1980 関西医科大学医学部医学科 卒業 1985 関西医科大学大学院医学研究科微生物学専攻博士課程 単位修得 1986 医学博士(関西医科大学)
1983年の大学院3年生在学時に、初めて国際学会で口演発表を行いました。今にして思えば、この学会参加がその後の研究者としての人生を歩む契機となったことは疑いもありません。学会主催の晩餐会で、たまたま隣に座ったWHOの感染症研究部部長(全くの初対面)が私の発表内容に興味を持った縁で、フラビウイルス(例えば、小頭症の原因となることでリオオリンピックの前に騒がれたジカウイルスはその仲間)学の分野では、その当時世界をリードする研究を次々と発表していた英国オックスフォード大学のPorterfield教授に紹介してもらうことになりました。その後は良い方にばかり話は進み、幸いにも難関で知られる英国国費留学生試験にも合格し、1984年から1986年までオックスフォードで研究生活を送ることができました。 1986年にいったん関西医大に帰学後、1988年には博士研究員として、「研究テーマへの想い」であげたCrick教授が学生のWatsonとDNA二重らせん構造を発見したことで有名な、ケンブリッジのMedical Research Council分子生物学研究所に職を得ることができ、現在にいたる分子生物学研究を開始しました。
調節性非コードRNAによる感染性制御遺伝子、がん関連遺伝子の転写後性発現制御機構の解明
ヒトゲノム・トランスクリプトーム解析の結果明らかになったタンパク質非コード性RNAが有する遺伝子発現制御機能の分子細胞生物学的研究とその成果に基づく創薬応用です。
生体における遺伝子情報の伝達は、「DNAがコードする生命情報は、RNAを介して機能分子であるタンパク質に写し取られる。」とする一方向性の流れとして、分子生物学の中心命題に位置づけられてきました(Crick, F.H.C., Nature, 1970) 。この中で、RNAはタンパク質を生み出すための単なる設計図とみなされてきましたが、ヒトゲノム研究の結果、新たに見出された調節性非コードRNAは、この見方を覆し、RNAが独立した機能分子として作用することを示しました。21世紀科学により得られた主要な成果の一つであるこの調節性非コードRNAを研究対象とし、私の研究室では作用機構を明らかにし、その成果を臨床応用することで、RNA医薬という新たな創薬分野の開発を目指しています。
自分が目指す目標に向けて十分な準備をする
一回しかない人生ですので、後から振り返って、後悔することがないようにしてください。そのためには、やはり目的意識を持ち、自分が目指す目標に向けて十分な準備をすることが必要かと思います。私の場合、第一には資格を得ることでした。今から振り返って考えれば、いささか不純にも思える動機ではありましたが、やはり生活を安定させることは、どのような道を選ぶにしても、まず充たしておくべき必要条件です。その上で、自分が目指す目標に向けて、道を切り開けば良いかと思います。 それにあたっては、やはり、君のことを知り、的確な助言を与えることができる知人や恩師を大切にすることが大事です。あまり好きな言葉ではありませんが、最近の学生世代を表現する言葉として、「草食人間」という表現があります。内向的な性格程度の意味でしょうか。これから、自らの人生を切り開く意欲に燃える君たちには、あまり内向的になることなく、努めて人と交わり、なるべく知己を多くすることを勧めます。