何でもないことは流行に従う。重要なことは、道徳に従う。芸術に関することは、自分に従う。
岡元 昇さん(1985年産業社会学部卒)
朝日放送株式会社 編成本部 アナウンスセンターアナウンス担当部長
学生時代は、全然「優等生」ではありませんでした。毎日、ずっと映画ばかりを観ていました。友人たちと一緒に京都の映画館巡りをして、多い時は一日3~4
本、一年間で150本ほどの劇場映画を観ていました。テレビでも朝のワイドショーと昼のニュースの間に、小津安二郎監督の作品などが放送されていたのです
が、それを観るのが大好きでしたね。
今は新しいマンションが建設されてしまいましたが、当時は、衣笠氷室町にあったアパートに下宿していました。住人は、学生運動を続けている人、音楽家、書
道家、アメフト部員など、みんな個性的な人ばかり。そんな仲間に囲まれて、ビリヤードやフォークソングを教わったり、夜な夜なギターをかき鳴らしたりして
日々を過ごしていました。今思えば、個性豊かで様々な考えを持つ人が出入りするアパートで過ごし、「先入観なく、人と付き合う」ということができるように
なったと思います。このことは、社会に出てから役立っています。最近は、かつての「濃い」下宿生活が少なくなっていることに寂しさも感じます。
岡元さんが学生時代に住んでいた部屋
在学中は、立命館大学放送局(RBC)に所属していました。実は高校生の頃から、ぼんやりと「アナウンサーになりたいなぁ」と考えていました。ラジオを聴いては、MCのトークやナレーションを書き起こし実際に真似したりしていました。大学に入り、徐々に「美しく、力強い言葉」である日本語そのものに魅力を感じるようにもなりました。
アナウンサーという職業は、華々しく「特別な仕事」と思われがちですが、決してそんなことはありません。ただ人数が多くないので珍しいだけなのです。決して勘違いしないように、そして自分を「定める」ようにと後輩や部下には言ってます。
最近のアナウンサーの仕事は、テレビやラジオに出演するだけに留まらず、インターネットや携帯電話などまで活躍の場が広がっています。新鮮な果物が強い光によって朽ちてしまうのと同様に、私達も多数の人の耳目に触れる機会が増え、当たる光も柔らかいものからギラギラとしたものへ変化するほど、朽ちてしまう危険性があるのです。だから常に新鮮さを失わない様にと努めています。美しい日本語、正しい放送用語、日々の挨拶、季節の移ろいと表現、謙虚さ、感謝・・普遍的なもの探しもそのひとつでしょう。また、アナウンサー同士の勉強会や社会貢献も行っています。
私は、絶対曲がらない「芯」を持つことも大切だと考えています。私の「芯」となっているかはわからないですが、好きな言葉があります。件の小津安二郎監督の言葉で、「なんでもないことは流行に従う。重要なことは道徳に従う。芸術に関することは自分に従う」。私の行動指針です。
学生のみなさんは、自分を制限することなく、勉強でも遊びでも、何でも思いっきりチャレンジする学生生活を送ってください。たくさんの経験が自分の中でミックスされ、人生の中で「大きな力」となっていくと思います。
- 取材・文
- 正木洋介(経営学部3回生)