていましたが、この講座を受講して、その思いがいっそう強くなりました。

池田 ・・・・・

私がこの講座を受講したのは、2回生の時です。以前からファイナンスに興味をもっており、講座名を見てすぐに「おもしろそうだな」と思いました。

三好 ・・・・・

昨年は590名の登録で迷惑をかけたので、今年は200名に制限しています。でも、池田さんのように2回生で受講する人は、多くありません。講義は難しくありませんでしたか。

池田 ・・・・・

1回生の授業は基礎科目が中心で、ファイナンスについての専門知識はほとんどありませんでした。講義を理解するための前提となる基礎的な概念や理論を知らなかったため、最初は苦心しました。とりわけ日経新聞社の記者の方が講師となって進められる講義は、話題が多岐にわたり、ついていくのが大変でした。一方で、基本の知識不足を補ってくれたのが、三好先生をはじめ大学の先生による理論的な講義でした。教科書を復習するなど自分でも勉強し、ファイナンスの枠組みがわかるようになるにつれて、視界が開けるように講義内容がわかるようになって…。そうすると、がぜん講義がおもしろくなりました。

三好 ・・・・・

ファイナンスの枠組みを理解すると、実社会で経済がどのように動くかが見えてきます。それまでとまったく違う視点で世の中の流れを見定めることができるようになる。それがファイナンスや金融のおもしろいところです。

新聞を読み解き、
自分で考える力を養う

三好 ・・・・・

この科目を受講すると、ファイナンスに関する専門的な知識が身につくだけでなく、日経新聞を読み解き、自分で考える力も養われます。新聞の読み方は変わりましたか。

池田 ・・・・・

記事に書かれている事実について、より深く洞察できるようになったと感じています。例えば、ソブリン問題や財政危機といった問題が取り上げられた時、そうした事態の背景には何があるのか、あるいは国債問題が現実のものとなった時、日本はどのような経済的な影響を受けるのか。ファイナンスを学んだことで、物事の背景や影響までが見えてくるのが、おもしろいですね。

森谷 ・・・・・

同感です。実社会で起こっていることと授業で学んだ金融の理論や枠組み、また株価などの数字と企業の経営実態を結びつけて考えられるようになりました。資格取得のための参考書を読むだけでは得られない実践的な力がついたと実感しています。

松村 ・・・・・

授業で学んだことと実社会の経済の動きをつなげて考えられない学生は少なくありません。私の講義の大学院の学生の中にも、「基礎理論の意味は、そういうことだったんですか」と得心する人が多いですね。例えば、株価は景気のバロメーターです。株価の動きを読み解くことができれば、社会全体に対する理解の仕方も変わります。学部の学生の時からこのような視野を大きく広げられる講座を受講することは魅力ですね。

三好 ・・・・・

たとえば、ファイナンスのような専門的な内容はどこかで学ばなければ、決して培うことができません。しかもなるべく早くに学ぶことが重要です。たとえば、日本経済新聞の証券欄を読んで世の中の動きを理解し、そこから自分自身の考えを構築していく力は、就職活動にも、また将来、どんな仕事に就いたとしても、大きな糧になるものです。学ぶのに遅いということはありませんが、20歳で学ぶのと40歳で学ぶのでは20年間の空白があります。日本経済新聞の証券欄を20年間読み飛ばすのはあまりにもったいない。もし金融に関わる道を志すなら、新しい金融商品や分析手法が続々出てきます。金融の世界では、知識は時間とともにすぐに陳腐化してしまいます。どこかの段階でファイナンスのフレームワークを身に着けて基盤をつくることが必要です。その上でずっと世の中の動きを見続け、勉強し続けなければなりません。

高い問題意識をもって
金融を学ぶ

三好 ・・・・・

講義では、毎回学生にコミニュケーションペーパーという名の白紙を配布し、講義終了後を講義内容のノートとして提出してもらい、すべてチェックし、最もよくまとまっているノートをコピーして、次の講義で皆に配っています。他の学生がどのようにノートを取っているのかを知ることも、いい勉強になるはずです。私たち教員にとっても、ノートをチェックすることで学生が講義内容をきちんと理解しているか、また教員の意図が伝わらなかったところはどこかを知ることができます。よくできたノートを見た感想はいかがでしたか。

池田 ・・・・・

とても参考になりました。いいノートに目を通すと、講義内容をよりスムーズに理解できます。自分のまとめ方の弱点も、他の人のノートを見て初めてわかりました。

松村 ・・・・・

ノートには、やる気や意識の高さといった、学びに対する姿勢も如実に現れます。大学院に進学した森谷さんは、今それを実感しているのではないでしょうか。

森谷 ・・・・・

はい。とりわけ社会人の大学院生の学習意欲の高さには、驚かされます。大学院では、ほとんどの授業が10名を程度の少人数での受講です。授業中は社会人学生を中心に質問や意見が飛び交い、ただ先生の話を聞いているだけだった学部時代の授業とはまったく違う熱気に満ちています。「『参加型の授業』とは、こういうことか」と衝撃を受けました。

松村 ・・・・・

発言が活発だと、それだけ授業の質も上がります。教員も尋ねられると、より深く解説するし、「これはまた別の機会に説明しよう」と考えていたことも質問に応じて披露することになるからです。

森谷 ・・・・・

質の高い学習をするためには、自分自身も積極的に授業に関わっていかなければならないんですね。その自覚が芽生えたことで、それまで受け身だった私自身の学習姿勢が大きく変わりました。

三好 ・・・・・

社会人学生の中には、一部上場企業で働き、組織の中心となって経営企画や経理の仕事にバリバリ取り組んでいる30~40歳代の方も少なくありません。実践を積んでいる分だけ、レポートのまとめ方やプレゼンテーションの方法も、社会経験のない学生とはずいぶん違うことでしょう。

森谷 ・・・・・

社会人学生のレポートやプレゼンテーションは、専門外の人や詳しく内容を知らない人でもよく理解できるよう工夫が凝らされています。私のレポートは、他者の意識していない自己満足なものだったと気づかされました。

松村 ・・・・・

仕事では、社内の他部署の人や顧客に理解してもらうために資料を作ったり、プレゼンテーションしなければなりません。授業のためではなく、「相手に理解させるため」という視点が自然と生まれます。ビジネスに生かすために学んでいる社会人学生と卒業したばかりの学生との違いは、そこにあります。問題意識を持つと、学び方は大きく変わります。すばらしいロールモデルを身近に見られるというのは、将来を考える上でも得難いことだと思いますよ。

就職に生かす
金融・ファイナンスの素養

三好 ・・・・・

本講座は、就職に役立つようなプログラムにしていきたいと考えています。お二人は、将来の進路について、どのように考えていますか。

森谷 ・・・・・

公認会計士試験に合格し、監査法人に勤める道も考えましたが、この講座を受講して、「経営の結果」を判断する会計ではなく、自ら経営に参画するような仕事に挑戦してみたいという気持ちが強くなってきました。将来は、事業会社の経営部門で働くことが、今の目標です。授業を通して身につけた「数字」を読み解く力や市場に対する分析力を生かしたいと思っています。

池田 ・・・・・

カナダに留学中、中国からの留学生と親しくなり、その優秀さに驚いたことをきっかけに、アジアに目を向けるようになりました。帰国後、インドネシアに短期留学し、さらに今秋、台湾にも赴く予定です。将来は、日本だけでなく、アジアのマーケットでビジネスを展開する企業で、金融に関わる仕事に就きたいと考えています。投資銀行や生命保険会社、商社など多様な分野を視野に入れています。この夏、ゴールドマン・サックス証券やモルガンスタンレー証券のサマージョッブにも参加できたのは先生の授業のおかげです。

三好 ・・・・・

立命館の学生は優秀です。池田さんは早く気付いただけではなく自発的に努力し夢を実現しようとしている。金融やファイナンスの専門知識を備えていると、その分だけ選択肢が広がります。実際の投資に関わる仕事のほか、企業のIR部門で、投資家との関係を構築するといった仕事もあります。また例えば、非上場の企業に投資して上場させたり、経営の行き詰った企業を立て直し、再上場を図るといった事業再生に関わる仕事もあります。世界を舞台に、スケールの大きな仕事に携わることのできる非常に魅力的な分野です。

松村 ・・・・・

投資家という立場から市場を分析したり、投資家にアドバイスするプロフェッショナルになる道もありますね。またM&Aを仲介する企業などでも、金融やファイナンスの専門知識を持った人材が求められています。

三好 ・・・・・

金融やファンナンスの専門知識を身につけたバロメーターともいうべき資格が「証券アナリスト」です。多くの企業で認められており、就職活動する際の心強い武器になります。また国際的にも通じる資格なので、世界を舞台にする企業で働く上でもぜひ取得をお勧めします。将来に備えるという意味でも、3回生だけでなく、2回生から積極的にこの講座を受講してほしいですね。

松村 ・・・・・

実際、経営に関する専門知識をしっかり身につけた学生は、就職率も高いという結果が出ています。とりわけ大学院の会計を専門にしたプログラムの学生の就職結果を見ると、それが歴然です。企業は専門性や即戦力を求めています。

池田 ・・・・・

私はカナダ留学中に、コロンビア大学で証券アナリスト試験を受験しました。第一次試験の3科目のうち、「ポートフォリオ・マネジメント」と「経済」の2科目に合格。いずれ、残りの「財務分析」も受験するつもりです。

三好 ・・・・・

金融知識を身につけることは、自分の適性に合った企業や、将来性のある企業を見極める上でも役立ちます。就職難と言われる今、「どこでもいいから入りたい」と焦る学生がたくさんいますが、それでは結局のところ自分に合った企業を見つけることはできません。自分が「企業を選んでやるんだ」という視点で就職活動に臨むことが重要です。企業の経営や事業の実態を見る目を養えば、採用試験でも「御社で私はこんな仕事がしたい」、「こんな役割を果たせる」と自信を持って語れるようになります。それでこそ企業にも必要とされるのです。

松村 ・・・・・

そのためにも文系・理系にかかわらず、受けてほしい講座ですね。

講座を通して将来の糧を得る

三好 ・・・・・

最後に、後輩の学生にメッセージをお願いします。

森谷 ・・・・・

この講座では、日経新聞社の方から直接指導を受けられるなど、実際に働く人から新聞の読み方や社会の動きについて教わることができます。机上を超えて、企業や社会の実態を把握でき、新しい視点を自分のものにできる絶好の機会です。ぜひ受講してみてください。

池田 ・・・・・

金融に関する基礎知識を体系的にバランスよく学ぶことができるだけでなく、新聞を読みこなす力が身につきます。証券アナリスト資格取得に挑戦できるなど、将来につながる糧をたくさん得られる講座です。

出席者プロフィール
松村勝弘
立命館大学大学院
経営管理研究科
研究科長
教授
松村勝弘
三好秀和
立命館大学大学院
経営管理研究科
教授
三好秀和
森谷修康
経営管理研究科
企業会計コースファイナンス&
アカウンティングプログラム
1回生
森谷修康
池田倫啓
経営学部国際経営学科
3回生
池田倫啓