2001/8/2 〜 9/2
USA, Geogia, Atlanta, (アメリカ合衆国 ジョージア州 アトランタ)
Georgia Institute of Technology, (ジョージア工科大学)
Center for Human Movement Studies,
Dept. of Health and Performance Sciences
「ウェイトリフティングにおける二関節筋による下肢筋群のエナジーフローの考察」
実習目的
海外の研究機関での研究活動を通して,新しい知識・見聞の習得と自分自身の語学力のテストを大きな目的とした.また,研究に限らず合衆国文化の体験なども実習の目的とした.
研究紹介
@スナッチと二関節筋
スナッチはウェイトリフティングの動作の1つで,バーベルを一気に頭上まで挙げる動作である.
また,下肢の二関節筋には大腿直筋・ハムストリングス・腓腹筋の3つがあり,これらは1つ筋または筋群が2つの関節に作用する.
この二関節筋により各関節間でやりとりされるエネルギー(エナジーフロー)の計算,各関節間でやりとりされる
エネルギーの流れる向きの判別,持ち上げるバーベルの重さによる変化,被験者による差異などの考察を行った.
Aデータ処理
二関節筋によるエナジーフローの値は以下の方法で求める.
まず,股関節・膝関節・足関節のそれぞれについて"Joint Power(JP)"と"Muscle Power(MP)"を考える.
JPは各関節の見かけのトルクと角速度から求めた関節のパワー,MPは各関節を駆動させる筋肉の筋収縮力と収縮速度から求めた関節のパワーである.
この二つのパワーの差が二関節筋によるエネルギーのやりとりの結果であると考える.
また,各二関節筋の個々のエナジーフローの値についても,二関節筋が2つの関節になす仕事の差などからそのエナジーフローの定量的な値のエネルギーの流れる方向を求める.
B考察
関節間のエナジーフローの傾向として運動中は主に膝関節から股関節・足関節にエネルギーが流れていることがわかった.
また,二関節筋によるエナジーフローのデータを見ると膝からのエネルギーはハムストリングスと腓腹筋によって伝達されていることがわかる.
これは,膝の伸展のエネルギーをハムストリングスで股関節の伸展へ,腓腹筋で足関節の底屈につたえ利用していると考えることが出来,納得できるデータである.
大腿直筋によるエナジーフローは熟練者の試技以外では確認できなかったので,
大腿直筋の使い方の違いが熟練者とそうでないもののスキル差により現れていると考えられる.
1ヶ月間の短い期間ではあったが違う環境での研究はとても刺激になった.
実習以前は,人間の運動をエネルギーの視点からとらえる意識があまりなかった.
しかし,実習を通して運動をエネルギーの視点から解析することで,
人間の運動が非常に定量的にとらえられることが良くわかった.
また,人間の運動に限らずロボット工学などでもエネルギーの視点からものごとを考えてみるようになり,自分の視野が広がったと感じている.
また,向こうの研究員は自分のやるべきことを集中してこなし,
自分の時間を上手く作っている.
目的意識の明確化とメリハリがそれまでの自分には足りないのを痛感した.
実習先の研究室と有本・川村・伊坂研究室の大きな違いはその研究室の規模で,
こちらは約50人,あちらは5名であった.
日本では研究室は教育の場としての意味合いも強いと思うが,あちらでは純粋な研究機関という考え方であろう.
英語でのコミュニケーションは上手いとは言えないが,それなりに何とかこなすことが出来た.
話すときは細かい文法などにこだわるのではなく,多少間違っていても積極的に話すように心がけた.これが結果として良かったと思われる.
ただし,もっとコミュニケーション能力を上達させる必要があるのは間違いない.
食事を除いては日常的な生活は問題なかった.しかし,食事は・・・である.
レトルト食品をいくつか持っていくことをお勧めする.
あと,どこへ行ってもそうであるが夜中にウロウロするのも×である.
オリンピック開催に伴いかなり改善されたとはいえ,アトランタは過去に全米一治安の悪い都市だったこともあるので.