室内実験

三軸圧縮試験(共同研究)

三軸圧縮試験装置
(三井住友建設)
(無垢な)円筒形の岩石試料に対して、周囲から地下の地震発生層に相当する圧力を加えた上で、軸方向に圧縮し、地震の模擬現象のひとつであるせん断破壊を発生させます。破壊面(断層)の形成過程を制御できることが特徴であり、破壊に至る過程を詳細に調べることができます。計測できるのは、試料にはたらく応力・ひずみと試料内で発生する微小破壊によって放射される弾性波、人工震源から放射された弾性波です。
二軸せん断試験(共同研究)

大型二軸せん断試験装置
(防災科学技術研究所)
メートルスケールの大型の岩石試料を2つ重ね合わせることで、その境界に模擬断層を作り出し、模擬断層上で地震の模擬現象のひとつである固着すべりを発生させます。これらの試料と載荷フレームは大型振動台上に設置されます。40 cm程度までのすべりを発生させることができること、破壊の伝播を二次元的に追跡できることなどが特徴です。計測できるのは、試料にはたらく法線力・せん断力と試料表面及び内部のひずみ、試料内で発生する微小破壊によって放射される弾性波、人工震源から放射され断層面を透過した弾性波です。断層面において摩耗によって生じた断層ガウジの解析もおこなわれています。
模擬地すべり試験(共同研究)

模擬地すべり発生装置
(京都大学防災研究所)
アクリル容器内に降り積もらせた砂層に対して、注水したり振動を加えることによって模擬地すべりを発生させます。地震と同様に不安定すべり挙動を示す地すべり現象に対して、その発生原因を追究しています。計測できるのは、砂層内部の間隙水圧、水位、人工震源から放射された弾性波です。
実験・計測装置
その他の計測装置類 固体地球物理学研究室には、以下のような計測機器類がありますので、各種の研究に活用することができます。
・14 bit, 10 ch,+-10 V,20MS/sの連続波形集録システム
・12 bit, 64 ch,+-2 V,10 MS/sの連続波形集録システム
・DC~6 MHzまで平坦な感度を持つレーザードップラー振動計
・毎秒10万フレーム程度で撮影可能なモノクロ高速度カメラ
・弾性波用広帯域トランスデューサ
・インパクトハンマー,高感度加速度計
・地震計,信号発生器,電磁オシロスコープなど

研究テーマ

地震波(弾性波)を利用した断層のモニタリング

透過弾性波計測の概念
(南アフリカ金鉱山の例)
断層や地すべり面では、地震発生や地すべり発生に先行して微小亀裂が生成されたり、前駆的なすべりが発生したりすることが期待されています。これらの現象が発生した場合、断層を透過する地震波(弾性波)は走時が遅れたり、振幅が低下したりすることが模擬実験で示されつつあります。そこで、上記の実験を実施してさらにその詳細を調べたり、実際のフィールドや南アフリカの金鉱山でモニタリングを実施してこれらの現象の検出を試みたりしています。南アフリカでは4年以上にわたる連続計測が実現されています。
前震の発生様式の解明

2008年岩手宮城内陸地震の前震の波形例(Hi-net一関西観測点)
前震は大規模地震の先行現象として知られており、近年、地震波観測データの質と量の向上によって極微小な前震の存在が示されるようになりました。図は、我々が見つけ出した2008年岩手宮城内陸地震の前震の波形例です(Doi and Kawakata, 2012)。内陸地震とプレート境界地震では前震の発生の仕方に差があるのではないかという示唆が得られており、これらの極微小な前震の検出は地震発生予測のカギとして期待されています。そこで、様々な条件下で実験を実施して前震の発生様式を明らかにすることを目指すとともに、自然地震についても極微小な前震の検出を進め、その検出手法の高度化・確立を目指しています。
地震の震源パラメタの推定

非常に小さい地震が数多く発生している様子を示す微小破壊波形
地震はどのように始まり、どのように成長し、どのようにして停止するのか、という地震の破壊過程はいまだよくわかっていません。地震のスケール依存性を調べるために、実験時に発生する微小破壊による弾性波の解析から取り組んだり、それらのスケールアップとして自然地震の震源パラメタの推定をおこなったりしています。その結果、実験室で観測されたマグニチュード -7程度の微小破壊(断層の大きさにして数mm)は、自然地震と同一のスケーリング則を満足することが示されました(Yoshimitsu et al., 2014)。
地震の破壊過程に関する数理モデリング

縦方向に圧縮された媒質中の亀裂とその周囲にできる差応力の関係
断層を岩石中の亀裂と考え、破壊力学という枠組みにおける数理モデルや数値実験を利用し、断層の置かれた環境と破壊過程との関係を理論的に研究しています。図は、黒矢印で示す力によって縦方向に圧縮された媒質中の亀裂と、その周囲にできる差応力と呼ばれる力の場を解析的に求めたものです。中央付近の亀裂両端近傍に強烈な力の集中が生じており、ここから破壊の拡大が予想されます。なお、媒質の物性として亀裂面を挟んで両側で異なる値を想定しています。このような変形と力の分布は亀裂を含む岩石やゲルなどの固体を圧縮する実験によって得ることができる他、弾性体力学と複素関数論などの数理解析、またはコンピュータを用いた計算によって求めることもできます。

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