車で約5分の距離で見えた大きな差

立命館大学STROPSは、スポーツ健康科学部の学生8人が集まり、開発途上国の子どもたちの可能性をスポーツ教育によって引き出すことを目的に活動している団体です。3月1日から3月14日にかけて、ケニアのナニュキにあるQueenstar Community OrganisationとLaikipia primary schoolにて、体育の授業及びフィールド調査を行いました。
床や天井がない教室。1週間同じ服を着ている子どもたち。18人に対して、机の数は3つ。教科書やノート、勉強道具が人数分なく、取り合いする子どもたち。Queenstar Community Organisationという4~12歳の子どもたちが通う小学校の現状です。この小学校に通う子どもたちは非常にシビアなバックグラウンドを抱えています。1日1食。学校で食べる給食のみで生きています。ケニアの初等教育は完全無償化されていますが、給食費や制服を支払うお金がなく、学校に通うことのできない子どもたちが少なくありません。Queenstar Community Organisationは、そんな子どもたちのために作られた学校です。
その一方で、机や椅子が余るほどあり、サッカーゴールがあるグラウンド。勉強道具が整っている教室。制服を着た子どもたち。家から持ってきた昼ご飯を友達同士で食べる子どもたち。 Laikipia primary schoolは、政府が建てた学校で4~16歳の子どもたちが通っています。授業の時間は35分で、算数やスワヒリ語、英語、社会、理科、宗教の勉強をしています。
この2つの学校は車でわずか5分ほどの距離にあります。しかし、2つの学校で共通していることがありました。
それは、子どもたちの笑顔です。どんな環境であっても、学ぶことが楽しい。学校に来ることが楽しい。Queenstar Community Organisationには、Laikipia primary schoolのような環境は整っていません。しかし、Laikipia primary schoolでは学ぶことのできないことを学ぶことができる環境があります。学校とは、良い成績をとるためだけに通う場所なのではなく、人として成長する場所であると私は思います。政府が動かなければ、格差をなくすことはできないかもしれません。ただ、だからと言って動かないのではなく、現地教員と共に質の高い教育を受けることのできる環境を作るため、行動し続けることが重要であると感じました。

テスト科目が大切だからシラバス通りにはやっていないわ

ケニアの体育は、生徒が自分たちで自由に遊ぶ時間。日本のように先生が指導することはありません。先生はスタッフルームで他の科目の課題をチェックしていたり、ランチを食べながら待機しています。シラバスを見せてもらいました。しかし、なかなか見当たらず、見つかったと思ったら衝撃の一言。「テスト科目が大切だから、シラバス通りにはやっていないわ。」 体育がこんなにも雑に扱われている現状を知り、非常に悔しく思いました。
ケニアでは、非感染症疾患が増えており、中でも糖尿病患者が増えています。継続的に運動を行う習慣を幼少期から身に付けることができれば、糖尿病患者は減るかもしれません。 また、ケニアは、腐敗認識指数ランキングは世界144位。スポーツを通じて、フェアプレーの精神を身に付けることができれば、非行に走る人の数を減らすことができるかもしれません。 ただ、先生方は体育を受けたことがないから、何をしていいのかわからない。そして、何よりも、体育に対して関心がないのが現状です。

ケニアが抱える問題を共有した上で、体育がもたらすメリットを

ケニアには、KCPEという試験があります。初等教育の最終学年の生徒は、この試験を受け、そのスコアによって進学先が決まります。先生は口をそろえて、このKCPEで良い点数を取ることに関心があると言っていました。 ケニアにはケニアの教育システムがあり、社会的背景も日本と異なります。それなのにも関わらず、日本の体育を押し付けるのは、見当違いであると思います。それでも、現時点でケニアが抱える問題を共に共有し、体育がもたらすメリットを挙げ、動機づけることが必要であると思いました。

社会的な背景を知り、目的と目標を持って

同じように開発途上国には、その国の社会的な背景があります。 今すぐに学校体育を変えることはできませんが、その国の社会的背景をもっと知ること、そして、体育を行う目的と目標を吟味することが重要であると思いました。
STROPSでは、この先、カンボジアの小学校でのスポーツ教室を予定しています。また、体つくり運動のテキストブックの作成をしていく予定です。その際には、今回の経験で感じた社会的背景を知ること、そして、目的と目標を吟味する姿勢を持ち、取り組んでいきたいと思います。

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