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総長座談会 学生座談会 「金融・証券分析」の基礎〜新聞記事から読み解く〜 エクステンション講座
立命館大学とファイナンス−金融から世の中を感じる−
座談会風景
「投資ファンド」、「ファンドマネージャー」―近年、テレビや書籍でよく取り上げられる言葉なので、一度は耳にした人も多いのではないでしょうか。ファンドは、投資家からの資金を集め、株式などへ投資を通じて利益を上げることを使命としています。今回は、「生き馬の目を抜く」と表現されるほど流れの激しい金融界に飛び込もうとする学生二人に登場していただき、立命館大学で学んだ「金融」について語っていただきました。
 
立命館大学大学院 経営管理研究科教授 三好 秀和(みよし ひでかず)
 
 
立命館大学 経営学部教授 松村 勝弘(まつむら かつひろ)
 
 
経営管理研究科2回の安達充洋さん
 
 
立命館大学 経済学部経済学科 ファイナンス・情報・インスティテュート 2回生 藤井 真太郎
 
 
 

金融との出会い

三好 まず初めに自己紹介を兼ねて、いままでの学びや活動についてお聞かせください。
 
藤井 経済学部経済学科ファイナンス・情報・インスティテュート2回生の藤井真太郎です。そもそも何故金融界に興味を持ったのかというと、私の場合はテレビドラマがきっかけでした。「ファンドマネージャー」という仕事を取り上げたドラマだったのですが、資金を運用する責任やスピード感あふれるファンドマネージャーの世界にとても魅力を感じたのです。そして、進路を決定するときには、ファイナンスについて専門的に学びたいとの思いがより強くなっていたので、ファイナンスに特に力を入れている立命館の経済学部を選びました。入学してからは、将来、運用の仕事に就くための具体的な取り組みの1つとして、「証券アナリスト」の資格取得を目指しての勉強に取り組んでいます。現在は一次試験として課せられた3科目、経済・財務分析・証券分析全てに合格しているので、今年6月にある二次試験の突破を目指しているところです。
 
安達 経営管理研究科専門職学位課程2回生の安達充洋と申します。私が運用業務に興味を持ち出したのは、アカウンティングスクールにて会計の勉強をしていたときです。アカウンティングスクールでは会計以外の授業も受講することができたのですが、三好先生や松村先生が担当されている運用系の授業を受講した結果、今までの会計の学習が運用というものに非常に役立つという事を教わり、運用というものに興味を持ち始めました。立命館のアカウンティングスクールでは、教授陣がビジネスの第一線でご活躍されている一流の方達ばかりでしたので、とても濃厚な勉強ができたと思います。教授と経営者、二つの肩書きを持つ方も多いので、実社会に即した勉強ができました。私はMBAを取得することができたので、来年度からはいままで学んだことを存分に活かしたいと考えています。
 
松村 藤井君は来年度より私のゼミに来てくれることになっています。ファイナンス・情報・インスティテュートを立ち上げたときは、「マネー、ファイナンス」が世間の耳目を集めている時代でした。ファイナンス・情報・インスティテュートの学びと証券アナリストの内容はとてもリンクしている部分があります。彼のように実際に証券アナリストの試験を受験し、合格していることは、授業の内容のより高度な理解の助けにもなりますし、実社会に出て行く上で大きな武器になるのではないでしょうか。
 
安達 確かにそうですね。アカウンティングスクールでも、藤井君のように証券アナリストの知識があれば、より理解が進むのでないかと思った場面がいくつかありました。アカウンティングスクールで会計を身につけ、それと同時にファイナンスの知識も習得すれば、実社会でより役に立つと思います。
 
三好 私も、会計とファイナンスの知識、両方をしっかり身につければ鬼に金棒だと感じます。お二人とも運用に興味を持たれているようですが、運用はとても大きな可能性を秘めている仕事なのです。例えば、現在の日本には1500兆円の金融資産が存在しているといわれています。金融資産はタンスの中に置いているだけでは、全く価値を生み出しませんが、世の中にどんどん回していくことで、企業活動を活発にするなどのプラスの効果が生まれます。仮に、その金融資産を1%の利回りで運用した場合どうなると思いますか。たった1%で運用するだけで、15兆円もの運用益が挙がるのですよ。今の日本の消費税の税収はおよそ10兆円です。それを聞けば、運用というものの可能性を感じていただけるのではないでしょうか。
 
安達 大きな額になればなるほど、運用はスケールメリットを享受することができますね。私が来年よりお世話になる信金中央金庫も、地域金融の担い手である信用金庫の中央金融機関として地域金融の発展に大きな使命を持っております。全国の信用金庫の預金残高の合計は113兆円ほどあると聞いたのですが、それらを安定運用することで、それぞれの地域の発展に寄与することができればなと感じます。
 
藤井 私は将来、そのような運用の仕事につきたいなと考えています。アナリストとしての仕事の魅力というものはどのようなものがあるのでしょうか。
 
三好 アナリストの魅力は、何と言っても企業のトップに直接会うことができることです。アナリストのミッションは投資家の投資判断の材料となる企業のレポートを書くことですから、会計などの数値情報の分析だけではなく、実際に工場に出向いたり、トップにインタビューを行ったりしてレポートを完成させます。実務の世界を肌で感じられるところが、アナリストとしての大きな魅力です。
 
松村 そうですね。金融業界はさまざまな業界との関わりがあります。銀行には大企業から中小企業まで、さまざまな取引先が存在しています。つまり、日本全体が見える仕事であると言えるのではないでしょうか。また、運用の仕事は東京がメインです。東京の金融街でないと感じられない雰囲気というものも、もちろんあります。東京こそが世界の金融とつながっていると言えますね。ファイナンス・情報・インスティテュートでは「ホンモノ」を知るということから、毎年東京証券取引所の見学会を開催しています。学生の頃から金融界の雰囲気に触れるというのはとても重要なことです。
 
安達 雰囲気といえば、大学院において学部生と社会人学生との意識の差に驚かされることが多くありました。一般的な学部生と比較してみても、出席や発言などにおいて社会人学生の意識の高さは際立っています。一旦、社会に出てふたたび学びにこられる社会人の方々は、こうも意識が高いものかと驚かされました。私自身も、そのような社会人の学生の方から多くの刺激を受けました。
 
三好 雰囲気を感じるということはとても大切なものです。現在、大学院の学生を東京の運用会社にインターンとして派遣しています。MBA取得者や院卒者しかいないような環境に揉まれる事はとても意義深いものです。私自身も運用会社で仕事をしていた経験があるのですが、運用会社で働くことでお金のグローバルな流れを肌で感じられることができました。座学で学んだことを実際にアウトプットする場を、学生にもっともっと提供できたらなと考えています。
 
藤井 「場」という点では、立命館大学のエクステンションセンターの充実はとても魅力的です。私が証券アナリストの勉強を行っていたときには、学内での講座がなかったのですが、今年から新設されるということで、よりアナリストへの興味を持ってくれる学生が増えて欲しいと考えています。証券アナリスト試験は1次試験、2次試験とある関係で、全て合格するまである程度の時間がかかってしまいます。ですから、受けようと考えている人には、より早く証券アナリストに興味を持ってもらえればいいなと感じています。
 
三好 私も実は検定会員です。運用会社では証券アナリスト資格をもっているのは常識になっています。運用会社が業界団体に提出する資料に証券アナリスト資格をもつ検定会員が何名いるか統計資料があるくらいです。藤井君が言うように証券アナリスト試験を合格して検定会員になるには時間がかかります。1次試験、2次試験もあるからです。でも、私は学生のときに2次まで合格しなくても、1次試験に合格するだけでもすばらしいと思います。金融機関に勤める私の友人で1次試験に合格したら支店から本部に人事異動になった人もいます。就職して仕事が忙しくなってから学ぶのではなく学生の間にじっくりと学ぶべきです。証券アナリスト試験には証券分析のほかに、経済、財務分析があります。ミクロ、マクロなどの経済学や会計、財務分析などの大学の科目との関連性もあるので、能力証明として資格をとっておくことは就職のときにアピールできる有力なポイントになるでしょう。
 

立命館とファイナンス

三好 金融に興味をもってもらえるように、今年四月より日本経済新聞社と日本証券アナリスト協会からの協力を得て、ファイナンス・情報・インスティテュート・経営学部特殊講義「金融・証券分析の基礎−新聞記事から読み解く−」を開講します。ファイナンスはとっつきにくい分野です。しかし、もっとも、現実に近い分野の1つでもあるのです。理論を理論として学ぶのではなく、実際の現実はどうなっているのか学んでほしいと思います。日本経済新聞社より日本経済新聞をご提供いただき、学んだ理論をどのようにして日経新聞で使うのか、読み解いていくコツをやさしく学べるような内容としていくつもりです。なぜ日本のビジネスマンが会社から日経新聞を読むようにすすめられるのかから始まり、証券・金融欄という読み飛ばされがちな記事をしっかり読み取れるようになる授業を行う予定です。証券・金融欄は、根底となる金融知識がないとなかなか読み取ることができません。今のうちからしっかり日経を読み込むことは、実社会に出ても活きてくるはずだと確信しています。今回は日本経済新聞社やアナリスト協会から講師も派遣してもらう予定です。
 
安達 私は日経新聞を学部生時代より読んでいました。他紙にはない経済の圧倒的な情報が、勉強していく上で大いに役に立ちましたね。
 
松村 日本のビジネスマンがなぜ日経を読むのか。その理由は、記者がおよそ1500名もおり、情報量で他紙を全く寄せ付けないところにあります。1.2回生時より日経を読む習慣をつけることで、教養が身につくだけでなく、就職活動などにもメリットがあるのではないでしょうか。今回の特殊講義で経済についてのモノの見方を鍛えて欲しいと思います。
 
三好 就職してから新聞を読まされるのではなく、自分の就職したい企業がどのような経済・競争環境下にあり、将来どの方向に進んでいこうとしているのかを見極めて企業と接してもらいたいものです。そうすれば一味違った志望者になれる。
 
藤井 私は、日経新聞のビジネスデータベースである、日経テレコン21にはとてもお世話になっています。新聞・雑誌記事や企業の情報をオンラインで閲覧することができるので、授業の補足や証券アナリストとしての情報収集にとても役立ちました。また、ファイナンス・情報インスティテュート専用施設である「SCDR−StudentCyberDealingRoom」も魅力的な設備の1つです。SCDRとは立命館大学におけるファイナンス・情報分野の最先端研究施設のことなのですが、この端末で世界各国の企業情報も入手することができる為、日経テレコン21と合わせて使用すれば、とても有益です。
 
安達 たしかにそうですね。日経テレコン21や社会科学情報検索システムでは研究者レベルの情報まで手に入れることができるので、大学院の学びにはとても役立ちました。日経テレコン21やSCDR、その他膨大なオンラインデータベースなど、立命館大学には素晴らしい情報ツールが存在しています。学部生、院生問わずに利用可能な点は、他大学と比較してもとても恵まれています。
 
三好 日経テレコン21やSCDRを合わせて使用することで、研究者並みの情報を手に入れることすら易しいものです。しかし、立命館の学生、特に金融の勉強に携わっている学生でも、存在を知らなかったり、まだ完全に使いこなせなかったりしているように思います。自らの知識のレベルアップのためにも、是非積極的に利用して欲しいと思います。
 

進路としての金融

三好 経済学部や経営学部の学生であったとしても、金融の勉強はなかなかすぐにはモノにできません。複雑な流れがあったり、数学的思考を要したりするので、苦手とする人も多いようです。しかし、みんなが弱いところを勉強すればとても大きなメリットがあると思うのです。時間をかけてじっくり勉強することが大切です。安達君や藤井君の考え方はいかがですか。
 
安達 確かにそのように思います。金融知識を身につけることは楽ではないですが、勉強すればするほど自分の糧になるものだと思います。ただ漠然と勉強するだけでは大変なので、ファイナンシャルプランナーや、さらには証券アナリストなどの資格試験を1つの目標とするのもいいのではないでしょうか。金融は日本の全ての産業に関わっているとても重要なものです。全てに共通する分、モノにしたときには大いに役立つと思います。
 
藤井 私も安達さんと同じ考えです。証券アナリストの資格を勉強していく中で、同時に授業の理解がどんどん進んでいくのを実感していました。先に松村先生がおっしゃったように、ファイナンスインスの授業と証券アナリスト試験は全く別物ということではありません。日本証券アナリスト協会発表の合格に必要な勉強時間は1次、2次合計で300から400時間です。低回生の時間のあるうちから取り組むことで、大きな効果があるのではないかと思います。
 
松村 大学での学びや資格試験の勉強を行い、知識が増加すれば、いっそう周りの事象について興味が湧いてくるようになります。そんなプラスのスパイラルに入り込めば、一層勉強にも身が入るのではないでしょうか。多くの知識を得ることで、幅広い視点が身につきます。よく学生に言うのですが、「大局から物事を見下ろせる視点」を大学生活で得てください。それは幅広い知識、見聞によって体に染み付くものです。
 
三好 藤井君はあと二次試験だけですね。アナリスト協会は東京だけではなく、大阪でも企業の社長を招いて企業説明会を行っています。工場見学会や講演会もありますから積極的に参加するといいですよ。安達君は信金中央金庫のフレッシュマンですね。これからは地方の時代です。地域に根ざした金融機関の役割は重要です。地域金融のあらたな役割を創造する志をもってがんばってください。
 

金融という「道」

三好 いままでのお話をまとめて、お二人から学生へのメッセージをお願いします。
 
安達 これからの進路を考えたとき、やりたいことがわからない、と言う学生も多いと思います。そんな人こそ、金融業界を考えてみてください。金融は日本の全ての産業と密接に関わりあっています。また、何事もきっかけが重要であると思います。私の場合はアカウンティングスクールで受けた授業こそが、自分自身の進路を決定するきっかけでした。アカウンティングスクールでは、学部時代とは比べ物にならないほど高度な勉強をすることができました。どこの道へ進むことが自分の可能性を広げられるのか、一度真剣に考えてみてください。
 
藤井 とっつきにくかったり、みんながやっていないことをやるのがとても大切だと思います。私の場合はそれが証券アナリストという資格でした。証券アナリストの資格試験は他の難関資格に比べると、合格率が低いわけではありません。つまり、コツコツ勉強することで必ずモノにできる資格であるということです。勉強を進めることで、一層経済への興味を持つことができましたし、将来の進路も具体的な方向性を決めることができました。早くから自分自身がやってみようと思うことに取り組めば、自ずと道が開けていくように思います。がんばってください。
 
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