再エネ発電に取り組む地域の姿を見たい

私は、立命館大学経済学部から政策科学研究科に進学しました。学部時代から関心のあった地域再生というテーマについてより深く学びたいと思ったからです。ゼミでは、地域運営組織について研究しています。地域運営組織とは、人口が流出する地域を存続させるため、地域に暮らす人が課題解決の取り組みを実践する、たとえば路線バスのない地域の送迎サービスなどを行う組織です。
地域運営組織の中には、今、注目を集めている再生可能エネルギー発電に取り組んでいるところもあります。川で水力発電をしたり、風力発電をしたり、地域の、持続可能性のある資源を用いた発電事業は、地域の新産業として発展する可能性があるのではないか、そう考えた私は、さらに研究を深めるために再生可能エネルギー発電に取り組む地域に行って、実際の様子を調査してみたいと思うようになりました。

調査研究の費用として奨学金に出願

しかし、調査地域は遠方にあり、調査のために現地へ行くには費用がかかりますが、大学院の授業と公務員試験の受験勉強を両立するなかで資金を調達するのは難しい状況でした。
その時、大学院の先輩から聞いていた「+R校友会未来人財育成奨学金」のことが頭に浮かびました。奨学金制度の趣旨に今回の研究活動は合致していると思い出願したところ、見事採用されました。この奨学金がなければこの調査は実現できなかったと思います。

現地に行って話を聞かなければ
わからないことがある

調査に当たっては、地域における再生可能エネルギー発電、中でも木質バイオマスを利用した発電に取り組んでいる自治体に限定して訪問することにしました。まずは、岡山県北部にある真庭市です。豊富な森林資源を利用した林業とその周辺産業が盛んで、木材加工などで出た端材などを利用した木質バイオマスによる発電を行い、バイオマスツアーを実施するなど、バイオマスによるまちづくりを進めている自治体です。
現地に到着した私は「バイオマスツアー真庭」に参加しました。真庭市におけるバイオマス産業都市構想の概要についてレクチャーを受け、燃料用チップの生産現場を見学し、バイオマス発電所にも行くという1日がかりのツアーです。翌日は、木材を安定的に供給するため独自のシステムを構築している木質資源安定供給協議会というところでヒアリングを行いました。
ヒアリングを通してわかったのは、真庭市にとってバイオマス事業はあくまでも副産物であり、林業・木材業を市の基幹産業と位置づけているということです。私はバイオマス産業だけに注目していたのですが、バイオマスのために地域の大切な資源をおろそかにしてはいけないという確固たる考えがあることを知りました。それが林業・木材業を生業としてきた地域の方の思いなのだと思います。現地に行き、直接お話を聞いて初めてわかることがある。当たり前のことかもしれませんが、それを実感した調査旅行でした。調査内容は研究ノートとしてまとめ、学内紀要に投稿しました。

「地域再生」をテーマにこれからも研究を続けたい

私は、あれこれ考えすぎて新しい一歩がなかなか踏み出せないタイプだったのですが、自分で計画し、奨学金に出願し、アポイントを取って、現地で調査をするという一連の活動を一人でやり遂げられたことは大きな自信になりました。ただの学生にすぎない私が、個人研究のため、学外の方に協力を依頼するのは勇気がいりましたが、思い切って行動してみたら、とても親切に受け入れてもらえたことで、少し成長できたかなと思いますし、地域に関わる仕事がしたいという以前からの思いも一層強くなりました。
今後も、このテーマで研究を続けていきたいと考えています。真庭市のバイオマス産業の独自性について整理するために再訪する必要もあると思いますし、他の自治体の例を調査することも検討しています。
大学院修了後は地方公務員として地域に貢献したいと考えています。この研究が仕事で直接活きるかもしれませんし、仕事をしながらも、地域再生をテーマに研究を続けていきたいと考えています。

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