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617 -  宇宙のロマンに魅せられて。世界最先端「イプシロンロケット」の開発に携わる

宇宙のロマンに魅せられて。世界最先端「イプシロンロケット」の開発に携わる

南 海音子 さん(1999年 理工学部卒)

立命館大学理工学部を卒業後、NASDA宇宙開発事業団。現 JAXA 宇宙航空研究開発機構)に入社。現在は、高性能と低コストの両立を目指す新時代の固体燃料ロケット「イプシロンロケット」の電気系統のシステム開発に従事。イプシロンロケット開発チームの一員として、2013年9月の打ち上げ成功に貢献する。

  • No.617
  • 2014年3月19日更新
 小笠原諸島の雄大な自然に囲まれて育った。「夜空を見上げれば、真っ黒な空にたくさんの星が輝いていて、キレイだなぁ…って。星が大好きだったんです」。幼いころ、テレビで放映された探査衛星ボイジャーの特集を見て感動し、映画『スター・ウォーズ』を見ては、宇宙への思いが膨らんでいった。だが、高校生になった頃には、宇宙に携わる仕事は狭き門だと分かり始める。自分には手の届かない世界だと思い、諦めの気持ちが強くなっていった。

 就職活動を始めた大学3回生の頃、転機が訪れる。漠然と、公務員を目指そうかと思っていた時、膨大な求人情報のなかから、NASDA(現JAXA)の募集記事が目に飛び込んできた。「体の中から、湧き上がってくるものがありました。やっぱり、宇宙への憧れを捨てきれなかったんですね。そこから、NASDAを目指して勝負しました」。1999年春、晴れて憧れのNASDAに入社。入社試験では、大学の公務員講座や、工学の基礎から専門までの授業を真面目に学んでいたことが大いに役立った。



 入社後に配属されたのは、ロケットに搭載する電子機器の開発だった。ロケットが飛んでいく方向を計算・制御したり、地上に飛行データを送信したりするなど、必要不可欠な重要な機能である。だが、思い描いていた華やかな世界ではなかった。初めて臨んだ打ち上げ(H2ロケット8号機。1999年打ち上げ)は失敗に終わり、仕事の内容は難しすぎてよく分からない。初めの5年は、仕事を覚えることに必死だったという。「特に、ロケットの打ち上げ前になると、忙しさで目が回ります(笑)。朝から晩まで現場の作業に立ち会いながら、報告書等必要な資料もつくり…体力が無いと続かないですね」。それでも南さんを突き動かしたのは、ロケットが無事に打ち上がった時の達成感だった。打ち上げ前の心地よい緊張感と、凛々しく飛んでいく姿。それを見て喜ぶ子ども達の顔を見ると、何度でも「また頑張ろう」と思えた。最近では、2013年の9月に、イプシロンロケット試験機(初号機)の打ち上げに大成功した。地元からの暖かい声援が何よりも嬉しかった。

 南さんの原動力になっているものが、もうひとつある。それは、「女性技術者としての誇り」。「男性だけでは、研究や開発は上手くいかないこともあると思うんですと、南さん。「男性は時に飽き性なところがありますが(笑)、女性は忍耐力があるので、粘り強く続けられます。ロケットの打ち上げという失敗が許されない場では、繰り返しの確認や、細かい点検が必要です。女性の粘り強さや細やかさが活きてくると思います」。これから社会に出ようとしている“理系女子”たちには、研究や開発に暗いイメージを持って欲しくないという。「男性が多い職場でも輪に入ってしまえば、とても居心地が良いですよ。女性が少ないからこそその特性が生きるし、わりと自由に働ける環境があります。だからこそ、女は気を強く持たないと!!」。男性と女性では、視点や得意分野が違う。“それぞれの特性を活かしてこそ、良いモノづくりができる”というのが、南さんの実感だという。


 そして、何より大切なのは、シンプルに「好き」という気持ちだったと話す。「きっかけなんて、ただの興味や些細なことでも、何でも良いと思うんです。幼い頃からずっと私の根底にあるのは、宇宙への憧れ。今でも、宇宙に関するニュースや衛星の観測写真を見ていると、ワクワクします」。就職活動の時も、素直に「好き」という気持ちをぶつけた。「今でこそ、ロケットを通じて少しでも社会貢献したいなと思いますが、そんな風に思うようになったのは、30歳になった頃」。「就活のときは、自分を主役にして、“好き”の気持ちを伝えてみればいいんじゃないでしょうか。好きだから、こんなものをつくりたい、こんな社会になるように頑張りたい…など。入社後に感じた細かいギャップなんて、そんなこともあるさと気になりませんから」。今後は、人工衛星の開発をしてみたいと次の夢を語る。「衛星で宇宙空間のさまざまな実験や観測をやってみたいです。通信実験だったり、星が誕生する瞬間や惑星なんかの観測もしてみたいなぁ…」。気付けば、聞いている私たちまで、みんなが楽しそうな雰囲気に。笑顔で話す南さんの表情からは、“好き”の気持ちが溢れていた。




ライターの目:
打ち上げられたロケットは瞬く間に宇宙へ。華やかにみえる最先端ロケットのプロジェクトは、仕事の大半が技術者の地道な開発や繰り返される点検作業だ。異常検知によりイプシロンロケット初号機の打ち上げ中止が決まった2013年8月27日。その異常は、南さんたちの担当部分ではなかったが、関連する電気系統のミスによるものだった。「中止が決まった時は、必死で点検しました。結局、妥協しなければ分かっていたミス。どこか、甘さがあったのだと思います。楽しみに打ち上げを見に来てくれた子どもたちや、全ての関係者に迷惑を掛けてしまいました。改めて確認の大切さを痛感しました」と話す。その言葉には、自分本位の“好き”ではなく、社会への“責任”や“貢献”を背負った一流の技術者としての力強い“好き”の気持ちがこもっていた。

  • 取材・文
  • 山内 快(経営学部3回生)

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